MozillaのWebARは何が凄いのか個人的にまとめてみた
こんばんは!ARおじさんです。最近ちょくちょくやることが多くなって来てMedium書く時間がなくなってしまっていて、気づいたら2017年ももう残りわずかですが、みなさんお元気でしょうか?
【個人的なビックニュース】
さて今日の話題はクリスマスと全く関係なく(笑)ちょっと前になるのですが、WebブラウザのFirefoxなどを作っているMozillaがWebXRを実現するアプリ、「WebXRViewer」をリリースしました。
これは実は僕個人のなかではかなりビックニュースでして、今日はこれらが何なのかということや何がビックニュースなのかなどについてご紹介できればと思います。
【WebXRViewerとはなにか】
WebXRViewerはMozillaが以前から提唱しているWebXRを実現したアプリです。(記事などを見るとまだ実験的なアプリのようです。)
このアプリをiPhone6s以上のiPhoneでインストールすると通常のブラウザと同じようにHTMLを開きます。
これはただのHTMLで画面上部に表示中のURLも表示されています。画面の下の方にスクロールすると今回のページで体験できるAR一覧が表示されています。実際にARを体験した時の様子をTwitterでも掲載しているのでぜひそちらご覧ください。
【これまでのモバイルAR】
このWeb ARの凄さを語る上では今まで ARについても説明する必要があると思います。(本記事ではスマホアプリで実現される ARをモバイル ARと表記しています)
AppleがARKitを登場させたことでモバイルARが世の中にどっと普及し始めましたが、これまでもモバイルARを提供している会社は複数あり、ARのSDKを提供するVuforia、ブラウザ上でマーカーと3DモデルをアップロードすればAR体験を簡単に構築できるAurasmaなどなど様々です。
そういったサービスや自分でSDKを使って構築する従来までのモバイルARは技術の進歩によってかなり「そこにある感」を出せるARを民主化しました。これは本当に素晴らしいことですし、一開発者としては本当にありがたいことです。
しかしそんなモバイルARには(開発者にとってもユーザにとっても)一つ大きな欠点がありました。それが「アプリをインストールしなくてはならない」ということです。これは特にこの時期の ARにはハードルが高い。
まだARのフェーズ的に常日頃からユーザがARを使うかというとそんなことは全くなく、ARの体験などしたことないユーザがほとんどです。そんなユーザに「ARが見れるから入れてみて」というのはなかなかハードルが高いし、もし仮に入れてくれたとしても容量を圧迫しているとして即刻削除されてしまいます。
さらに困ったことにユーザは一つのアプリをインストールすればARが見れるかと言われるとそんなことはないわけです。aurasmaで登録されたARを見るためにはaurasmaのアプリを入れなくてはならないし、もし自分がARKitで作ったAR体験を提供したければ自分が作ったアプリという風にそのARコンテンツが登録されているサービスのアプリを入れる必要がありました。
「アプリのインストール」にめちゃくちゃ心理的ハードルのあるユーザにとっては発狂案件です笑
これがモバイルARの今の課題だと思っていて、その課題を解決する手段としてARクラウドというものがいまアメリカ始め、AR業界では次なる技術革新として注目されています。
【WebARによる新しいAR体験の可能性】
一方でWebARとはすなわち、「Web上で実現するAR」です。そのままですね笑
WebARはHTML上でJavascriptを使って動きます。以前からもAR.jsというJavascriptライブラリなどがありました。これらはWebGLを簡単に扱えるようにしたthree.js、そしてそれをベースに作られたHTMLのタグとしてシーンを記述できるWebVR用のフレームワークのA-Frameを使って実現してきました。(実はA-Frameを作ったのもMozillaです)
そして今回発表されたWebXRViewerでは ARKitの体験をWeb上で実現できるというものです。実際にWebXRViewerをiPhoneに落として試してみると ARKitアプリに遜色ない AR体験を実現できていることがわかります。今Web上でARの体験を作ろうとした時に現実的なのがAR.jsだと思うのですが、これはマーカーARである上にマーカーにも制約があって、(基本的に黒い太枠で覆われている必要がある)まだまだ生活に溶け込むARとは言い難い状況でした。そんな中、MozillaのWebXRはより自然でしかもマーカーレスなARをウェブ上で提供する機会を我々に与えてくれるかもしれないというわけです。
ではWebARがより浸透した時にどういった変化が起こるのか簡単に予想を列挙して見ます。
*カジュアルな ARとしてのWeb AR
Web ARの1番のメリットはユーザーはアプリを入れる必要がないということです。ユーザーは指定されたURLにQRコードなどでアクセスすれば ARを体験できるわけです。このカジュアルさはやはりWebの従来のサービス同様にWebの強みです。
さらにWeb ARにはカジュアルさ以外にもモバイル ARにはなかった新しい ARを生み出すことができると個人的に思っています。例えば最初はWebARでARサービスの魅力を体験してもらって、魅力的に思ってもらったユーザーや日常的に使いたいユーザーがアプリをインストールするなどの流れも作ることが可能です。
*ユーザーがアクセスできる ARコンテンツの増大
先に述べたようにアプリで作られるモバイル ARは基本的に ARコンテンツはそのサービスに紐付いたサーバーに乗っているもののみとなります。サービス AのアプリからサービスBの ARコンテンツは見ることができません。
一方でWeb ARはウェブサーバーとしてコンテンツを公開しておけばブラウザからARコンテンツにアクセスすることができるため開発者は ARコンテンツ作成にのみ集中すればよいわけです。
ARのビュワーとコンテンツホルダーが階層的に分離されるため従来のモバイル ARに比べて ARコンテンツの公開ハードルが下がり、コンテンツ量は格段に増加するはずです。
*ARコンテンツが検索に引っかかる
そしてもう一つ大事だと思ってるのが ARコンテンツが検索に引っかかるということです。検索に引っかかった先の AR体験がどんなものになるかはまだ僕自身思考中ですが、 ARの内容が検索に引っかかれば新しい ARのメディアなど今までになかった概念やサービスの形が新しく誕生するのではないか?と思っています。
【MozillaのWebXRViewerはWeb AR実用化への大きな一歩】
今回これを取り上げたかった1番の理由はこのWebXRViewerをFirefoxというウェブブラウザを実装しているMozillaがリリースしたためです。MozillaがこのWeb AR機能を自身のFirefoxに組み込めば、ユーザーはFirefoxでブラウジングしていれば アプリなしで AR体験を実現でき、開発者もアプリインストールのことを気にせずWeb ARサービスを実装できます。
まだまだ超えなければならない課題はありますが、こうして正式にMozillaがアプリをリリースしたことを考えるとそう遠くない未来にWeb ARは実用的なものになるのではないかと考えています。
実はこれとは別ですがGoogleもこのWeb ARを実装しているプロジェクトがあるのですがこちらは非公式なプロジェクトのようで、 ARKitの方はそこまできちんと対応できていなかった印象でした。ただGoogleもChromeにこの機能を組み込めばますますWeb ARの間口は広がっていくでしょう。
【そんなわけで】
今回のMozillaさんの発表について思ったことをまとめさせていただきました。ご指摘などは大歓迎です!ぜひ僕の知らないことあったら教えていただきたい!
さてまだXRViewerを試したことない人はApp Storeでインストールできますので試してみてください。個人的には本当にモバイル ARと遜色ない ARを実現しています。
またiPhoneをお持ちでない方は僕のTwitterの方で全サンプルのAR体験を動画公開していますので、そちらで内容をご確認いただけます!
またMozillaは「Web XR API」というものも取り組んでおり、こちらも今後の動向が楽しみな一つです。
それではまた来年!