Who are you? 未来の神話をめぐる冒険

Star Wars Episode VII『The Force Awakens』

※ネタバレ注意。

自分はどこから来て、どこに向かうのか。物語はどこから始まり、どこで終わるのか。銀河の果てにはどんな世界が待っているのか。『Star Wars』の原点は、そんなSF映画らしいテーマを冒険劇を通して描いているところにある。1977〜1983年に公開された『旧三部作』は、砂漠の惑星で育った青年ルークがある出会いをきっかけに銀河に飛び出すという物語だ。また、1999〜2005年に制作された『新3部作』も、ルークの父アナキンが同じように自分の家から出ていくことになるエピソードによって始まる。そこには肉親の不在という背景が共通して描かれ、映画は一貫としてルーツの探索とフロンティアの開拓というアメリカらしいテーマを持っている。そして、新たな3部作の幕上げとなる本作『The Force Awakens』もまた、砂漠の惑星で帰らぬ家族を待ち続けるレイの物語である。

映画はファースト・オーダーと呼ばれる悪の組織がある地図を巡って村を襲うシーンから始まる。このシークエンスにおける兵士の描写は子供が観る映画としては非常に現代的で残虐だ。混乱した兵士のヘルメットに血がつく演出はおそらくシリーズ史上最も生臭い暴力性があり、新しい時代の『Star Wars』誕生を感じさせる。しかし、映画はその後現代性から距離を置き、むしろ過去シリーズを強く彷彿とさせる世界観へと入り込んでいく。それは確かに素晴らしいデザイン、アクションそしてユーモアに溢れているが、展開には驚きが少ない。誤解を恐れずに言えば、本作はシリーズ第1作目『A New Hope』を再構築した物語になっているのだ。

ディズニーがルーカスフィルムを買収した後制作が決定した本作は、原案者のジョージ・ルーカスが退き、壮大で複雑なドラマの構成力(eg;『Alias』『Lost』)とフランチャイズ映画を生き返らせた経験(eg; 『Mission Impossible』『Star Trek』)で知られるJJエイブラムスが監督に抜擢された。子供の頃から『Star Wars』の大ファンである彼は単に懐古主義に走ることなくレイ、フィン、ポー、レン、BB8というビビッドなキャラクター作り上げ、皆が求めていた世界観に新たな息吹を吹き込むことに成功している。ディズニーから求められたであろう商業的な計算を想うと、全フレームからオリジナルへの愛を伝わるこの映画作りは奇跡的であり、彼以外成し得なかっただろう。だが、『Star Wars』というコンテクストに忠実なあまりに、本作の独自性が薄くなってしまっているのも事実である。本作と比較すると、稚拙な演出が酷評された『新三部作』の方が過去作品とは異なる世界観を打ち出したという意味において野心的な試みに思えなくもない。だがこれは作り手の問題ではなく、現代の商業映画が抱える構造的なジレンマの結果だ。

今のハリウッドは過去にヒットした作品の続編やリメイクといった企画が大半を占めている。その背景にはスタジオ側のアイディアの枯渇とリスクの回避があり、また観客側には映画体験に成熟してしまった故に過去作品が持つ輝きを再体験したいという想いがある。だがそれは作り直せるものではない。ジョージ・ルーカスが第一作目の『Star Wars』公開時に、大失敗したと思い込んでホテルの中に隠れていたのは有名な話だ。未だ色褪せない『Star Wars』の輝きは映画的冒険故に生まれたものなのだ。そして今、観客は変わらない世界観と驚きのある物語の両方を求めている。JJエイブラムスはファンのその矛盾した想いをよく理解していたからこそ、新たなキャラクターたちにあえて物語自体を踏襲させ、過去の輝きを追体験させることで、未来の神話を生み出すための橋渡しをしているように思える。

コンテクストに溢れた時代の冒険はどこにあるのか。『The Force Awakens』は物語のルーツをなぞることで、昔は確かにあったフロンティアを再確認しようとする自己言及的な作品だ。新しい物語は、過去に別れを告げたときにはじまる。それは苦い結果を生むこともあるが、冒険とはそういうものなのだ。ラストシーンにて過去と対峙するレイの眼差しに、新しい時代の始まりを期待せずにはいられなかった。

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以下は印象的だった批評の抜粋。

#New Yorker
“Star Wars: The Force Awakens” Reviewed
http://www.newyorker.com/culture/cultural-comment/star-wars-the-force-awakens-reviewed
“I hate to say it, but he’s a critic — as all creators, and especially re-creators, must necessarily be. And he’s ruthless. Airtime, on his watch, is not index-linked to the graying memories of baby boomers but doled out in line with dramatic appeal; the more vexing you were back in 1977, the less welcome you are now.”

#AV Club
For better and worse, The Force Awakens returns Star Wars to its roots
http://www.avclub.com/review/better-and-worse-force-awakens-returns-star-wars-i-229882
“What Abrams has done is strip Star Wars down to its core components, rearranging the stuff people liked about the original trilogy and getting rid of what they hated about the rest. (Don’t hold your breath for a Jar Jar cameo, in other words.) But the prequels, misguided as they often were, dared to be different, to be their own movies. The Force Awakens never reaches the heights of escapism Lucas once did, mostly because its pleasures are echoes; by the time our posse walks into a saloon that’s just the cantina in a nicer neighborhood, the déjà vu factor begins to feel as much like a drawback as a benefit.”

#New York Times
‘Star Wars: The Force Awakens’ Delivers the Thrills, With a Touch of Humanity
http://www.nytimes.com/2015/12/18/movies/star-wars-the-force-awakens-review.html?_r=1
“He has delivered a more seamlessly diverting movie than Mr. Lucas has in years, but his most far-reaching accomplishment here is casting Mr. Isaac, Mr. Boyega and Ms. Ridley — a Latino, a black man and a white woman — in this juggernaut series. It’s too early to know how this will play out as the whole thing evolves, but the images of Mr. Boyega and Ms. Ridley each holding a lightsaber are among the most utopian moments in a Hollywood movie this year.”