保護者会の卒園児クラス委員、卒園係(卒対/卒園対策委員)の仕事まとめ
保護者会の皆さまこんにちは。この資料は、とある保育園の保護者会で、年長児のクラス委員と卒園係(卒対委員/卒園対策委員/卒園準備委員)を担当した際の記録メモです。
適宜ご自身の状況に読み替え、参考資料としていただければ幸いです。
仕事の概要
保護者会のなかの「卒園係(卒対委員/卒園対策委員/卒園準備委員)」は、年長児クラスの保護者から選ばれ、年長児クラス特有のイベントや、卒園アルバムの制作、謝恩会の開催などを担当する役職の総称です(名称にはゆらぎがあります)。クラス委員が多くを兼ねる場合もあれば、クラス全員で役割を分担するケースもあるでしょう。
どこまでの活動を行うかは、園によってもそのときのクラス保護者の意向によっても異なります。年度ごとにクラス保護者の意見を集約し、個別タスクのやるやらないを判断する必要があります。
ひとつひとつの仕事(タスク)の負担がそれなりに大きいので、実施するタスクごとに数人のチームを作れると良いでしょう。このチーム作りがクラス委員の負担を大きく左右します。
個別チームが作れないタスクは、「やらない」か「クラス委員が請け負う」か判断します。個別チームができたものは、基本的にはチームに仕事を委任します。クラス委員はチームとその他保護者の連絡を担当したり、お金の管理をしたり、相談をうけて知恵を出したりといったサポートをします。
具体的なタスクとツール
ツールは基本無料、あるいは会費で賄える範囲で利用します。
連絡網の作成と共有
保護者にはいろいろな素性の方がいるので、共通の連絡手段として何がよいかは聞いてみないとわかりません。前年まで利用している連絡網があるはずなので、保護者会の慣習に従うのがよいでしょう。無難にメールというところもあるでしょうし、LINE や Slack など活用している前衛的(?)なところもあるでしょう。
「連絡がなかった」「遅かった」で揉めるのは不毛なので、電話ベース紙ベースの連絡網が使われている場合は、ちょっと頑張って改めたほうがいいと思います(1年間通じてのトータルコストは確実に低くなりますし、翌年以降も恩恵があります)。
ちなみにメールアドレスの管理などは Googleスプレットシート を使っておくと担当者間の共有にも便利です。全般にわたって Google サービスは便利すぎて畏敬の念に堪えません。使い倒しましょう。
会費の管理と精算
クラス会費などのお金の管理は、同じく Googleスプレットシート を使うと良いでしょう。簡単な表でお金の出入りを記録しておくとよいと思います。
会費はおそらく少額ですし雑費にクレームをつけてくる方はいないと思いますが、明朗であるに越したことはありません。主要なタスクに予算を割り当て、最後謝恩会や記念品などで端数を清算する感じになると思います。
余談ですがGoogle スプレッドシートには「テンプレートギャラリー」というテンプレート集があり、そのなかの「パーソナル>年間予算」を使うと家計簿的な帳簿をすぐに作れます。若干オーバースペックですが、会計報告など厳格な場合にもしっかり対応できると思います。
アンケートをとる
Googleフォームが便利です。アンケート結果の集計も手軽にできます。
Google ログイン不要で回答できるようにしてURLを共有し、回答してもらいます(保護者の方全員がGoogle アカウントを持っている場合はアカウントで回答者を制限することも可能ですが、アカウントを持たない方もいるので、ログイン不要がよさそうです)。子どもの名前を記名する回答欄を設けて、各家庭1回答になるようにするとよいでしょう。
年度を通して、行う活動を決定したりイベント開催日程や内容を調整したり、意見をまとめる機会が多いので、アンケートは何度も作成することになります。アンケート結果をグラフで出力して提示できるので、多数決で決める際にも説得力が増しスムーズに話を進められるようになるでしょう。
日程調整をする
おなじく Googleフォーム を使うとよいでしょう。
テンプレートギャラリーに「パーソナル>スケジュール確認」のようなテンプレートがあるため、それを流用すれば開催日程調整のようなアンケートがすぐ作成できます。
日程調整と同時になにか意見をまとめたりする場合でも、フォームでまとめて行えるので、状況に応じて柔軟に対処できる利点があります。
ほかのツールとしては 調整さん も便利です。
アカウント要らずでお手軽に出欠確認表が作れ、必要十分な機能を備えています。同じようなサービスはほかにも多数存在するので、慣れたものを使うとよいでしょう。
写真を収集する
卒園アルバムで幼少時や誕生時の写真を使いたいとか、子どもたちの普段の様子を取り込みたいとかいう場合に、ファイルリクエスト機能を使って各家庭から写真をアップロードしてもらって収集することができます。
無料で利用できるBasicプランは容量2GBまで。クラスの人数や収集する枚数にもよりますが、写真や画像であれば2GB枠で十分おさまるでしょう。
オリジナルTシャツの制作
クラスの主要な活動時に、そろいのTシャツを着たいという要望があるかもしれません。わりとよく事例を聞くので、メジャーなイベントなのでしょうか。伝統として例年作成されてきていたら、子どもたちも憧れを持っていて、自分たちの代で作らないという判断は難しそうですね。
保護者の中でデザインの仕事をされていたり制作経験のある方がいればお任せするか、そういう方がいない場合は、ネットサービスでなんとかすることになるでしょう。
「Tシャツ 制作」などで検索すると業者は多数ヒットするので、予算とサービス内容に合わせて業者を選び、作っていきます。デザイン案や価格に関しては保護者(または子ども)の意見を集約してすすめることになるので、何度かアンケートを使いつつ制作し、発注まで行います。
印刷代なども含めて、1枚1500〜2000円程度と見積もればよさそうです。
卒園アルバムの制作
園で卒園アルバムを制作してくれる場合はよいのですが、園からの卒園アルバムがない、または求める品質のものでない場合、保護者会としてアルバムを制作したいという要望があるかもしれません。
こちらも「卒園アルバム 制作」などと検索すると業者が多数ヒットするので、予算と完成イメージにあわせて業者を選定して発注することになるでしょう。例として富士フイルムのフォトブックサービスや、卒園アルバムサービスがありますが、30〜40ページで5000円程度の価格帯になるようです。
写真を選別したり文書を考えたり、配置したり、デザインしたりと多様な要素が含まれるため、複雑な仕事と言えると思います。相応の人数で対処するのがよいでしょう。
謝恩会の開催
謝恩会は、卒園する子どもたちと保護者がお世話になった先生方に感謝の気持ちを伝える会です。
役割分担と担当人数例は、おおよそ次のような感じです。
- 保護者代表挨拶:1名
- プレゼント係:プレゼント・花の手配と集金:2名
- 会場係:会場の手配と受付集金:2名
- 余興係(クイズや出し物など):2名
- スライドショー担当:1名
- 司会:1名
謝恩会についてはネット上に多くの情報があるので割愛しますが、およそ次のような流れで開催されると思います。
- 開会の挨拶
- 保護者代表の挨拶
- 先生方の紹介
- 歓談・食事
- 出し物(クイズやスライドショー鑑賞など)
- 園児からの挨拶・プレゼント
- 先生方からの挨拶
- 閉会の挨拶
卒園進学の時期は保護者も先生方も多忙で、関係者の方々は疲弊してこの日を迎える気がしますが、できるだけ多くの方に分担していただき、実施できることが望ましいと思います。
スライドショーの作成
1年間あるいは在園中の子どもたちの写真を使ってスライドを作り、メッセージを添えて音楽に乗せ、謝恩会で上映するものです。子ども達が飽きないよう、10分程度の動画にまとめるのがよいようです。
卒園アルバムを保護者会で制作する場合は卒園アルバム用に提供された写真を流用し、そうでない場合は園と交渉して写真を提供してもらうことになるでしょう。どの程度写真を共有してもらうかは園との交渉次第となり、交渉力が問われるかもしれません(園アプリが導入されていたり、定常的に保育園での写真が共有される仕組みがあれば、収集コストは低くて済むでしょう)。
スライド構成によりますが、写真が揃うのは年度末になりタイトな日程になりがちなので、園側の作業時間(収集、選別)を考慮したり、各家庭から事前にメッセージをもらっておくなど、前倒しで進めるのが良いと思います。
スライドショーを制作するツールは「スライドショー 制作」などで検索すると選択肢はいくつかでてきます。フリーソフトがいくつかありますが、Mac を利用されている場合は iMovie など標準のソフトでも十分本格的なスライドショーが作れるでしょう。
やることリスト(時系列)
上記タスクをカレンダー風にまとめると、下記のようになります。
前年度3月末まで
- 卒園クラス前任者から引き継ぎ
- 自身のクラス会費、連絡網(保護者名簿)の引き継ぎ
- 次年度に実施する活動の希望をとる(アンケート)
確認項目
- Tシャツ制作の実施可否
- 卒園アルバム制作の実施可否
- 謝恩会の実施可否
4月上旬
- アンケート結果を集計・周知
- 年長児クラスで実施する活動を決定、担当決め
担当例
- Tシャツ制作係:2名〜
- アルバム制作係:5名〜
- 謝恩会係:9名〜
4月中旬〜6月上旬
- Tシャツ制作
- デザイン決め〜制作(適宜アンケート)
- 発注、費用計算
確認項目例
- デザイン案 A/B/C
- シャツ仕様
- 価格帯
- 購入見込み数
6月中旬
- 保護者懇談会(園で実施)
- Tシャツ引き渡し、代金回収、精算
- 保護者懇談会後に懇親会
- 保護者名簿の更新
6月下旬
- 遠足(Tシャツ着用)
揃いで記念撮影するのでTシャツ着用の案内をだす
7月〜9月末
- 卒園アルバム用の写真を各家庭から収集
- アップロード用フォーム作成、共有
- 収集後、園へ引き渡し
10月
- 運動会(Tシャツ着用)
事前に Tシャツ着用の案内だす
11月〜
- 謝恩会の打ち合わせ
- 各役割の準備、役割分担の詰め(挨拶、花、会場など)
- 卒園アルバムの準備
2月末〜3月上旬
- 発表会(Tシャツ着用)
Tシャツ着用の案内出す
- 1年分の写真を園から受け取り、選別
- DVDに出力し、各家庭分のコピーを作成(園からの共有がない場合)
- スライドショーの作成、動画ファイルを出力
3月中旬~下旬
- 卒園式、謝恩会開催
- スライドショーの上映
- 1年分の写真DVDを各家庭に引き渡し
- 卒園アルバムの引き渡し
- クラス会費の精算
1年間を終え、最後の大事な仕事
1年間を通して行った経験を、次年度へ引き継ぎます。
自身はクラス委員として雑務全般と、各タスクのとりまとめ、連絡係、写真収集や園との調整、スライドショー制作などを担当しました。一年間しっかりできたと思う反面、正直二度とやりたくない「苦行」でした。
家事育児仕事で逼迫している上に、自身の子どもと接する時間を削ってでも行わなければならないところに厳しさがあります。また仕事と違い、保護者会は多様な価値観のメンバーとの仕事になるため、気苦労を感じやすい特性があると思います。
引継ぎが軽視される理由と、それでも重要な理由
ひとつひとつのタスクは難しくなく、基本的に「時間をかければ誰でもできる」仕事です。これは皮肉にも、保護者会役員が苦労の割に評価されない要因になっていると思います。とくに卒園係は卒園によって接点が減りフィードバックを得にくいという事情もあります。クローズドな成果物しかなく、「引き継ぐほどのことは何もしなかったのでは?」という気持ちも湧いてきます。
タスクを終え消耗した状態で、通常営業の家事育児仕事と、進学先の小学校準備や学童クラブの手続き、きょうだい児の新年度の手続きをしながら、「保護者会の仕事を引き継いで次年度を楽にしてもらおう!」などという意識が高まるわけもありません。学年が違えばあまり接点もありませんし、正直知ったことではないのです。引き継ぎを軽視する理由には事欠きません。
しかし保護者会役員や卒園係の仕事は、全体の流れがわかってようやくタスクの優先度や要点が理解できるものです。繰り返す必要のないことに時間をかけるのは誰にとっても人生の浪費です。経験を伝え苦労を回避できる部分がわずかでもあるなら、次につなげる価値があると思います。
こうした活動は、記録を残さなければ歴史に埋もれ跡形もなくなります。価値のあるなしは利用する誰かが判断するので、社会に貢献しよう、現状をより良くしようと努力したのであれば、引き継ぎはしっかり行うことをおすすめします。記録を残さなければ、何も活動しなかったことと変わりなくなってしまいます。それは1年を懸命に過ごした者として不本意ではないでしょうか。
おわりに(気持ち)
保護者会の仕事とくに卒園に関わる仕事は、そのときの当事者間の関係や所属する園・保護者会の慣習に依存する「特殊事例」とみなされ、引き継ぎや知見の共有が軽視されがちです。やったことの箇条書きを口伝されるのみで文書もなく、その必要性や実施方法は伝えられない引き継ぎも多いように思います。
引き継がれる側と引き継ぐ側両方を経験して感じるのは、前任者は自身の役割を終えた消耗と、通常営業の家事育児仕事に加え卒園進学の多様な手続きに忙殺されて余裕がなく、後任者はガラガラポンで保護者会に初参加したひよっこのため、何を引き継がれるべきかもわかっておらず、円滑な引き継ぎが難しいということです。そうこうするうち前任者は卒園により姿を消し、後任者は経験から学ぶ機会もなく一からタスクを噛み砕き理解して実行する徒労を強いられます。引き継ぎされていればすぐできる仕事であっても、必要な手続きを把握したり文章を書いたり、連絡を取り合ったりに時間を削られていきます。
家事育児仕事に追われる者にとって、時間が非常に高価なことは共通認識だと思います。毎年の年度替わりに、避けられるはずのこうした混乱が全国で繰り返されているとしたら、これはもう 日本の損失 といっていいでしょう!
津々浦々のPTAや保護者会で、ガラガラポンによって突如不遇が降りかかった方へ、このメモがなにかしら活動を円滑にする気づきを与え、一歩前進する助けになることを願ってやみません。こうした活動がもっとオープンに議論され、適切な知見共有が進むことで、こうした負荷が軽減し、要不要をふくめて見直しがすすんでいくことを期待しています。