『ホラホラ、これが僕の骨』デザイントーク【7】ウェブサイトで物語を伝える

佐藤好彦 Yoshihiko Sato
4 min readNov 7, 2017

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今回は、はじめからウェブとセットという前提で、ウェブに感想を書き込めるようにしたいということでした。WordPressで作ることも考えたのですが、自作のかんたんなCMSを使って構築しました。これは、これくらいの規模のサイトを作るにはちょうどよく、柔軟で、素早く作ることができます。自作なので、カスタマイズも簡単なのもよかったですね。驚くほど原始的なんですけどね。

詩は、まとまったひとつのテキストファイルとして用意し、マークダウン記法で記述しています。ルビは、でんでんマークダウンの記法を使って、表示時にHTMLタグに置き換えています。

二つの書体を組み合わせる

ウェブでも、文字としての美しさを活かしたいと思いましたので、ウェブフォントを使用しました。書体は、Google Fonts + 日本語早期アクセスから、仮名をはんなり明朝、漢字をさわらび明朝にしています。印刷物でも二つの書体を組み合わせることはよくありますが、Webでもそれは可能です。はんなり明朝は小さめで、漢字と仮名でメリハリがつき、組み合わせて使うと、ちょっとアンティックな印象になります。

書籍の公式サイトが重要になってきている

書籍を告知するために、専用サイトを作るというのは、これからはかなり重要なことなのではないかと思います。本は中身を知ってもらわないと買ってもらえません。書店が少なくなり、アマゾンなどのネット通販が主流になってくると、情報の出し方が問題になります。とはいえ、アマゾンなどは、それほど自由には情報を出せないので、独自にサイトを作るというのは、本当に重要になります。また、感想なども気軽に書いてもらえるので、情報を出すだけでなく、もらう方向でも役に立ちます。

今回は、サイトで朗読も聞けるので、ウェブならではの使い方ができたのではと思います。最近では、読み聞かせがかなり流行っているので、プロの朗読が聞けるこのサイトは、結構役に立つのではと思っています。

ウェブサイトで物語を伝える

モノの魅力というのは、モノ自体だけでなく、その周辺にある物語も重要なんですね。どういう風に作られたものなのかといった物語によって、所有したいと思うかどうかが決まる。今の時代に趣味的な本を売るには、そういった物語をどれだけ見せられるかということを考える必要があると思います。

そういう意味では、このブログ連載もその一環であり、連載にしたのも、何回か続けていくうちに、だんだん反応が見えてくるんですね。たぶん、長文一回だけというよりは効果的だったのではないかと思います。そういった実験を、今回は色々してみました。

現在の多くの本は、発売したらすぐに売れなければならないんですよね。でも、この本はもっと長いスパンで考えるべき本だと思います。ですから、今回のプロジェクトが成功だったのかどうかは、もう少したってから判断するべきなのでしょう。

この本の紙は割と陽に焼けやすいと思うので、時間がたつとビンテージ加工というか、ギターのレリック加工、エイジド加工みたいなイメージになるかもしれません。また、開いて置いておくと、どのページが一番開かれていたのかが、色でわかると思います。実は、この本が本当に出来上がったと言えるのは、そのくらい時間がたってからなのではないかなと思っているのです。

気になったら、ぜひ書店で手にとって、一緒に時間を過ごしてみてください。

中原中也ベスト詩集『ホラホラ、これが僕の骨』

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佐藤好彦 Yoshihiko Sato

デザインしたり、文章書いたり、大学で教えたり、楽器を弾いたり、そんな感じ。著書 『デザインの教室』『デザインの授業』『フラットデザインの基本ルール』など。最新刊は『ビジネス教養としてのデザイン』