ワールドカップ優勝宣言
ネイマール INTERVIEW
※ワールドサッカーキング2014年2月号掲載 全文転載
どんなに大きな期待を背負っても、笑顔を絶やさず
ネイマールは謙虚に、純粋にサッカーを楽しんでいる。
一方、ブラジル代表のエースとして期するものもある。
ワールドカップ制覇へ、21歳の挑戦が始まる。
インタビュー・文=ホセ・フェリックス・ディアス
Interview and text by Jose Felix Diaz
翻訳=高山 港
Translation by Minato TAKAYAMA
写真=ゲッティ イメージズ、アフロ
Photo by Getty Images, AFLO
実際に話を聞いてみての率直な印象は、口数が少なくシャイな好青年──。奇抜なヘアスタイルや独特のファッション、時折報じられる派手なプライベートからは想像もつかないほど、ネイマールは謙虚に、そして丁寧にインタビューに答えてくれた。
「僕はサッカーが大好きなんだ。サッカーをしている時が一番楽しい。今、こうしてバルサでプレーしていることに大きな満足感を得ている」
その言葉からはネイマールがいかにサッカーを愛しているかが伝わってくるし、少し大げさに言えば、彼はサッカーをするために生まれてきたのではないかとさえ思える。
もっとも、インタビューで見せるシャイな一面とは裏腹に、ピッチ上での彼は大胆かつ好戦的。ボールを持った時のネイマールは誰よりもアグレッシブで、相手にとっては危険な存在になる。半年後に迫ったワールドカップ(W杯)でも、ネイマールは対戦相手を大いに苦しめるだろう。
そのW杯への意気込みについて聞くと、それまで終始謙虚だったネイマールが、一転して「優勝することしか頭にない」と語った。ブラジルの命運を握るエースが、高らかに世界制覇を宣言した。
カンプ・ノウに立つと
アドレナリンが出る
まず、数ある選択肢の中からなぜ移籍先にバルセロナを選んだのか聞かせてほしい。
ネイマール(以下N)──実を言うとバルサのプレースタイルには前々からひかれていたんだ。クラブW杯で対戦して、その気持ちは更に強くなったよ。試合終了直後、相手選手に「バルサのサッカーこそ世界最高だ」と言ったのを覚えている。そして今、こうしてバルサの一員としてプレーして、自分が想像していたとおりのサッカーを楽しめているんだ。
いつ頃からバルセロナでプレーしたいと思っていた?
N──プロの世界では自分が置かれた環境でベストを尽くすことが求められる。当然、僕はサントスで求められる仕事を100パーセントやってきたつもりさ。ただ、心の底でバルサのサッカーに憧れていたのは確かだよ。バルサのサッカー哲学に魅せられていたと言ってもいい。
実際にバルセロナに入ってみての印象はどうだった?
N──とにかく「ビッグクラブだ」ということかな。あらゆる面で《巨大》という感じがするよ。町の人たちのバルサへの愛情は絶対的なものだし、町全体が常に自分たちをサポートしてくれているという実感もある。そういった環境も含め、桁違いに巨大な組織という感じだね。
チームメートの印象は?
N──最高のチームメートに恵まれた。チーム全体がすぐに僕を受け入れてくれたおかげで、僕もチームの雰囲気にすぐになじむことができた。僕はバルサの勝利に貢献するためにここに来たつもりだ。僕のプレーが周囲ととうまく連動して、バルサが勝ち続けられたらいいね。とにかく、素晴らしいグループに身を置いているという感じだよ。
チームメートの中では誰と仲がいいの?
N──同じブラジル人ということもあって、ダニエウ・アウヴェスやアドリアーノとは話す機会が多いよ。その他ではアレクシス・サンチェスと一緒にいる時間も長いかな。でも、僕にとっての親友は今言ったように、ダニ・アウヴェスだ。僕がバルセロナに来て以来、ダニにはすごく助けられている。あらゆる面で面倒を見てくれるし、バルサ入りを決める前には助言ももらった。ダニは「ここではすべてが最高だ」と言って僕を安心させてくれた。ダニにはすごく感謝しているよ。
チームメートの中で特に驚かされた選手いる?
N──ペドロ(ロドリゲス)かな。彼はすごい選手だよ。アタッカーに必要な資質をすべて持ち合わせている。スピードがあり、ゴール嗅覚に優れ、相手のマークを外す技術にも長けている。最高の選手だと思うよ。
ホームのカンプ・ノウにはどんな印象を持った?
N──スタジアムを超越した建物って感じかな。観客がいないガラガラのスタンドを見ても、何か圧倒される感じがするんだ。とにかく大きいし、ユニフォームを着てピッチに立つと興奮は倍増する。ピッチに足を踏み入れた瞬間、大量のアドレナリンが出るんだ。こんな巨大なスタジアムで10万人近いファンが応援する様は圧巻だよ。アドレナリンが出まくりだね。
カンプ・ノウとマラカナンを比較するとどうだろう?
N──比べるのは難しいな。マラカナンはブラジル全国民にとっての《シンボル》だからね。まあ、今はW杯本番に向けて改装中だけど。
マラカナンでの思い出は?
N──コンフェデレーションズカップではマラカナンでの決勝でスペインと対戦する機会に恵まれた。できれば今年の7月にもう一度マラカナンでスペインと対戦したいね。マラカナンでW杯のトロフィーを掲げるのが僕の夢なんだ。マラカナンはそういった快挙を達成するのにふさわしい場所だしね。あのスタジアムはブラジルの歴史そのもの。マラカナンもカンプ・ノウもそれぞれの国にとっての《サッカーの神殿》と言っていいんじゃないかな。
マドリーに勝つことが
いかに大切か学んだ
バルセロナのようなビッグクラブでプレーすることにプレッシャーを感じない?
N──多くの人が僕に期待を寄せてくれていることは知っている。多くの人が僕の移籍で動いた金額を話題にしていることもね。ただ、その手の話題で僕がプレッシャーを感じることはないんだ。自分がいくらもらっているか、自分のためにクラブがいくら払っているかなんて、ピッチに上がった瞬間にすべて忘れてしまうからね。プレーに集中することで、プレッシャーとは無縁でいられるんだ。
スペインでの暮らしにはもう慣れた?
N──バルセロナでの生活は快適だよ。大きな町で何でもそろっているからね。それに、ここの人たちはみんな僕に親切にしてくれる。新しい生活が順調にいっていることを神に感謝しているよ。
リオネル・メッシとの関係はどう?
N──メッシとは最高の関係を築けている。当初はファンもそのことを心配していたようだけど全然問題ない。メッシは素晴らしいプレーヤーであると同時に、素晴らしい人間でもあるんだ。
メッシの人間性について、具体的にどんなところが素晴らしいのかな?
N──あれほどの選手なのに常に謙虚であるところかな。彼は現状に決して満足しない。いつもより良いものを目指してハードなトレーニングに取り組んでいるんだ。それに、周囲への気遣いにも頭が下がる。彼は誰に対してもリスペクトの気持ちを忘れないんだ。もちろん、彼が他人を馬鹿にすることなんてあり得ないよ。
初めてのクラシコを体験した時の率直な感想は?
N──クラシコのすごさは前々からみんなに聞いて知っていた。とにかく、ゲームの雰囲気が最高だね。それに、ファンは試合の2週間ぐらい前からクラシコの話で盛り上がっている。ファンがこれほどまでに盛り上がる試合は他にはないんじゃないかな。バルサにとって(レアル)マドリーに勝利することがいかに大切かを学んだよ。
初めてのクラシコでゴールを決めた。どんな気分だった?
N──貴重なゴールだったでしょ? マドリー相手にゴールを決めることができてうれしかったし、何より自分のゴールが勝利に結びついたことをうれしく思っている。ファンもいつも以上に喜んでくれたし最高だったよ。
君は12歳の時にR・マドリーに入団する可能性があったそうだね。その時のことを詳しく聞かせてほしい。
N──R・マドリーが興味を示してくれた。まあ、交渉が合意に至ることはなかったけどね。それよりも、マドリーの練習に参加した13歳の時のほうが移籍に近づいたと言える。ワグネル(リベイロ=ネイマールの代理人)にマドリーのセレクションに参加するよう言われたんだ。僕はまだ子供だったけど、あの時の経験はすべてが最高だった。みんなが僕のプレーを評価してくれて、下部組織のコーチの多くが「ぜひともマドリーに来なさい」と言ってくれた。そして下部組織に入る寸前までいったんだ。でも、結局は条件面で折り合わず、僕とワグネルは一緒にサントスへ戻ることになった。
バルセロナは今シーズンもリーガの優勝を目指して戦っている。R・マドリーが唯一のライバルになるのかな?
N──マドリーはバルサの宿敵だからね。リーガだけじゃなく、チャンピオンズリーグでもチェルシーやバイエルン、マンチェスター・シティとともに、僕らにとっての大きな障害となるはずだ。
アトレティコ・マドリーをどう評価している?
N──僕はアトレティコのスタイルを気に入っている。不用意にボールを失うことが少ない好チームだよ。全員が球際に強いというか、とにかく激しいサッカーをする。最後までリーガの優勝争いに絡んでくるんじゃないかな。
クリスチアーノ・ロナウドとメッシ、どちらがより優れていると思う?
N──(笑)。メッシと言うに決まってるでしょ。友達だし、チームメートだからね。クリスチアーノも偉大な選手だけど、僕の目にはメッシのほうが上に見える。
スペインに勝てたのは
大きな自信になった
君はサントスの一員として、クラブW杯決勝でバルセロナと対戦した。あの時は完敗だったけど、対戦相手としてのバルセロナは君の目にどのように映った?
N──あの日のバルサはパーフェクトだった。《勝利のマシーン》と言えるようなチームだったよ。僕らは完全に圧倒された。同時に、彼らのプレーに魅了されたんだ。バルサのサッカーは好きで、それまでもたくさんバルサの試合を見てきたけど、あの日のバルサは特別だった。僕の目には《奇跡のチーム》に映っていたよ。
サントスでの日々で最もうれしかった出来事は?
N──サントスの一員として多くのタイトルを手に入れたこと、クラブが僕を主力として認めてくれたこと、チームメートの協力があったこと、すべてがいい思い出だ。サントスはもともとブラジルの名門中の名門だった。でも、強いサントスに戻るには何かのきっかけが必要だったんだ。ちょうど僕がプレーしている時にその一押しがあった。コパ・ド・ブラジルで2度も優勝できたし、州選手権も2回制した。念願のコパ・リベルタドーレスのタイトルを手にすることもできたし、すべてが素晴らしい思い出さ。
逆に最もつらい思い出は?
N──サントスを離れた日だろうな。僕をかわいがってくれたファン、クラブ、そしてチームメートに別れを告げなくてはならなかった。それが最もつらい出来事だった。
ブラジル代表はテストマッチで目下6連勝中と絶好調のようだ。現在のチーム状態をどう見ている?
N──コンフェデレーションズカップでのブラジルは、どこと対戦しても対等以上に戦えることを証明できたと思う。それに、決勝でスペインに勝てたのも大きな自信につながった。W杯本番でも同様の結果になることを願っているよ。僕らは勝利におごることなく、真摯な気持ちで1試合1試合戦っていかなくてはならない。W杯では国民の後押しを得ることもできるし、有利な立場にあるのは間違いない。まあ、油断は禁物だけどね。
W杯でのブラジルの目標はもちろん優勝だと思うけど、個人的な目標は何かある?
N──個人目標なんて存在しない。僕はあくまでセレソンの一員としてトロフィーを手にしたいと思っているんだ。コンフェデレーションズカップでは大会最優秀選手に選ばれたけど、それはどうでもいいことだった。僕にとってはチームが優勝したという事実のほうが重要だったんだ。今はW杯でブラジルが優勝することしか頭にない。
ブラジルのライバルになりそうなチームは?
N──真っ先に名前が上がるのはディフェンディングチャンピオンのスペインだろう。美しいサッカーをするし、ハイレベルな選手がたくさんいる。この6年間、ビッグトー ナメントで常にタイトルを手にしてきたという事実は無視できない。それから、スペイン以外ではアルゼンチンとドイツにも要注意かな。
バロンドールの受賞には興味がないのかな?
N──さっきも言ったようにあくまでもチームの勝利、チームとしてのタイトルが最優先だ。個人賞はチームに貢献した結果としてもらえるものだからね。バロンドールに興味がないと言ったらウソになるけど、僕は決して急いでない。チームの勝利のためにプレーしていれば、いずれはバロンドールを手にするチャンスだってあると思う。
君は頻繁に髪型を変えているけど、いつもヘアスタイルを意識しているのかな?
N──結構意識しているよ。テレビのコマーシャル撮影のたびに髪型を変えているから、頻繁に髪型を変えているような印象を与えているのかもしれないね。
恋人のブルーナ・マルケジーニとはうまくいっている?
N──パーフェクトだよ。何の問題もない。
息子のルッカとの関係は?
N──もちろん、いい関係だよ。ただ、サッカー選手は遠征が多くて一緒にいてやれる時間は少ないんだ。でも、僕と一緒にいる時はすごく楽しそうだ。僕もルッカと一緒に過ごす時間をエンジョイしている。子供の成長を見守るのは楽しいものだよね。