もしかしてそれは“うつ”? 糖尿病の方に多いうつ症状とその対策
「今まで通りに治療しているのに、血糖コントロールが悪くなってきた」
「気力がわかない」
「眠れない」
糖尿病の治療中の方で、こんな症状はありませんか?適切な食事や運動ができないのはあなたの問題ではなく、もしかしたら、“うつ”が関係しているかもしれません。
今回は糖尿病に多い“うつ”についてお伝えします。
“うつ”は治療を受けている糖尿病の方に多い
45歳~84歳のおよそ5000人の方を(1)正常血糖値、(2)空腹時血糖異常、(3)未治療の糖尿病の方、(4)治療を受けている糖尿病の方、の4つのグループに分けて、うつ症状の発症率を長期的に観察した研究があります1)。その結果、(1) の正常血糖値の方と比べて(2)や(3)の空腹時血糖異常や未治療の糖尿病の方はうつ症状の発症リスクは高くならず、むしろ(4)の治療を受けている糖尿病患者がうつ症状の発症リスクが高いことが分かりました(図1)。しかも、その確率は正常の空腹時血糖の方の約1.5倍でした。

上記研究以外でも治療中の糖尿病の方に“うつ”が多いことは他の研究でも報告されています2)。その原因には糖尿病に対する負担や、合併症に対する不安などの心理的負担があるといわれています。
糖尿病の方がうつになると・・・
糖尿病の方がうつになると、治療への意欲が低下するために、これまでやってきた食事改善や運動療法、服薬などがやれなくなることが分かっています3)。この意欲低下は“うつ”によくみられる症状ですが、自己管理を必要とする糖尿病の方へは治療上の障壁となります。
意欲低下のほかには不眠や過食/食欲の減退、疲れやすいなどの身体症状が出てくる場合もあります。
心のケアも大事です
糖尿病の方への心理的ケアが心理的負担だけでなく、血糖コントロールも改善させることが分かっています。糖尿病の方への心理的介入効果について検討した世界25の研究をまとめた結果では、長期的な血糖コントロールの改善(HgbA1cが-0.32%減少)と心理的なストレスを低減させることが分かりました4)。
糖尿病の患者さんがうつ状態になるケースが多いと言っても、全ての糖尿病患者さんがそうなるわけではありません。
“うつ”にならないためには、医師や周囲の人が、治療の大変さやこれからの不安など、糖尿病の方が抱えるこころの問題を早く適切にケアすることが重要です。心配や悩みごとは一人で考え込まず、まずは医師や周囲の人に相談することが“うつ”予防の第一歩です。
参考文献
1. Golden SH, Lazo M, Carnethon M, Bertoni AG, Schreiner PJ, Roux AVD, Lee HB, Lyketsos C. Examining a Bidirectional Association Between Depressive Symptoms and Diabetes. JAMA 2008;299:2751–2759.
2. Nouwen A, Winkley K, Twisk J, Lloyd CE, Peyrot M, Ismail K, Pouwer F. Type 2 diabetes mellitus as a risk factor for the onset of depression: A systematic review and meta-analysis. Diabetologia 2010;53:2480–2486.
3. Lin EHB, Katon W, Korff M Von, Rutter C, Simon GE, Oliver M, Ciechanowski P, Ludman EJ, Bush T, Young B. Relationship of Depression and Diabetes Self-Care,Medication Adherence, and Preventive Care. Diabetes Care 2004;27:2154–2160.
4. Ismail K, Winkley K, Rabe-Hesketh S. Systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials of psychological interventions to improve glycaemic control in patients with type 2 diabetes. Lancet 2004;363:1589–97.
