はたらく細胞を見た方に伝えたい事
アニメが好評だったのもあって、未読だった原作の新刊をおねだりして差し入れしてもらいました。
全体で見ると、正しくない場所もあるのですが、それでも僕はこの本は色んな方にオススメしたいです(浸潤しているがんが自然免疫だけで淘汰されるとかは流石に無理があると思いますけどね。もっと初期段階ならともかく、あの段階で手術しないと厳しい気がします)。
そして、この作品では非常に免疫がフォーカスされています。これじゃはたらく細胞じゃなくてはたらく免疫細胞だろなど友人は言うくらいです。免疫の大切さが理解してもらえると思いますが、ここで1つ質問です。
免疫を上げるって何ですか?
好中球さん、好酸球さん、好塩基球さん、NK細胞、キラーT(CTL)、ナイーブT、メモリーT、ヘルパーT、制御性T細胞、樹状細胞、マクロファージさん、血小板ちゃん、B細胞、肥満細胞
はたらく細胞に出てくる免疫関連の細胞だけで、かなりの数が出てきます。他にもマイナーな細胞はありますし、細胞も更に細かく分類されます。免疫に関与するのは細胞だけでなく化学物質やタンパク質などもあり、それらも非常に種類が多いです。
更に最近では腸内細菌など含めた人間以外の共生体全体での免疫が重要などとも言われるようになっています。
また、免疫が攻撃しなくていい異物を攻撃したり、自分自身を攻撃するなど免疫が高すぎて暴走するのが免疫疾患です。前者の代表が花粉症、後者はリウマチや潰瘍性大腸炎なんかが有名ですね。
免疫は1つの指標で上がった下がったと言えるものではなく、複雑なシステムです。バランスを整えるのは大事ですし、それを指して免疫を上げると表現することは可能ですが、現時点では何がベストのバランスか、どうすればバランスを整えられるかは残念ながらほとんどわかっておりません。
ちょっと前にある生物学の有名な先生の一般市民向け講座を聴講したことがあります。その時、フロアの高校生からの質問で「先生が高校生だとしてこれからどんな生物学の分野を勉強したいか」というものが出ました。
先生は「免疫学をやりたい。免疫はいまだに全く分かっていないと言っても良い。」とおっしゃっていました。
僕もそう思います。
はたらく細胞には好塩基球というキャラが出てきます。アニメの中では謎の預言のような言葉を呟き、顔すら明らかになっていません。
実際に好塩基球は昔から知られている細胞(発見は1879年)ではあるのですが、実は一部の機能しかわかっているのですが、その存在意義は未だに全くわからないと言ってもいいです。
200年以上前から知られている細胞ですらこの有様なんです。制御性T細胞なんて見つかってまだ20年くらいなので研究途上ですし、更に最近では制御性B細胞なんてのまで出てきました。
免疫学はいまだに最先端で人智が及ばない所にあります。
免疫を上げるとか特定の免疫細胞を注射するとかでがんを治そうという考え方に対して、僕が素直に話を聞こうと思えないのはこの辺が理由の1つです(そもそも成長したがんはどこかで自然免疫をすり抜ける免疫寛容を身につけてると思いますしね)。
