AWSのSumerianを世界最速レビュー

【ブラウザベースのVR/ARビルドツールSumerian】

AR Ojisan
12 min readJan 18, 2018

昨年末のAmazonのRe:Inventにて発表された数々のAWS新サービスの中で一際僕が注目したのがAmazon Sumerianでした。

説明にもある通り、SumerianはVR、ARコンテンツを作成、ビルド、公開できるアプリケーションです。VRやARのコンテンツを作るツールとしてはUnityやUnreal Engineなどがありますが、Sumerianはウェブブラウザで実行できてしまうというのが一つ特徴として挙げられます。Oculus,HTC ViveのほかiOS, androidアプリケーションにも対応しており、実はUnityのプロジェクトもインポートできるんだろそうです。

【Sumerianのプレビュー審査通りました】

そんなSumerianを発表された当初からずっと使いたくてうずうずしてたのですが、プレビュー希望者は申し込みをして審査を待つという状況でなかなか触らせてもらえませんでした。しかし、2018年1月17日の朝、メールボックスを見るとなんと「Sumerianのプレビュー審査に通過しました」という旨のメールが!!

もう朝から嬉しすぎてしばらくSumerianばかりいじってました(笑)今日はそんなSumerianを触ってみた感想を世界最速(ARおじさん調べ)で公開したいと思います。

ちなみにPreview版の中身や成果物をブログやTwitterに掲載しても良いかどうかTwitterでSumerianのGMに問い合わせたところ快く受け入れてくださいました。ARおじさん、AWSのGMにゲリラリプライを飛ばすの図。

またSlackグループも用意されているようで、こちらで質問や自分の作ったプロジェクトのシェアなどもできます。(ご察しの通り英語です)

【用意された豊富なテンプレートとチュートリアル】

さて早速AWSのコンソールからSumerianの画面に入るとプロジェクト作成の画面が表示されます。プロジェクトは空のシーンから作成しても良いですし、下に用意された豊富なテンプレートを活用することもできます。

現時点では空のプロジェクトも合わせると12個のテンプレートが用意されています。ARKit用のテンプレートやSumerianの公式キャラクター(?)のPrestonやCrisineがインポートされているものもあります。

テンプレートを選択すると、シーン名の入力画面のあと、実際のエディタ画面が起動します。「Training Room」などすでに背景が盛り盛りに用意されているテンプレートはエディタ画面に遷移するまでに若干時間がかかる印象です。まずは空のプロジェクトを開いてみます。

またチュートリアルも豊富に用意されていて、これに沿ってSumerianをいじればある程度の機能は網羅できるようになっています。

【エディタ画面について】

エディタ画面は以下のようになっています。

Unityを触ったことがある人ならなんとなくどこがどんなことするところかはわかるかなと思います。ただUnityと違って各操作パネルを自分の好きな場所にアレンジできる機能は無いようです。

左上がEntities Panel、左下がAsset Panelになります。SumerianにはEntityとAssetという概念があり、AssetはSumerianのAsset Libraryや外部ソフトで作成した3DモデルをSumerianにインポートしたもので、EntityはそれらAssetでシーンに追加されたものです。Entityはヒエラルキ構造を取れるので、親子関係を構築できます。

真ん中がCanvasでシーンを視覚的に確認できます。

右側はインスペクタパネルでシーン内で選択されたEntityの各パラメータwを操作したり、Componentを追加したりできます。

上部にある「Create entity」を押すと簡単な3D, 2Dの図形やパーティクル、ライトなどを簡単にシーンに追加できます。

試しにBoxを追加するとこんな感じ。

個人的に面白いなと思ったのは「HTML 3D」です。HTML 3Dはエディタ空間内に簡単にHTMLやiFrameタグを埋め込める機能になっていて、例えば空間内にYoutube動画を流したい時などに動画のURLを挿入するだけで実現することが可能になります。

シーンに追加するとUnityでいうところのPlaneのようなオブジェクトが登場します。実際にYoutubeのiFrameタグを入れて動画を流してみました。HTML3Dのインスペクタの下部に「HTML3D」という項目があります。

「Open in Editor」を押すとHTMLを記入できるエディタが別ウィンドウで表示されます。ここで自分の表示したいHTMLを記入することでVR,AR空間内で表示することが可能になります。

ちなみに下記のデモで再生している動画は自分がUnityとARKitを使って、初めてARアプリを作って公開した動画になります(懐かしい)

これは個人的にすごい嬉しい!UnityだとiOSやAndroid対応した空間上にHTMLをレンダできるアセットがなかったので、YouTubeを流したり、ブラウジングしたりできなかったのですが、これなら超簡単にできますね。

また「Import Assets」を選択するとすでにSumerianで用意されている3Dモデルをインポートできます。

下の方には音楽ファイルっぽいものもあります。

また右側の「Import From Disk」から自分の持っている3Dモデルなどもインポートできます。

【Sumerianのメリット】

あくまで1日という短い時間の中でSumerianを使ってみた個人的な所感を述べたいと思います。Sumerianを使うメリットは大きく二つあるかなと思っています。

一つはブラウザベースなのでツールのインストールなどをする必要がなく、デプロイも基本的にはWebベースなのでUnityに比べて、コンテンツを素早くローンチすることができると思います。ネット環境さえあれば、どの端末でもプロジェクトを編集し、デプロイできるのは便利だなと感じます。特に僕は別の投稿でも述べている通り、VR,ARはよりWebベースのアプリケーションをもっと出していくべきだと考えているので、WebベースでアプリケーションをローンチできるSumerianはオススメしたいなと思っています。

二つ目はAWSの各サービスとの連携です。個人的にSumerianの正式ローンチが楽しみな最大の理由はここにあります。僕はいろんなARアプリを実験的に作ってきました。例えば自分が喋った言葉が空間に浮かんできて、それが英語に翻訳される視覚的な翻訳アプリやVR/AR空間の中でWatsonが自動生成した文書を音声として流すデモなどなど。これらは全てUnityで作っていますが、そこには「他サービスとの連携」というちょっとしたハードルが存在します。

例えば入力された音声を翻訳したければまずGoogle CloudやIBM CloudのSpeech to Textを使ってテキストに変換して、それをTranslaterにかけて翻訳して、またText to Speechで音声に戻すなどの作業が存在します。Unityにはそれらを実現できるサービスがないため、他社のクラウドサービスと連携しなくてはならないわけですが、それらはUnityAssetStoreに売られているAssetや他社が出しているプラグインを使用する必要があります。

しかしSumerianが用意されているAWSには豊富なサービスが用意されています。当然同じプラットフォームで動作するため、Sumerianとの連携とも容易です。例えば以下のチュートリアルではAmazon Pollyを利用して3D空間に存在するBoxが喋るデモを行なっています。このデモはAWS内だけで完結することが可能です。

このようにAR,VRアプリケーションを拡張するための各種AWS内サービスで実現できるというのはかなり強いなと感じます。将来的にはAlexaがVRやAR空間内でアシストしてくれるようなアプリケーションも登場するでしょう。(確実に)また、Sumerianと同じ時期に発表されたRekognition Videoを活用すれば、AR中の外部環境認識がより簡単に実現できます。こういったAR,VRの機能拡張が容易にできる3Dエディタを作れるのはこれまで様々なクラウドサービスを提供してきたAWSだからこそ成せる技だなと感じています。

【Sumerianのデメリット】

Sumerianを褒めてばかりいると「Amazonから金もらってるの?」とか言われそうなので、デメリットについても述べておきます(笑)デメリットとしては、メリットで述べた1点目とのトレードオフにはなるのですが、ブラウザベースなので、ネット環境がないと仕事になりません。またネット環境が安定しない場所ではサーバーとのコネクションがつどつど切れるのでその際にも作業が難しいです。

ただ2020年に実運用が始まる5Gやネット環境の充実などを考えると時代的にはブラウザベースのアプリケーションの方が時代の流れに沿っているのかなとも感じます。

【ARStudio、LensStudio、そしてSumerian】

ARビルドツールといえばFacebookのAR StudioやSnapchatのLens Studioなども最近ローンチされて話題となりました。これらはどちらかというとデザイナー寄りな印象で非エンジニアでも簡単に ARを実現することを目指しています。

一方、Sumerianはこれらよりもより複雑なことができるようになっていて、想定しているユーザーもエンジニア寄りの方が多いなという印象です。

この違いは各プラットフォームが「エンドユーザーにARコンテンツを作って欲しい理由」に起因すると考えています。

FacebookやSnapchatはユーザーが自社のプラットフォーム内でみて楽しんでくれるようなコンテンツをたくさん用意したい。そして、そのコンテンツによってプラットフォーム内にユーザーを滞在させ続けたい。そのためにコンテンツは出来るだけ多くの人にたくさん作ってもらいたい。

一方のAWSはユーザーが作った ARコンテンツについてはそこまで関心はなく、 ARコンテンツを作る過程で自社のAWSサービスをたくさん使ってもらうことでキャッシュを生んでいます。

この違いによって各プラットフォームの ARビルドツール間の立ち位置が少し違って来ているように思います。

【以上、簡単なレビューでした!】

最後の最後まで結局Sumerian褒めてしまいました(笑)

簡単ではありますが、Sumerianを軽く触ってみた感想になります。近日中にもう少し突っ込んだSumerianの機能など触った感想などをまたポストしたいと思います。

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