深圳 旅行記

Naoko Yamagata
16 min readMay 4, 2018

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高須ツアー(第8回ニコ技深セン観察会)参加に際して:参加目的など

メディカル領域で仕事をしていて、最近は、医療機器やヘルスケア・デバイスの話も良く入ってくる。生体から情報を抽出して、何らかのアウトプットを出す。ベースとなるバイオや材料の技術さえ出来てしまえば、あとはそれを”デバイス化”、つまりは信号を受け取って処理して何等かの出力させたりすることになる。そんな機器物の企画となると、事業化までのステップというと、必ず”プロトタイピング”とか”量産化”なんていう矢印をエイやと適当にガントチャートに引いたりしているが、そこで実際誰が何をやるのか、良く分からないままであった。バイオや化学なら専門なのでイメージ付くが、メカとなるとブラックボックス。ということで、ちょっとそのあたりを感覚的に理解しないとな、というのも今回の参加の一つの目的であった。

もう一つの目的(主目的)は、うちの高校生の進路決めに、なんらかのヒントにと思ったこと。モノづくりの現場を見る経験もそうだが、(人の作ったもので遊んでいるだけでない)実際に自分で作りたい物を自分でつくっている方々と交わることも貴重な体験になろうかと。また、今の時代、日本の若い人は無理をしてでも海外に身を置く必要があると信じているが、今まさに高成長中の街である深圳の、それも街の心臓部の見学ができるチャンスは貴重な体験となろうと思いました。

前後に香港観光をいれていたので、18日のみの参加。一日だったけれども、高須さんの意図的か偶然か、一日でパソコンなどのデバイスの組み立て工程の流れが見通せるような見学の流れになっていました(逆プロセスだが)。

・Seeed AMC( http://f.amap.com/6r4s1_04D4lc0): オートメーションで基板みたいなのを作るのを見る。テープのリールみたいなのが、部品なんだと初めて知った(よくできてるわ~)。機械は、いろんな注文ごとに設定して色々作れるもの。

・ JENESIS 大家好广场 (http://f.amap.com/2DSgD_0422tFd):こちらの工場も、基板みたいなのを流れ作業で作り上げてゆき、最後商品にまで組み立て、出荷前検査などまで。部品があれば、組み立てるだけなんだなぁ。多品目を数日おきに切り替えて生産してるとのこと。数量と製造スケール感についていろいろと教えてもらい、何となく分かった気に。

・深圳市硕峰科技有限公司 (https://ditu.amap.com/place/B0FFGHD77K):プラ部品の射出成型の工場。金型があれば、あとは樹脂ペレットいれてボコボコ作りわけられる。それと部品を作業者が組み立てたら出来上がり、という感じで注文数量を捌いていく。色とか艶ありとかマット仕上げとか。見学中に床の水漏れが発生して、床置き段ボールが濡れそうだよと指摘してあげた私は、少し生産に貢献できたか。

・深圳市欣全鑫五金制品有限公司(https://ditu.amap.com/place/B0FFF3JL0R):一つ前に見たプロセスで使う金型なんかをつくるところ。金型は気楽に作り直せなさそうだなぁ、と実感。あと金属の部品も、金属板打ち抜きでパコパコ作る。こんなのの打ち抜き型も、ここで。「ちょっとここのデザイン変更お願い」なんていうのを、ご近所にすぐ言いに行けそうなのは、深圳ならではの便利な感じもした。

このあたりで、すでに脳内では「もう今日の一連の工場の工程組み合わせればパソコン作れるじゃん」という安直な理解に至り、とりあえず私の目的は達したかな、と。

・德普沙井电子城B座(https://ditu.amap.com/place/B02F38Q19P):部品屋さんの総合デパート(大口客用)みたいなところ。あまり、ひと気はなく、商談のための茶器が各ブースに皆おいてあって、そのデザインが各様で面白い。まあそのくらいしか見て分かる物が無いのだが・・・ともあれ、これまでの見学コースで見て回った工場等で使う部品が、同じ町のこういうお店で一気に買い付けされているんだなーと。部品が足りなくなれば「ちょっと買い物に」という感じで、ご近所で調達できてしまうのは、便利そう。

・Insta 360 (http://f.amap.com/3513N_0383qpm):これまでの工場は、中国工場団地、みたいな、いかにも中国らしい場所にあったのだが、ここに来て、バスがついた町は「ここはアメリカのどっかの真似か」というような、ある意味我々には見慣れたオシャレなビル街にヒップスターもどきな人々がうろうろしているところ。そんな中の立派な高層ビルの上の、ソフト系ベンチャー会社訪問。働いている若者達は中国出身の人達が多勢なんでしょうが、オフィスは見た目アメリカ等のベンチャーと同じ感じだしビジネスのスコープや接点は世界と直接つながってる点も同類。深圳にオフィスを持つ意味は、あまりちゃんと聞けなかった(コンシューマー商品で、ハイエンドなユーザーさんやグローバル企業向け商品だと品質基準が高そうだけど、深圳で作っているのか?とか)。

プレゼン会場のコーヒー屋がまたお洒落。

それまで同行のツアーメンバーの方々は普通の温和な青年・勤労者といった印象だったのが、ここで360度カメラの新商品プレゼンが始まると、急にオタク的盛り上がりを見せて驚き。5万以上するガジェットを迷わず十人超が我先に買うのを見て、更に驚愕。これが高須さん言う所のメイカーのパワーか?皆さま永遠に盛り上がっている所を、一足先に失礼してお別れいたしました。

帰国して(自分視点で)

バイオの世界だと、デジタルヘルスっていうのが今後メディカル領域の一つのトレンドとなる。確かに、10年以上前まだIPHONEなんていうものが出てきていなかったころ、歩行のリズムから病気を診断するというテーマがあったが、歩行を測る加速度センサーを作るのにお金がかかるので断念したことが。しかし今ではIPhoneで、人類全員ともいえる加速度が常時測定されている状態が、リアルに実現している。また睡眠時無呼吸症候群のモニタリングも、昔は枕元に大型機械をおいて、というような発想だったが、今はスマホアプリで睡眠管理等いろいろできる。最近医療機器界で話題になった、24時間血糖値モニタFree Styleリブレは、地腕に貼ったソフト針付血糖値センサから送られるデータをスマホが受け取り、糖尿病の血糖値管理をするもの。これも、さらに次世代は針を使わず血管の光センサでの検知、あるいは汗から検知するような、非侵襲な仕組みを皆ねらっていて、例えばApple Watchみたいなものと連携してくると、糖尿病予備軍のメタボ層がダイエット管理に使う様になることであろう。個人のバイオリズムや生体情報とゲノム情報がどんどん簡単に取れるようになってきており、医療や介護、あるいは個々人の生活にも活用できる可能性が広がってきている。そうなるとビッグデータだとかいう話にもなって、この領域は、もともと医療機器メーカーが仕切っていたのだが、今ではGoogleやAppleといったIT系が急速に入り込んで来ているのは、当然の流れと言える。

高須さんセミナで出てきたY Combinatorも、JETROのレポート(2016 年米国バイオテクノロジー産業の動向)に、バイオベンチャーへの投資を積極的に行っている事が載っていた。今回参加できなかったインキュベーターのHAX訪問時にバイオの話が出ていたようですが、HAXのサイトに行ってみると、すでにJ&Jがタイアップしているようで流石手が早い。この領域はベンチャーから新ネタが出てくるので、大手は網を張っている。

今回の見学会では、深圳発の革新的なアイディアを元にした事業はまだこれから、という話であったが、当日最後に見学したInsta360などのような会社は、中国全体では今後いくらでも出てきておかしくない。そういえば、360度カメラといえば、カプセル内視鏡の画像処理も今後はもっと進んでくるはず。カプセル内視鏡で撮った腸内の多量の画像データを、現状は医者が見ているものの、さばく量的にも能力的(注:小さいものの目視検知等)にも人間では限界があるため、AIで事前に画像の自動診断をするようになるのは必至であるが、その場合、写真のつなぎ目の出血や潰瘍を見逃さないで検知できるかどうかがポイントになろう。それができれば、将来的には、個人がたまに自分でカプセルカメラを飲んで、アプリで腸内の健康チェックをしたりといった健康管理が可能になり、大腸がん等の早期発見にもつながろう。今後深圳単独で見れば、まだバイオといった人材はいないのかもしれない。しかし、バイオでも深圳と中国の他のクラスタとのネットワークが広がれば、数年たたずに医療機器ベンチャーもどんどん出てきそうである。特にスマホと連携したようなデバイスやアプリは、深圳ならトライアル&エラーが急速にできそう。

医療機器は、しかし、各国の医薬・医療機器の認可・承認の規制に縛られることから、製造設備・プロセス管理の品質には厳しい国際的ルールに添う事が必要となる。今の深圳で対応できる施設は少ないかもしれない。しかし、だれかが、その品質管理の仕組み(ISOみたいなの)を入れた設備を作ってしまえば、そんなにハードルは高くない気がする(深圳でなくてもいいかもしれない)。今後Watch.

最後に

ツアー中、高校生の息子にお話をしてくださった方々、また見学中に専門的なことを解説してくださった皆様、大変感謝をしております。参加者皆様の自己紹介や、またWeChatでの交流等は、高校生として進路や将来の事を考えるにあたり、刺激になっているようです。

また、今回のツアー、高須さんの素晴らしいプランニングには感謝しております。息子も、その後の香港で、私らの内容の薄い行き当たりばったりの町観光に呆れて、改めて深圳での充実した一日、高須さんの企画力と事前準備の素晴らしさをシミジミと実感した様です。本当にどうもありがとうございました。

これがきっかけで、世界に一歩を踏み出してほしいものです。

以下は、その他、深圳の町。観光など 雑記。

深圳 町 開発

高須ツアー、郊外の工場見学のバス中。深圳中央から。たぶんG4号線という路を北西に進んでいった、その窓の外、数分おきに、新築ビルがニョキニョキたっていたり、工事中のビルがタケノコのように建ち上がっている町が次々出没。最初、すごいなーと写真を撮ろうとしていたが、次々に新しいマンション群が出てくるので、そのうち撮影をやめてしまった。タケノコより多いくらい、ニョキニョキと。流石中国。

こういうのは、マンションなのか、だれが住むのか、と思っていたところ、次の大芬油画村の駅のそばで、マンション勧誘を受けた。どんなものか。社会主義国家だと、賃貸のみなのかしら。

大芬油画村

絵画村(この村について、詳しくは高須氏記事)へ。深圳でも、一般には円安でさほどの買い物メリットが無かったが、この村の絵は一桁安い。日本だと油絵というだけで学生の絵でも数万円はするのに、ここは千円位からある。基本、量産型のなんちゃって風景画、名画コピー、中国風絵画店用の売れ筋モチーフがメインだけど、気に入ったものがあれば自宅にと思ってうろうろ。下のような、量産+万人受けしそうなものが多い。お店やホテルなら、こういうのが売れるだろう。

もっと、地元画家や学生のオリジナル作品や習作でもあればと思ったのだが、なかなかない。と、そこに、我らが 草間彌生のコピー、もといインスパイヤード作品が。この店で数点買いました。一点数百とか千円とか。

草間風作品は筆で描いた油絵かと思ったが、よく見ると、たぶん、黒いキャンバス地に油絵具をプリントで印刷したっぽい。この画商さんは、他の作品はすべてキャンバスへの印刷コラージュ作品なので、草間モチーフも印刷で作ったのかもしれない。草間作品は筆タッチが不要な画風だから、逆に印刷の方が元の細かいプチプチまで再現できて、良いともいえる。この店の名前を聞いておかなかったのが、失敗。欲しいモチーフをリクエストしたら、プリントして作ってもらえたかも。コラージュは、カジュアルなものが多いが、センスはあった。

もう一つ、結構好きな作風の作家さんの画廊があって、パンフもらってきたのでネットで探してみたのだが・・黄海帆という作家さん。

その他の作品:https://kknews.cc/culture/nmxxgrg.html

深圳(この村)に在住のようで、ご本人がお店におられた。木の皮の足のシリーズはこの方の量産用モチーフのようであるが、それ以外はポートレートがお得意のよう。お店にも、自画像や肖像画がかかっており、よさげな美人画を、幾らだと聞くと、それは奥さんの肖像だから売れないと。別のSF系老人像みたいな良い絵は、日本円3万円位の値段で、今思うと激安ではあった。こんな絵を書いて、というリクエストにも応じる模様。また再訪するまで、ブレイクしないでほしいものだ。

服飾城

初日のMeet-upのレストランの入っている 罗湖商业城デパートの「服飾城」。洋服屋ばかりがずっと並ぶ。円安で余り安い感はなかったけれども、中に布地だけを、フロア中ひたすら売っている大きな区画があって、圧倒される。何でも、作って欲しい服(ブランド物でも何でも)を言えば、選んだ布地で作ってくれるそうだ。機会があればスーツなど作ってみたいものだ。

ひたすら布布・・・
中国不思議ファッション 左:金魚のドレス 右:町でみかけた豚夫婦と豚の子のネックレス。しかし、これは何か結婚式の縁起物のようだ。金魚ドレスも、なにか節句の演技物かもしれない(さもなくば誰が着るのだ)。

茶器

どなたか別の参加者が、中国茶器でのお客様おもてなしの方法のビデオを紹介されていましたが、急須の上からザーザーお湯をかける方式のための茶器が、電気街の商談コーナーに皆おいてあったのは中国らしかった。あれでお茶を飲ませるのがマナーということなのか。デザインが色々で可愛い。ステン製や陶器製は、香港デパートで見当たらず、買えなかった。

デザインも各様。左:排水ドレイン付きもある。
これらは、香港のお茶のお店で、試飲用の道具、買うと、右の値段位から

自転車

折り畳み自転車を少し前に買ったら、マニアが多い世界のようで、折り畳みの新機構とか新しい自転車ガジェット類もしょっちゅうKickstarterのネタに上がっている。中国も、セグウェイが売られている横で折り畳み自転車も結構売っていた。

これは、自転車じゃなくて、電気のバイクか。しかし、後ろ席の背もたれクッションは、自転車にもほぼ装備。買って帰りたかった。
左のは、日本でも見たことある。右:セグウェイ車いす。
左:奥に2種おりたたみ自転車 右:トランク式?自転車

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