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米国記者の考える生き残りスキルはこれだ


統計で明らかになるニュースルームの変化

授業の準備でちょっと面白い統計を見つけた。インディアナ大学ブルーミントン校が2014年5月に発表した報告書「The American Journalist in the Digital Age」。1971年からおおよそ10年ごとに行われているいわば米国ジャーナリストの経年観察。調査は2013年秋に実施され、ランダムに選ばれた記者1080人が回答した。

いろいろ興味深い結果はあったが、最も目を引いたのはAdditional Trainingの項目。大多数(68.1%)が、仕事をする上でさらなるスキル習得の機会が必要だと回答した。そして、必要スキルとして挙げられたのは、人気順に①ビデオ撮影&編集②ソーシャルメディア活用③データジャーナリズムだった。

Lars Willnat and David Weaver, The American Journalist in the Digital Age

このグラフは米国のニュースルームの変化を如実に示す。クリック率を上げるビデオや写真をつけてソーシャルメディアに投稿することはもはや仕事の一環だし、大事件が起こればiPhoneを使って”新聞”記者が現場映像配信だってする。ビジュアルを強く意識して、もっとマルチメディアに展開をー。読者やニーズの変遷に合わせて、現場の記者に求められるスキルは刻一刻と変わり続けている。

70〜80年代の調査では、歴史や経済、法律など専門を含めた教養知識(Knowledge of world affairs)のニーズがもっと多かったという。教養の人気は減り、コーディングなども含め、より実用的なスキルを求める傾向が浮き彫りになった形だ。

新聞紙がなくなり、ウェブだけになる日が近いとは思わない。ただ年々、人々はデジタル世界に生息域を移してきている。魚のいないところで釣りは出来ないのだ。そういった意味で、報道機関にとってFacebookやTwitterの活用は必須で、悠長に検討する余裕は本来ない。

どうやってソーシャルメディアを使うのか

大学院の授業でも、ソーシャルメディアの活用はよく登場する。記事に興味を引く見出しをつけてTwitterでつぶやいたり、結果の解析方法を学んだり。調査報道で有名なプロパブリカでは出稿記事1本につき5ツイートが記者にノルマとして課され、ハフィントンポストでは写真やSEO対策をした見出しがないと記事がボツになるそうだ。

Lars Willnat and David Weaver, The American Journalist in the Digital Age

実際にアメリカの記者はソーシャルメディアを良く使う。といっても、上のグラフが示すように、まずは情報源としてだ。ミズーリ州ファーガソンの黒人少年射殺事件を担当したThe Wall Street JournalのBen Kesling記者はその第一報をTwitterで得たという。

朝起きたらTwitter、暇が出来たらTwitter、寝る前にもTwitterをしているよ。だって何よりも早く情報が飛び込んでくるじゃないか

彼らが主に使っているのは「Tweetdeck」というアプリ。複数のタイムラインを同時に表示できるソフトで、ユーザーを実際にフォローしなくても(ここが大事。あなたのタイムラインはすっきりしたままにできます)#ハッシュタグや@ユーザー名ごとにカラムを作って流れを整理しながら追うことができる。

例えば#commoditiesというハッシュタグを追えば、全世界のコモディティー市場や価格形成の事情が手元にどんどん飛び込んでくる。もちろん万能ではない。けれど、先物取引市場担当の記者ならば、そこから記事の種を見つけ出すことはたやすいはずだ。

老いる米国ニュース業界

The American Journalist in the Digital Age」では、ほかにも面白い統計情報がまとめられている。例えば32歳(1982年)だった記者年齢の中央値が、なんと47歳(2013年)にまで急上昇している。

学士号を持つジャーナリストの割合は58.2%(1971年)から92.1%(2013年)になった。かつては『ワーキングクラス』だった報道記者の世界でも、他業界と同じように急速な高学歴化が進んでいることがうかがえる。ただし、アメリカの記者の給料は日本のそれとは比べものにならないほど安いことを付記しておく。

ちょっと怖いのは、この40年間で仕事の満足度(49%→23.3%)や自由度(60%→33.6%)が著しく減ったことだろうか。薄暗い報道部の片隅でじっと耐えている人が今日もどこかでいる。明るい未来を早く見つけ出したい、と切に思う。


Originally published at journalismplus.hatenablog.com.

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