『ホラホラ、これが僕の骨』デザイントーク【1】詩の本を作るということ

10月22日は、中原中也の没後80年の命日です。

中原中也の詩のなかから人気の詩を集めた詩集『ホラホラ、これが僕の骨』が9月に発売になりました。この詩集の装幀と公式サイトのデザインを担当させていただいたのですが、この本をできるだけ多くの方に知っていただきたいということもあり、その制作の過程のお話を、数回に分けて書いてみようと思います。

ちなみに、4月29日は生誕110年の誕生日。当初はこの日までに発売しようということで進めていたのですが、諸々の事情によって遅れ、なんとか命日までには発売することができました。

詩の本を作るということ

この企画のお話を伺った時には、詩集のデザインをできるなんてことは、昨今、めったにない機会ですし、まして中原中也ということなのですから、とてもうれしかったのですが、よく考えてみると、これはかなり厳しいミッションですよね。

まず、書籍があまり売れない時代に、そのなかでも詩集は、商売になるほど売れるのは、普通に作っていては、とてもむずかしいです。それを前提として、企画を進める必要があります。

また、中原中也は知名度が高く、人気のある詩人ですが、すでに著作権が切れているので、ネット上ですべての詩を無料で読むことができますし、文庫などでも読むことができます。さらに今回は、自前でサイトも制作して、ネット上で読めるようにするという前提なので、それでもなお、紙の書籍が欲しいと思ってもらわなければならないわけです。このハードルはかなり高いですよね。

もちろん、これは編集者も認識していて、だからこそデザインで魅力的になモノをつくりたい。予算の範囲はあるものの、基本的に自由にデザインしていいということでした。全面的に信頼してくれて仕事ができるというのは、とても幸せなことでした。

社会のなかでの存在の仕方・意義を想定する

デザインは課題解決とよくいわれますが、たしかにこれらの問題点は課題と考えることもできます。ぼくはもうすこし違ったふうに考えていて、デザインというのは、「社会のなかでの存在の仕方・意義を想定すること」だと思っています。存在というのは、かたちがあるものであっても、かたちのないものであっても。

本を作るということは、多くの無駄が生じます。どんなに売れた本でも、必ず売れ残りはありますし、作る過程でも無駄は生じます。それだけ、地球上の資源を使っているということです。もちろん、無駄がすべていけないわけではなく、誰かの心のなかに、無駄を上回る価値を提供することができれば、それは無駄ではなくなります。本を作るうえで、そうした価値を生み出せるようにすることは、社会的な責任として必要なことだと思っています。もちろん、出版元に対しても、経済的な不利益を与えないようなものにする必要もあります。

そうした問題をかかえて、このプロジェクトはスタートしました。

ものづくりについて語ること

あらゆるものづくりには、いろんな苦労や決断があります。そういったことは、通常あまり表立っては語られません。そういうことを公言するのは無粋かもしれません。公共的なサービスなどであれば、使う人が少しでも使いやすければそれでいいのです。

でも、ターゲットの狭い商品のような場合、たとえば、この詩集のような商品では、それほど多くの人に手にとって見てもらうことは不可能ですから、何も言わなければ、伝わるべき人にも伝わらないままになってしまうのですね。

「こんなことを考えて作りましたよ」ということを伝えて、もしそれを読んでいただいた方のなかから、共感したり、興味を持ってくれるということがあれば、それは価値のあることなのではないかなと思うのです。という考えのもと、数回にわたって、詩集『ホラホラ、これが僕の骨』デザインの話を書いてみようと思います。ぜひ、おつきあいください。

中原中也ベスト詩集『ホラホラ、これが僕の骨』

つづく

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