アンスネスのショパン・バラード集。でも間に挟まれたノクチュルヌが *じーん* とするほど素晴らしい.…. #新譜早耳

もう当分、ショパンのバラード・アルバムについては何も書くつもりはなかった。しかし、このアンスネスの新作は… Les nocturnes délicieux s’intercalent entre les ballades. Un programme magique qui vous emporte.

Chopin: Ballades & Nocturnes Import — Leif Ove Andsnes

今年のゴールデン・ウィークに、公式ホームページ yuichihiranaka.com のほうでショパンのバラードの大特集ポストを作ったばかりなので(笑)もう当分ショパン、とりわけバラードについて、何か書くことはないだろう、と思っていた。

しかしそう思うと、逆にちらほら「これは…」と思う新譜に気づかないでもない。

…たとえばCristian Buduのプレリュードなど、ええっ…なんだなんだこのノリは??。。とかなりドキドキしたが、YouTubeにあった実演ヴィデオの演奏は、その点ではレコーディングほどキレッキレでなく、とりあえずポストには至らず踏みとどまった、というようなことも実はあった。

しかし、このアンスネスの新作は…

まず最初に聴いたのは、バラード4番。

上述の事情で、もちろんこれは、非常に批判的に、構えて聴いた(笑)

端正で、とても抑制が効いている、華やかさや、音の透明感というのではなくて清廉な感じ。。後半に至りやや盛り上がるが、しかしどこまでもすっきりと、ムラがない。力んだり走ったりすることなく、技術は堅牢なので、もっといくらでも情緒的に煽ったりできるはずのところをわきまえて、知的な印象を与える…。

ひと言でいうなら、堅牢で清廉

よしよし。確かに名演。しかし、バラードに名演は事欠かない。。

というようなことで、やり過ごそうとしたのだが、続けてノクチュルヌの4番が流れてきた。

その演奏のヴィデオがこちら。プレイ・ボタンを押して、とりあえず一旦、動画は観ずに、そのまま読み進めてみて下さい:

Leif Ove Andsnes — Nocturne in F Major, Op. 15 №1 Official Video

…すると、ゆっくり淡々と入ってくる、このシンプルな導入部だけでもう、のっけからジーンとしてしまい、思わずその場に動けなくなってしまった。

(例によって、移動中、歩きながら聴いていた・笑)

とりあえず動画を観ずに、というのは、だから、僕がまず音だけで聴いたからだが、それだけでなく、これは僕だけかもしれないし、こうして新しいいい演奏がだれにでも聴けることは素晴らしい、ありがたい、というほかないのだが…しかしどうも僕には、このアンスネスの髭面にインパクトがありすぎて、音楽に集中できない、しっかり聴こえてこない気がする(すみません。。)

画面を見ずに、ただ、耳を澄ませていると、この演奏の虚飾ない美しさが、だんだん胸に染み渡ってくるのではないだろうか。

調べてみると、このアルバム、大曲バラード4曲の間に、そっとノクチュルヌ3曲が滑り込ませてあるかたち。

本来バラード・アルバム、バラードが主体のアルバムなのだろうが、このノクチュルヌは、捨てがたい。

ノクチュルヌ、夜想曲は、誰でも知っている第2番や、第8番を筆頭に、人気の高い曲も多いが、親しみやすい小品であるだけに、かえってこれも、なかなか枕頭の1枚、というのは見つけがたい。行き過ぎた感傷やメランコリー、無反省なテンポルバートがなく、といって暖かく、十分なファンテジーがあり、奏者ではなく、しみじみと音楽自体が前面に出てくるような。。

アルバムとしてまず、バラードは避けてノクチュルヌだけを聴いてみたが、これが全曲集、とはいわないまでも、たった3曲というのはいかにも惜しいような、いや、たった3曲だからこそこうなるのか…などと、思いを巡らせた挙句、やはり本来のアルバムの意図通り、恐る恐る(笑)バラードと続けて、間に挟むかたち、全7曲を聴いてみた。

するとやはり、奏者の意図通り、この重たいバラード4曲が、それなりにすんなり、続けて聴ける。

HPの4つのバラード特集の冒頭にも似たようなことを書いてみたが、アンスネスも、バラードを次から次へと続けて弾くのはいい考えじゃない、続けて聴くようにできていない、といっている。

それは1曲1曲に、あまりにも豊かなエモーションが濃厚に詰め込まれているから。1曲でもう、感情のキャパシティいっぱい、お腹いっぱい…という感じになってしまう。

ノクチュルヌは、そこにある種のスペースを与え、その上プログラム全体として、ショパンの音楽の通時的なデヴェロップメントもポートレイトできる。そうアンスネスはいっている。(Leif Ove Andsnes speaks about recording Chopin — Ballades & Nocturnes

HPのポストでいろいろ書いたという個人の特殊の事情から、ふつうの人以上にあるいは食傷気味になっていたメインのバラード4曲も、間に挟まった比較においてすっきりとしたノクチュルヌが、ややディジェスティフとして働き*消化*を助け(笑)改めて落ち着いて聴ける。そんな気がする。

hmv.co.jpの輸入元情報によると、アンスネスはデビュー当時にソナタ全曲を含むショパン・アルバムを出したものの、それきりその後36年間ショパンの録音はなかったらしい。近年これまで弾いてこなかったバラード4番にも挑戦するようになり、本録音に至った、とのことだが、バラード4番をショパン音楽の「聖杯」と呼んでいるのも面白い。なるほど、確かにバラード4番は、正にそういう曲、かもしれない。

バラード全曲の間に間奏曲的にノクチュルヌ…というコンセプトだけ拝借すれば、他にも違った組み合わせは考えられるだろうが、これはアンスネスの考えるベストの組み合わせ、として楽しみたい。

…なお、余談だが、上記hmv.co.jpの販促文では『聖なるグラール』とカタカナ表記になっているが、原文は聖杯、英語ならHoly Grailのはずだから、意図は不明。西欧言語を和訳しようとする人が、この語を知らないことは到底ありえず。。っていうか、インディ・ジョーンズって、もう若い子は観ないのかね??(笑)クラシック・ファンなら、ヴァグナー、パルジファルでもおなじみだ。グラール、という表記は、むしろフランス語やドイツ語に近いが。。

Youtubeにもう1曲、このアルバムのノクチュルヌを見つけたので、こちらもここにクリップしておく:

F.Chopin — Nocturne in C Minor, Op. 48, №1 (Leif Ove Andsnes)

さて、このアルバム、アルバム全体として、大きく、バラード全曲とノクチュルヌを続けて聴いていけるかたちになっているので、パリのノクチュルヌ、ノクタンビュル、夜の散歩のお供にぴったり、という気もする。

このアルバムを聴きながら、夜のパリ、右岸を歩いている時に、たとえば大きなお月さまが上ってきたら…

www.instagram.com/yuichihiranaka

ショパンの見た夜のパリもきっとこうだったのかもしれない。。などと、ファンテジックな夢想の世界に、どこまでも引き込まれてしまうかも。。

Chopin: Ballades & Nocturnes Import Leif Ove Andsnes amazon.jp cd | mp3ダウンロード

バラード全曲、夜想曲集 レイフ・オヴェ・アンスネス hmv.co.jp

Chopin: Ballades & Nocturnes Import — Leif Ove Andsnes

(…ええと、これはまたぜんぜん異なった世界なのですが。。。

このポスト、冒頭で言及してしまいましたので(笑)やっぱりこの際併せてChristian Buduの問題のプレリュードもyoutubeより、こちらにクリップしておきます。

どうしても気になる…という人は、後ほど、気持ちを切り替えて(笑)聴きに行ってみて下さい。これはこれで、また全然違って、凄いですよ;)

Cristian Budu — Chopin & Beethoven

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