ファシリテーションを考える

Masayuki Uetani
5 min readJun 2, 2015

突然ですが、皆さん会議は好きですか?僕はめちゃくちゃ好きです。何気ない発言から素晴らしいアイデアが生まれたり、進行が円滑でサクサクものごとが決定する会議に参加するとスカッとしますよね。そんな素晴らしい会議を実現するために必要な要素として、ファシリテーション品質の向上が挙げられます。

ファシリテーションについての認識を、いろいろな人に聞いてみると、感覚的には理解しているものの、明確に言語化出来ていない人は少なくないのかも、と感じることがあります。また、ファシリテーションは経験知の積み重ねにより習得するものである、といった具合に誤解される事も多いとも感じます。実は構成する要素の大部分は、形式知に触れることで体系的に学ぶことが出来ます。

とうことで、あらためて実態を整理する意味も込めつつ、ファシリテーションを形作る要素を分解し、構造化して捉えることでファシリテーションへの理解を深めてみようと思います。

時間軸を知る

ファシリテーションと聞くと「会議中」に行なうもの、という認識の方は多いかと思います。時間の観点で見ると概ねそれで間違いは無いのですが、実際に会議の質を向上させようとすると、会議の前と後、つまり時間軸に沿って事前の準備や事後の整理を行なうことで、成果に大きな影響が出てきます。この考え方はユーザーエクスペリエンスの期間のモデルとも似てるところがありますね。

簡単ですが、会議の流れに沿って、そのタイミングで必要となる要素やアクションをまとめてみます。

  • 準備する(事前): アジェンダ作成、メンバー把握、課題整理、素案作成
  • 進める(会議中) 説明、確認、整理
  • 振り返る(事後) 議事録作成と配布、ネクストアクションの提示、計画の管理

さらに、質と時間の関係を以下の図に落としてみました。ちょっと極端な例に見えるかもしれませんが、実際にこれぐらいの差が出ることも全然あり得ますし、意識して改善することで、中長期的に考えると大きな成果が見込めます。固定のメンバーではなく、全員が会議のファシリテーターをつとめる可能性がある組織の場合、個々のファシリテーション技術向上が事業全体に与える影響は、想像以上にポジティブなものになります。

ただ漫然と準備せず会議に臨むのではなく、会議全体を時間軸に沿って俯瞰的に捉え、中長期的なゴールを見据え「設計する」意識を持ち取り組んでみると、驚くほど成果に違いが出てくるはずです。

会議の種類を知る

ひとえに会議と言っても様々な形態がありますが、大きく分けると「報告」と「議論」のふたつに分けられます。スタートアップなど、あらゆる場面で意思決定や共有のスピード感が求められる現場では、報告や共有はオンラインで完結させるケースが多いため、報告ではなく議論の場としての会議が大半を占めてきます。では、議論する会議には、どんな要素やアクションが含まれるものでしょうか?議論をステップごとに分けて見てみます。

  • STEP1.創造(発散): アイデアを引き出し、発散させる。ブレインストーミング、スケッチ、推論など。
  • STEP2.調整(収束): 議論により出た意見を摺り合わせ、絞り込む。KJ法、視覚化(ポジションマッピング、ベン図)、ロジカルシンキング(MECE、ピラミッド)など。
  • STEP3.決定 : 合意形成をし、最終的な結論を出す。

上記のようにステップに分けて考えてみると、ただ単に「ブレストしようぜ!」と集まるのは非常に危険なことがわかります。混同しがちですが「議論=ブレスト」ではないということですね。ファシリテーターが常に議論の段階を意識し、適切にハンドリングすることで、劇的に議論の質が向上します。逆に、だらだらと闇雲な議論を重ねるだけで、ひたすら発散をして終わる議論が世に溢れているのも事実です。

余談ですが、議論の要素のひとつであるブレストについて、以前Mediumに書いたものがあるので、よければ参考にしてみて下さい。

あらためてブレストについて考えてみる

コミュニケーションを知る

ファシリテーションをおこなうメンバーは、会議が円滑に進行するよう、コミュニケーションに関する様々なスキルを身につけている必要があります。以下に会議のコミュニケーションにおけるアンチパターンを挙げてみます。

  • 他の人が話している最中に話をさえぎる
  • 会話のはじめが「いや」「でも」「しかし」などの否定から入る
  • 個人的な主張を押し通そうとする
  • 他の人の話をほとんど聞いてない
  • 話をまとめず、ひたすら議論を加速させ続ける

上記のパターンは極端にひどい例ですが、一部であれば当てはまるという人は少なくないと思います。逆に、良いコミュニケーションとはどんなものでしょうか?基本的にはアンチパターンを裏返せばいいだけではありますが、以下に挙げてみます。

  • 発言しないメンバーからは引き出し、発言しすぎるメンバーのボリュームはコントロールして抑える
  • 個人の主張を押し通すのではなく、チームのゴールを意識している
  • 傾聴する姿勢がある
  • 適宜議論の内容をまとめ、流れの中でポイントを作る

また、この手のコミュニケーションに長けている人は、会議以外でも様々なシーンで応用が効くため、活動の場が広がります。例えばインタビューのスキルに長けている人は、ファシリテーターとしても優秀だったりします。

簡単にファシリテーションについて整理してみましたが、いかがでしたか?今回挙げた内容は、ファシリテーションという技術を構成する要素のほんの一部ですが、今回のように会議自体を構造的に捉えた上で実践することで、会議の品質向上が期待できると思います。

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Masayuki Uetani

日本とスタートアップを最高にする会社、Nstockでデザインをしています。主食は焼鳥とハイボール。D&Experimentとして企業のデザイン支援もしている巨人族の者です。