あらためてブレストについて考えてみる

Masayuki Uetani
6 min readMar 16, 2015

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良いブレストってなんだろう?という内容のポエムです。

ひとえにブレストと言っても、現場レベルで見ると各所でアレンジされていてそれぞれで微妙にやり方が違ったりと、様々なスタイルが存在しているのが実情です。当然、こういったやり方はチームに合ったものを選択すればいいと思いますが、見落としがちな部分で障害が発生していて、成果が上がらないケースってけっこうあるよね?とふと感じるコトがあったので「ブレストの質」という観点でつらつらと書いてみたいと思います。

良いブレストってなんだろう

あらためて「ブレストの質」という観点で考えた時に、何を基準として「良い」と判断するべきでしょうか。ブレストは複数人でアイデアと出し合い、相互的な刺激により更なる良いアイデアを誘発させる会議手法のひとつです。なので、より良いアイデアを生み出すことができるブレストが「良いブレスト」と言えるかと思います。

ブレストのルール

冒頭でも触れた通り、基本的な原則をベースにしつつ、組織やチームによって色々なルールにアレンジされています。原則として広く知られているのは「人のアイデアに乗っかる」や「アイデアの量をたくさん出す」あたりでしょうか。僕がアレンジされたものの中でも特に好きなのは、デザインファームIDEOが提唱している以下のルールです。(発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法で書かれているものから、現在は変わっています)

1. Stay Focused on Topic(テーマにフォーカスを当てる)

2. Encourage Wild Ideas(突飛なアイデアを奨励する)

3. Defer Judgement(判断を遅延する)

4. One Conversation at a Time(ひとりづつしゃべる)

5. Go for Quantity(量を求める)

6. Be Visual(可視化する)

7. Build on the Ideas of Others(他人のアイデアに乗っかる)

個人的にはBe Visualの部分がとても好きで、僕自身よく会議中にポストイットやノート、ホワイトボードを使って積極的に可視化をしています。創造性を刺激するという本来の役割はもちろん、可視化することでメンバーの記憶を外部化することができ、立ち戻ることができるポイントとして活用できるという、副次的なメリットも期待できます。

良いルールがあれば質は上がるのか

では、チームに最適化したルールを作り、それを忠実に守れば、より良い成果が得られるかというと、実際はそんなことはありません。実は、冒頭でも述べた通りルール以外の部分、つまりブレストを始める前の段階にある事象が原因で失敗してるケースが、現場ではかなり多く見られます。その事象とは「バイアス」です。このバイアスをいかに取り除いた上で、ブレストの質を上げる環境を事前に作ることができるかが鍵になってきます。取り除くべきバイアスは、大きく分けて3つ存在します。

関係バイアス

これが最も多いと思いますが、メンバー間の関係性にバイアスがかかっているケースです。例えば以下のようなものです。

  • 組織上の関係性(役職の違い、上司と部下、チームにアサインされた時期の違いなど)
  • 業務以外での関係性(性格的な相性が良い/悪い、相手のことを知っている/知らない)

上記の関係性を良くするには、基本的には時間をかけて取り組むしかないものがほとんどです。ですが、ひとつだけ今すぐに始められる対策があります。それはチームに「率直さ」という前提を取り入れることです。これは映像制作会社のピクサーが取り入れている「ブレイントラスト」という、ピクサー独自の会議形式の中で重視しているルールのひとつで、同社が長年大事にしている組織の伝統でもあります。以下はエド・キャットムルの著書「ピクサー流 創造するちから」で書かれている一文です。

絵に描いた餅ではだめで、率直な議論という批評的な要素なしでは、信頼は生まれない。そして、信頼なしでは創造的な共同作業はできない。

中長期的な関係性の改善と並行して、メンバーが常に率直であるために、その弊害を取り除くことも重要です。極端な話ですが、会議の冒頭で「この場では全員率直であることを大事にしましょう」と毎回宣言してしまうだけでも、雰囲気は変わってくるかもしれません。

環境バイアス

これは会議を取り巻く環境、つまりブレストの場そのものがバイアスを与えているケースです。
よく日本のビジネスシーンでは一般的なマナーとして「目上の人は上座に座る」といったものが浸透していたりします。これはシーンによっては守るべきものかもしれませんが、創造的な議論の場ではまったくの逆効果で、席次がそのまま上下の関係性を強調してしまい、場に強烈なバイアスをかけてしまいます。上記のような問題を取り除くため、丸いテーブルを用いることで上下関係を意識させづらくしたり、高さも形もバラバラの椅子に座る(座面の高低も上下関係を強調するため)、お菓子を食べながらやる/図を書きながらやる(議論以外に意識が向いてリラックスできる)などもバイアスを取り除く上で有効です。例えば高い椅子に若手メンバー、低い椅子に一番の権力が強いメンバーを座らせるなどの工夫ひとつで、環境バイアスとともに関係バイアスを軽減することが可能です。そういった意味では環境バイアスは、関係バイアスと依存関係にあると言えそうです。

概念バイアス

これはシンプルで、ブレストのテーマを決めた時点でバイアスがかかっているケースです。例えば「通勤時の交通情報を閲覧できるアプリについて」と「毎日の通勤・通学を便利にはどうしたらいいか?」では、アイデアの質と量が大きく変わってくることが予想できます。ブレストに入る前に一度立ち止まり、本当に創造性を刺激できる適切なテーマ設定なのかを確認するだけで、得られる成果が大きく変わる可能性が高まります。

まとめ

ブレストは比較的導入しやすく、とっつきやすいフレームワークとして広く活用されていますが、しっかりと成果の出る形で実戦できているケースは意外と少ないと感じています。闇雲に始めるのではなく、まずは成果への障害となるバイアスがかかっていないか?という疑問から始めることで、アイデアの質と量の向上が期待できます。では、よいブレインストーミングライフを。

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Masayuki Uetani

日本とスタートアップを最高にする会社、Nstockでデザインをしています。主食は焼鳥とハイボール。D&Experimentとして企業のデザイン支援もしている巨人族の者です。