深センを体感してきました by ニコニコ深セン観察会

岩城良和
8 min readMar 24, 2018

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「製品の質は中から中の下。日本に比べれば安い」

私にとってのいわゆる「中国」のイメージはまさに上にあげたものだった。

しかし、ニコニコ深セン観察会でこのイメージは刷新されてしまった。

今の深センの空気はまさに日本でいうところのこの高度経済成長の雰囲気に似ている。2017年の深センの経済成長率8.8%、しかも65歳以上の人々が全体の2%しかいない。

[様々な点で東京より進んでいる。そして、もはや深センは世界ブランドとなってしまった]

深セン体験後、自分の考えはこうなった。

視察後の報告として、環境、supply chainと現場力,、ventureの切り口で記述した。

環境

[日式なのに現金が使えない]

このことを肌で感じたのはHuaqiangbei にある味千ラーメンに一人でランチに行った時だった。

筆者は中国語は全くわからないので本当かどうかは検証が必要だが、支払いの際に現金を店員に差し出したら、苦虫を噛み潰したような顔をされ、現金を受け取ってくれなかった。とっさの判断でwechatpayを見せたら店員はバーコードリーダを出し、私のスマートフォンにそれを翳した。既にここには現金という概念は無くなっていた。日本であれば人口の多くのシェアがある65歳以上の高齢者がバッシングするだろう。

マーケット層が若いから事業家は若い層に向け次々と新しい事業を打ち出せるし、行政も同じく若い人に向けての施策を打ち出せる。

[if you don’t work hard, no one can give the life you want!]

深センのソフトウェアパークのとある食堂の壁に描かれた一言。いつも思うけれども、中国は共産主義なのに人民の心は資本主義。

この界隈は立身出世したいと思っている人々があふれていた。聞いた話によると工員の基本給は一律なので、中国では残業させる会社の方が良いとされているらしい。残業すればするほど残業代は増える。彼/彼女達の生活は金銭面でますます豊かになっていく。

[新しいものを導入するスピードとマーケットスケール]

City EasyというロボットやIoTデバイスの開発企業の訪問で衝撃を受けたのはロボット事業をビジネスとして成立させている点だった。写真の中心にある大きなロボットはソフトバンクのペッパーと比べると質は良くないが、これまでに数千体が販売されており、中国でも銀行で活躍している。新しいものを企業が導入してくれて、しかも中国のマーケットが彼らの大きな受け皿になってくれている。

supply chainと現場力

[seeedから見る工場の品質管理能力]

深センのseeed(https://www.seeedstudio.com)という企業の生産ラインを視察した。

基板製造に使用していたのはsumsong製で非常にスペックが高いものをラインに導入し、全数検査を行っていた。部品は厳選した1500種類の部品を常時在庫としてもち、大量購入することでコスト削減していた。二人の工員が僕らを案内してくれて二人とも英語で説明してくれた。彼らから感じたのは自分が働いている企業に誇りを持っている点だった。

一番印象に残ったのは彼らのスローガンを参加者が賞賛し、それを参加者の一人が声に出した時だった。彼の顔が高揚感に包まれ、一瞬眼光が人周り大きくなった。

素晴らしい製品を作るのも使えない製品を作るのもひと。ひとの会社に対する誇りや忠誠心はそのまま製品の質に比例すると思う。

[隣接しているものづくり企業]

射出成型・板金、金型等々ハードを製造するために必要な工場を視察に行った。

ここでも感じたのは職人さんの年齢層が若い。これらものづくり企業がベンチャー企業の近くの近くにあり、しかも数がとても多い。

X-factory(https://www.xfactory.io)というmaker hubでプレゼンを聞いた時、新鮮のメーカーズマップを紹介してくれた。下記写真に赤いドットが無数に深センの地図に散らばっているが、これらが一つ一つのドットが深センのメーカーズとのことだった(この地図は2014年度版で2018年の現在、この図は大きく変わっているだろう)

maker map of 深セン https://www.seeedstudio.com/shenzhen-map-for-makers-p-1585.html

venture

[insta360]

まだ企業してから数年しか経っていないけれども、insta360(https://www.insta360.com)の製品は既に世界中に販売されている。日本でも販売されておりamazonでも購入することができる。2017年、CES innovation awardsを受賞しているベンチャー企業。

引っ越ししたばかりなのか、本社に伺ったらまだ、エレベータ前の会社ロゴ下部が接着中だった。
これまでに様々な賞をとり、且つ製品リリーススピードがとても早い。
insta360初期プロトタイプ

わずか数年前、insta360のカメラは3Dプリンタで筐体を作り、その中にカメラ機能のある基板を入れた、いわゆるプロトタイプだった。

それからわずか数年で世界100カ国で使われるカメラメーカとなったことに深センのスピードの速さを体感した。

このような企業がinsta360以外にも多くあるのが深センで、もう一社訪問したのはKandao(https://m.kandaovr.com/en/)という企業はinsta360よりもプロフェッショナル用の機種メーカ。

この会社のCEOは素粒子物理を専攻し、数年前にKandaoを立ち上げた。Obsididanはペンタゴンの形をした6個のカメラを搭載していた。このカメラで例えばある部屋を撮影すると、この部屋の立体映像が撮影できる。今後VR分野で大きく成長していくだろう。

CESでinnovation awards受賞2018

終わりに

はじめに、[様々な点で東京より進んでいる。そして、もはや深センは世界ブランドとなってしまった]と書いたがこの自分の気持ちを実際に体感しないと仮にこの本文を読んだとしてもわからないだろう。まずは観光でもいいと思うからまず、旅行先を深センにして最低一日は市内を闊歩するといい。セグウェイに似た電動2輪に乗った若者があなたを颯爽と横切り(日本でセグウェイは禁止)、BYD社の電動バスが市内を所々走っている。もう東南アジア諸国に行くとよく感じる空気の汚さはここには無い。非常にクリーンな街並みだ。現金を持っていてももしかしたらやくに立たないかもしれないので、知り合いでwechatpay送金ができる人がいたらお金の電子化をお願いして、そのお金を使って朝から中国人に混じって街中の小さな中華マン屋さんに並んで美味しい中華まんを買ってみよう。そして、バックの中にinsta360を忍ばせて気に入った場所で町全体を撮影したらいい。きっと気持ちはハイになり、人にシェアしたくなるだろう。ここがもはやある国のとある工業が集積している都市ではなく、イノベーションが加速している街だよ、と。

日本に帰って人に会うとinsta360の本社で購入したoneという製品を見せる。多くの人が驚嘆していた。insta360はここ深センから生まれたカメラブランドだけれども、それが製品として完成する過程で様々な人々が関わっていること忘れてはならない。もしかしたら今回訪問した射出成型や金型製造企業かもしれないが、それら多くの企業群がここ、深センには存在している。

今回、ニコニコ深セン観察会を開催していただいた高須さん、伊藤さん、藤岡さん他多くの方達に心から感謝!

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