採用ブランドはどうやって形成されるのか?
ブランド形成のメカニズム
さて、前回はブランドの定義とブランドの必要性について見てきました。
今回はブランド形成のメカニズムを紐解いていきます。
結論から言うと、ブランドはそのブランドの魅力 × 量・時間 × 一貫性によって評価されてます。
しかし、これだけでは具体的なイメージができないと思うので、以下で各項目の詳細を見ていきます。
ブランド自体の魅力(価値)とは?
ブランド自体の魅力(価値)の重要性は何となく理解している人は多いでしょう。しかし、実際の業務を行っていく場合、このブランド価値の構造を把握しておかなれけば感覚で業務を進めていくことになってしまいます。そこでこちらで改めてブランド価値の構造について見ていきたいと思います。
一般に、ブランド価値は以下のような構造になっています。(右には掃除機で有名なダイソンの例を記載)
このブランド価値の構造は、掃除機で有名なダイソンの例と一緒に考えるとイメージが付きやすいです。
上の図で示している通り、ダイソンはサイクロン技術を使用しているという根拠をもとに、吸引力が持続するという機能的な便宜を提供しています。また、その機能的な便宜をもとに先進的であるというブランドパーソナリティーを構築。最終的にコアバリューとしての吸引力が変わらない唯一の掃除機としてブランド価値を構築しています。
また、ここで注意すべきなのはコアバリューとキャッチコピーは異なるという点です。ダイソンのキャッチコピーは「吸引力が変わらないただ一つの掃除機」。キャッチコピーは広告用のメッセージなので、コアバリューから派生するものです。ダイソンの場合のキャッチコピーは、先程挙げたコアバリューとほぼ同一なのですが、キャッチコピーとして洗練していった結果、コアバリューとほぼ同一の表現に落ち着いたということになります。
ちなみに、このダイソン掃除機、実は吸引力は弱かったというからくりがあります。サイクロン式はあまり関係なく、関係してくるのは吸込口と床との距離にあるようです。参考に別記事を掲載しておくので、ぜひご一読ください。ダイソンのマーケティング力に舌を巻く内容となっています。
さて、本論に戻り、このブランド価値を採用の領域に置き換えてみましょう。
人材輩出企業として有名な、リクルートの採用におけるブランド価値の構造を見ていきます。
まずは根拠となる事実として、リクルートには徹底した企業文化と細部まで設計されたビジネスモデルがあります。例えばリボン図と呼ばれるクライアントとユーザーをマッチングさせ、対価としてフィーを受け取るというモデルが存在します。
そのファクトから派生する便宜として、事業運営の型が身につくということが考えられます。
さらに事業運営の方が身につくということから考えられるブランドパーソナリティーとしては、野心的・挑戦的という言葉が類推しやすいでしょう。
最終的なコアバリューとして定義されるのは、起業家となり得る人材を排出する企業、いわゆる人材輩出企業として採用におけるブランドを構築しています。
ブランドに接する量・時間とは?
さて、次にブランドの接する量・時間について見ていきます。
これはザイオンス効果(単純接触効果)と考えると良いと思います。例えば恋愛において何度も接していると、いつの間にか意識し始め、最終的には好きになっていたというあれです。
これを採用領域で考えると、新卒採用で重要だと言われている学生との早期のリレーション構築です。早期接点を構築ができれば、その後の企業と学生が接する量・時間共に十分に確保できます。その結果、企業に対する好感度(ブランド評価)は比例して向上していきます。
上のグラフは、学生との接点が早い場合と遅い場合の企業に対する好感度(ブランド評価)の違いを簡単に示しています。接点が早いとブランドと接する時間・量はともに高く、最終的なブランドに対する評価も高くなります。一方、接点が遅い場合は時間と量が低く、最終的な評価が高くなり切っていません。もちろん、実際はグラフの傾き(ブランド戦略)も可変なのでここまで簡単には行きません。
ブランドの一貫性とは?
ここまで、ブランドの魅力とブランドに接する時間・量について見てきました。この2つの重要性は想像に難くないと思いますが、実はブランドの一貫性も重要になるのです。
一貫生が重要であることを示す例として、採用選考のシーンを見てみます。
例えば今、私がベンチャー企業への転職を考えているとしましょう。
転職サイトに登録して数時間後、とあるベンチャー企業からスカウトが届きました。まずはランチで気軽にお話しませんか?という内容だったので、引き受けることにしました。会話してみると魅力的な会社だなと思ったので選考に進んでみることに。選考中、他の社員とも何人か会話し、徐々にその会社に惹かれていきました。ここに至るまで1週間も掛からないスピード感だったので、私は「さすがベンチャーだな!」と更に魅力を感じていました。しかし、トントン拍子で選考が進んでそろそろ最終面接だろうと思っていた矢先、パタリと連絡が途絶えました。1週間待っても連絡がなく「何だこの遅さは!」と思い、私の方から連絡してみることにしました。なんとか日程調整ができたものの、2週間も先の日程でした。面接当日に受付で到着の連絡を入れ、面接官が到着するまで待ちました。10分、20分、30分と待ち、その後面接官が到着「やっと来た。勘弁してくれよ。」と思いながら部屋へ通され面接を実施。しかし、この時既に私がその会社に対して抱いていたベンチャー企業としての魅力はなくなり、内定を貰ったものの辞退することにしました。
当初抱いていたスピード感が最後には無くなってしまった、つまり採用選考時のスピード感が一貫していなかったため、この企業に対する私のブランド評価は下がってしまったのです。
このような事例の他にも、
●社員が言っている会社の情報が人によって異なる
●面接官が重要視している会社の価値観が異なる
●入社後ギャップ(選考時のイメージと入社後の実態が異なる)
など、ブランドの一貫性を損なうものは多く存在します。
優れた企業文化もあるし早期リレーションの構築できているのに、採用が強くない場合は、採用における一貫性(UX)を見直すと意外に上手く行くかも知れません。
おわりに
以上、ブランド形成のメカニズムを、主に採用における事例を中心に解説しました。何となくだったブランディングも、論理が明確になることで確信を持って進めることができるのではないでしょうか。
それではまた次回。