雅哉さんとおもてなしの「覚悟」。

旧ナムコ(中村製作所)の創業者であり会長、バンダイナムコホールティングス最高顧問でもあった中村雅哉さんが亡くなられました。

「パックマンの父」中村雅哉さん死去 - NHK NEWS WEB
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170130/k10010858381000.html

僕にとってナムコは、ゲームが好きになったキッカケであり、ラジオを好きになった一因でもあり、ナムコが経営していた「ワンダーエッグ」に入り浸りになり、それが元で(?)大学受験に失敗し、その後なんとか新卒で入った最初の会社です。直営のゲームセンター(ロケーション)の店員をやっていました。

会社では楽しいことだけでなく、ほろ苦い経験も沢山して、退職後もなおエンターテイメントを好きでいられた、その理由となる大事な存在。そして中村さんは、なかなか出会えない立場ながらも、僕にとって「お父さん」と言えるような人だなと思っています。

そういえば、会社の中で、中村さんは「雅哉さん」と呼ばれていたことが多かった気がします。非常に近しい存在だったような印象。


僕がナムコという会社で学んだのは、おもてなしの心。
それも、時に自己を犠牲にしても愛を受け渡す必要性の意識、その重さでした。

いわゆるビデオゲーム、アーケードゲームは、本来人間の生活にはいらない存在。だれも使わなければ、すぐ廃れてしまいます。遊ぶ道具を用意しても、どうやって遊ぶか説明してくれる人がいなかったり、助けてくれる人がいなかったら、まったく機能しないのです。

そんな危うい存在を産業にしてかつ、お金をいただくにはどうしたらよいのでしょう。雅哉さんは「遊んでくれる対象の方に対していかに親切で、心配りができているか」というところに着目していたな、とおもっています。会社全体も「おもてなし」をものすごく意識して人材育成をしてきていることがわかりましたし、僕もそれに同調していろいろなことをやってきました。

ただ、人に楽しんでもらうためにはそれなりの準備と心構えが必要で、完璧になるまで何時間何十時間もかけて取り組まなくてはいけませんでした。

店舗は深夜のシフトで、閉店してから朝までゲーム機のメンテナンスや設置、設定に苦心しました。機器は商売道具、いかにストレスなく、気持ちよく遊んでもらえるかがカギです。当然故障や不具合はすぐ売上に反映しますから、整備や修理の技術は非常に重要です。

しかし、覚えるには時間がかかります。また相手は機械ですから、一筋縄ではいかず、いろんな予測外のことが起るのです。トライアンドエラーをくりかえし、なんやかんややっているうちに、朝の光がさしてきて、疲れ切って家にかえり、さほど寝られずまた店へいって・・・という生活を繰り返していました。非常にハードでした。

それ以外にも会社内の人間関係、常連客の癖や好み、遊びに関するしくみや法律、イベントの人員手配や台本の書き方、予算組みに研修指導に・・・覚えなくてはいけないこと、乗り越えなくてはいけないものが山積み。

とにかくなんでもやってみて、ころんで、またやって、ころんでを繰り返しているうちに、精神的肉体的にも限界を迎え、働くことの意義を見失い、退職を決意します。それは人を楽しませることに対する「覚悟」や「意識」が僕に欠けていたことを意味します。他の人だってみんな同じように苦労しているのに、自分だけ逃げたのです。

会社に全く恨みみたいなものはまったくありません。離れてもなお、ゲームは好きだし、人を楽しませることはできるだけしたいとおもっています。それが現在の仕事にもつながっているし、新たな世界を広げてくれる大きな武器になっています。今思えば、ナムコは「おもてなし」の大事さ、重さ責任をちゃんと教えようとしてくれていたんだとおもって、すごく感謝しています。

自分が愛をもって奉仕しなければ、相手は愛を返してくれないのです。シンプルですが、それがなかなかうまくいかない。


トップが亡くなったことを聞いても、遠い国の出来事のようで、少し実感がわいていないのです。もしかしたらひょっこりあらわれて、また面白いことを仕掛けていてくれるんじゃないかな、という気がしています。

創業当時、2頭しかない回転木馬を沢山の人に遊んでもらうため、毎日一生懸命その馬を拭いて、整備して、お客様を迎え入れたという雅哉さん。昔からやっぱり愛をもっておもてなしをしなければ、人は動かないことを知っていたのかもしれません。今ももしかして、回転木馬をどっかで拭いていたりして。

こんなすごい勉強の場をつくってもらった雅哉さんに、あらためてありがとうを。

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