開発組織改革の初手

y_matsuwitter
10 min readDec 6, 2018

--

こんにちは、DMM.com CTOの松本です。飛行機の上でこの記事を書いています。今回はDMM.comのアドベントカレンダー第七日目の記事として、技術の話というよりも組織論的な観点にはなりますが、テックカンパニー化にむけて初手どのようなアクションを取ってきたか、それはなぜかという実態を赤裸々に、かつ簡単に綴りつつ、これから組織をテックに変えていきたいという方の参考になればと考えています。

TL;DR

  • ヒアリング:組織改革にあたってはまず現状把握のため、一つの課題に対して複数視点からの意見を取り入れるべくヒアリングを徹底する。
  • パッケージング:取り組む施策は一つのパッケージとして誰もが理解しやすい形で全体に展開する。
  • 透明性:自分と組織、組織間などの情報流通を円滑にするため、自分から積極的な透明化に向けて取り組みの公開やその意義の解説、自分をHubとした各チームの取り組みのブロードキャストを徹底する。

Day One

10/1付けでDMM.comのCTOに就任しました。既にいくつかのメディアやSNSを通してお伝えしている通り、今年2月ごろから前任の城倉CIO​​からいただいた、「DMMにテックカンパニーとしての強さを加えていってほしい」とのお誘いがきっかけでの就任となっています。

[参考リンク] 松本 新CTO就任! 〜DMM.com CxO対談〜https://inside.dmm.com/entry/2018/09/19/CxO-talk

DMMにとって、数年前からテックカンパニー化は重要なミッションとなってきていると話を伺っていたのですが、ではこの命題に対して、自分が就任したなら何からどのように取り組むべきか、就任前から少しずつ情報収集を始めました。

そもそもテックカンパニーとはどのような組織でしょうか。自分の中でのこのミッションの定義は、「エンジニアサイド・ビジネスサイドの区分なく、データと技術を活用して迅速に事業展開ができる」チーム作りなのではないかと考えています。こちらは先日社内勉強会を行った際の資料の一部なのですが、スクラム、データドリブンな意思決定、Lean Startup、デザイン思考など技術的な考え方を活用していくことで事業が着実に、かつ迅速・再現性高く展開できる組織の設計を確度高く実現できるようなノウハウが増えてきています。もちろんこうしたノウハウを適用すれば確実に事業に勝てるような性質のものではないのですが、少なくとも改善できるものだと信じています。

テックカンパニー化の流れの中で、DMM.comは40以上の事業を抱える非常に大きな事業体であることに留意せねばなりません。入社前の時点でも、これだけ大きく多様な事業が進んでいると、ともすれば社内での車輪の再発明が続発する可能性も高く、ノウハウの共有は非常に難しい状況が発生しているのではないかと推測していました。そうした課題感の把握・理解のため、入社当日から二週間ほどは社内のほとんど全ての事業部とのミーティングを設定し各メンバーの課題のヒアリングに努めました。

ヒアリングにあたって重要なのは、一つの課題に対して複数の方面から意見を聞いていくことです。どのような事象であれ、人は私も含めて意図する・しないにかかわらず自分の立場や知識を通して言葉にします。そういったヒアリングするメンバー各位の背景も踏まえつつヒアリングを繰り返すことで、課題の根本的な構造が見えてきます。各メンバーや事業のwantsやneeds、制約条件が上手く噛み合ってないなどの構造が見えてくれば組織課題としての解決はだいぶ見えてくるものですので、特に同じような事象・領域に対して課題が上がる部分から重点的にヒアリングをかけています。

この過程では事業部だけでなく、オープンドアやランチなどを活用して広く社内全体から意見を募ることで問題の輪郭を見えるようにしてきました。ちなみにオープンドアとは、特定の時間帯に社内のオープンスペースなどで自由に経営陣と雑談・ディスカッションできる場を提供するような施策です。CTOのオープンドアは今も毎週金曜時間が許す限りは開催するようにしていて、やはりこういう場でも様々な意見・課題を共有していただけるので、自分としてもありがたい機会です。

情報の流れを円滑にする

さて、実際に組織構造等見ていくと様々に問題があるのが理解できました。

例えば一つに、過度に巨大なモノリスの存在があります。つまり一つのシステムが支える事業ドメインが広いと、それが結果として多くのチームで一つのシステムをマネジメントするような状況が発生している状況を生み出してしまいます。こうしたケースにおける改善では、各事業担当のチームと密に連携しつつ、組織構造に合わせたアーキテクチャ分割、結果としてのマイクロサービス化という方向で事業・システム・組織のドメインをあわせていく方向になります。いわゆる逆コンウェイ戦略と呼ばれる考え方ですね。システム粒度と組織を合わせ、システム間を一定のプロトコルで切り分け、疎結合にしていくことで、スクラムチーム内である程度の開発を独立運営できるようにすることでAgilityを高めていく事が可能になります。余談ですがこういったケースでは分割する粒度がそれほどマイクロなサービスにならないこともあり、マイクロサービス化という単語は正しくないとも自分は考えています。

こうした組織分割等考えていくと、結果として各サブシステム間のインターフェイスだけでなく、チーム間の情報伝達、情報のインターフェイス設計とでもいうのでしょうか、その設計が重要になってきます。組織間で情報が流れない状況だと、結果としてAgilityは上がらず、改善が進みにくくなるためです。ですが、ヒアリングの結果、その前提部分となる情報の流通がまだまだ課題が大きいというのが分かりました。

ですので、ヒアリング前後の自分の初手はまず情報の流れを変えていくことに主眼をおき、

①情報が自分のもとに集まること

②自分の発した情報が伝わること

③組織間で情報が流れること

の3点を目指して動き始めました。一言で言えば透明化の徹底ですね。

まずは、意識を揃えようということで今後の方向性、組織としてのあり方を明確にしようということで、今回の取り組みをDMM Tech Visionとしてまとめ、社内全体に対して発表しました。内容としては先のシステム分割の先にあるAgilityの向上だけでなく、情報の透明化に関してもメッセージを盛り込んだものになっています。

徹底した情報の透明化に向けて、まずは自分からということで日報レベルでCTOとしての取り組みを公開、その活動一つ一つの目的や意義を説明するようなSlackチャネル(#times_ctoというチャンネル)の運用を開始し、またオープンドアや広報チームとの連携で社内・社外双方での発信を活用しています。こうした取り組みが結果として②の自分の声が届く状況の構築に役立ちます。実際、10月、11月で相当数、外部のメディアの取材を受ける機会があり、一貫して今回の取り組みを紹介してきました。

それと合わせて、定例的な1on1の設定とCTOと各プロジェクトチームの1on1に近いような定例mtgの設定を行い、取り組み全てが前に進んでいるか網羅的に確認、サポートできる体制を構築していきました。これは①の情報の集約のためですが、その過程では報告のフォーマット化を徹底していき、何を決めるか、何が報告されるべきかなどを規定した上でできる限りコスト低く運用できることを心がけています。

上記2つの取組みの結果として、何をなぜやろうとしているか、今の課題はなにかというのが全て集約できるようになってきました。

現状の取り組みで行くと③の組織間の情報流通に取り組んでいる最中で、いわゆるSlackのPublicチャンネル比率向上を一つの透明性のKPIとして追いながら、Slack利用方法の周知、先程触れた定例資料の可能な限りの全体公開を進めています。こうしたやり方は浸透に時間がかかるため、経営レイヤでもオープン化を徹底しましょうという意識作りなど含め地道に取り組んでいます。

また、先程のtimes_ctoにおける日報を通じて、自分が見えている範囲内にはなりますがその取組の紹介、DMM Tech Vision関連の進捗などをブロードキャストすることで情報の組織間流通をサポートしています。①②を構築できた上で自分を情報のハブとして利用するというような設計で、スケーラビリティでいうと課題があるので、最初期としてはこの手法を取りつつ、段々と分散的に情報が流通されるモデルを目指していきたいところです。

まとめ

DMMの組織改革の初手として自分がやってきた取り組みについて赤裸々に綴ってきましたが、おおよそまとめるのであれば下記の3点かと思います。

①ヒアリングを徹底して行い、課題に対して複数人の視点から意見を収集、分析する。
②改革案をまとめ、Visionと合わせて一つのパッケージとして全員に伝えていく。
③自分と組織、及び組織間の情報の流通改善を目指し、1on1や定例の設定、自信の活動を報告するチャネルの整備、自分をHubとした情報の仲介

現在、上記の結果としてDMM Tech Visionとしてまとめた様々な施策が進みだしており、3年かけてスタートアップよりも様々な事業が即座に立ち上がりスケールする組織を目指していけるのではないかと実感しています。

ちなみにこれらの開発組織改革に向けて様々な人材を絶賛募集しています。4,000人規模の組織を大きく変える事ができる、それを自身が主体的に行えるタイミングというのは殆ど無いかと思っています。面白いタイミングだと思っていますのでぜひ一度募集見ていただけると嬉しいです。日本でも非常にユニークなポジションの事業体になれるチャンスがここにはあります、入社してDMMを一緒に変えていきましょう!!!

--

--

y_matsuwitter

正座エンジニア。DMM CTO, GunosyおよびLayerX Technical Advisor。早く電脳化させてください。ここには雑に考えた個人的な諸々を投げ込む。