ロンドンにきてはや1ヶ月、Microsoftを退職して、Computer Science Educationの研究をする研究者（学生）になり、毎日の様に新しい研究者、実践者、教員の方々と会ったり、鬼のように論文を呼んだりしてますが、ここロンドンでも科目Computingが必修化されて4年目になるにもかかわらず、問題は山積みだなぁ、というのが現時点での感想です。しかも、やっぱりうまくいかなかったじゃないか！という声も大きく、若干Computingに関するバブルも終わりつつある様で、日本が学ぶべきところは多いなと感じています。
こんな混乱が生まれている一つの原因は、教材やツールが山ほど一気に登場し、先生方がどのツールを使ってよいかよくわからない、というところのようで、その結果、
- どうやって教えていいかわからないから、とりあえず提携している企業や、非営利団体に勧められた教材をとりあえずそのまま使う
- よくわからないけど別の研修に行ったら別の教材を勧められたのでそれを使ってみる
- なんかうまくいかないので別のを…
という、ツールに遊ばれている先生/授業も大変多いみたいです。こうなってしまうと、ツールを使って学ぶというよりはツールを学ぶほうに時間を取られてしまうので、本末転倒なんですが、教員側としては何か新しいことを教えた気分になってしまう（Computingに関する理解が低いので）という。
とはいえ、企業や教員研修をする側も、新しい教え方、授業スタイルの話よりもツールを紹介したほうがウケるのでそうしてしまう、という側面もあるようで、問題の根は深いと感じています。
さて、University College Londonによる、ScratchMathsというScratchを使って奨学生が算数（と一部理科）を学ぶカリキュラムと補助教材を開発するプロジェクトが、新しくYear 6(10–11歳)向けの教材を公開しました。Design Schoolを開発に巻き込んだわかりやすい、使いやすい指導案になっており、Scratchでのプログラミングの中に、アンプラグドなアクティビティも含まれていて、大変評判が良い様です。
もともと公開されていたYear 5向けのカリキュラムは、以下の概念をカバーしています。
- 繰り返しとパターン
繰り返しと、Scratchの「スタンプ」ブロックを使って幾何学模様を書こう、というレッスンです。
2. 多角形
Scratchの「ペン」を使って多角形や円を描くというレッスンです。プログルの多角形のレッスンは、ScratchMathsの授業設計から学べることも多そう。
3. アニメーション制作
「条件分岐」や「メッセージ」を使ってスプライトが動くアニメーションを制作するレッスンです。アニメーションに必要な正と負の数、乱数などが算数の概念としてあげられていますが、このモジュールはYear 5最後のものだからかプログラミングに重きがおかれている印象。
研究としても論文が公開されていて、ScratchMathsの設計思想、背景などがよく書かれているので、面白いです。特に…
- プログラムを書いて、「やった動いた！」で終わりではなくて、きちんと「なぜ動いたのか」を説明するように促しているところ (Explain)
- ‘direct drive’と論文では呼んでいますが、新しいコマンドを使うときに怖がらせない工夫がされているところ
がよく考えられているな、と思いました。
(この教材を使った結果どうだったのか、といったところは書かれていません。あくまで、設計思想の話です）
ちなみに、Computer Science Educationってどんな研究分野なの？という人は以下がわかりやすいかも。
まだまだ駆け出しですが、週に1本くらいはCS教育に関するポストを（学んだことをまとめるという意味でも）書きたいところ。
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