STOインタビュー その2
岩澤 樹さん(カタリバ)

ソーシャル・テクノロジー・オフィサー(STO)創出プロジェクト、STOへのインタビューとして、岩澤さんにお伺いしました。
https://sto.code4japan.org/

▼岩澤 樹さん
大学卒業後、SI企業に入社しインフラ、セキュリティ対策関連の導入業務に従事。その後在学中にもボランティアとして関わっていたNPOカタリバに情シス担当として入職。サーバー移行、セキュリティ対策、Salesforce運用管理、チャットツールの導入など組織の基盤となるようなシステムの導入・改修をメインで行う。
現在は会計周りも担当しており、情シス兼任のマネージャーとして決算業務や会計システムの改修などを遂行中。

――STOの話を聞いた時、自分に重なる部分は感じましたか?ありましたね。
STOってテクノロジーなので、どこまでかというのはありますけど、NPOが難しい社会課題を解決していくには、最新の技術とかテクノロジーを使った方がより早く大きなインパクトで解決できるということは、自分がやっていることと重なるイメージがあります。
――STOというのは、岩澤さんの中ではどういう存在ですか?STOは二種類あると思っています。
1つは、画像認識やAIなどの技術を使って、社会課題を大きく解決するようなテクノロジーの方。もう1つは私みたいに情シスとして入って、組織の中から課題解決をしていって、一人一人のインパクトを上げていくみたいなことをやっていく、二種類があるのかなと。
企業のCTOと比較した場合、企業は利益が出る前提でシステム投資などを考えていると思うのですが、NPOの場合、利益が出ないという前提でステークホルダーを説得するところに難しさがあると思うんですね。
そこをどうやって解決してくか、どういう風に糸口を見つけていくか、何の情報を提供するか、っていうのを考えるという意味では、企業のCTOとは違うスキルとか、事業への共感性とかが必要になってくるのかなと思っています。
――カタリバとして、STOの必要性は感じますか?今、特に必要かなと思っています。たとえば、色々な子供たちがいる中で、一人一人に対する教育効果をどう上げていくか。様々なクラウドの製品、ICT教育っていうのがある中で、それをどうやって実現していくか、みたいなことを考えるには、STOという存在が必要になっていくのかなと思っています。
――岩澤さんがそちらに行くというよりは、外から来てもらうというイメージですか?私自身は、教育の専門知識とか、学校教育に対する教育免許とかを持っているわけではないので。そこに専門的にやっている人とか、データアナリストみたいな方がちゃんと入ってやっていくのがベストなんだろうなと思っています。
新しいアイディアを外から持ってきてくれる人が求められているのかなと思います。
――ITの知識だけではなくて、NPOごとの課題感に寄り添っていた方が良い?そうですね。
もしくは、現場のそういった課題をかみ砕ける、自分のスキルとか最新技術とうまくすり合わせる事ができるスキルがあれば良いと思います。
ですが、現場の理解を含めてやるのは、なかなか難しいなと思っているので、最初から理解があると、すごくやりやすいと思います。
――ソーシャルセクター全体におけるIT化の状況については、どう感じていますか?先日、NPOの業務ハック、組織中の業務をどうやって良くしていくかという事で勉強会を開きまして、だいたい50名ぐらい集まりました。
そこで分かったのは、IT化はやはり全然進んでいないという事です。ツールを導入しても運用できる人がいない、前任者がいなくてどうなっているのか分らないなどの理由で、
プロジェクトが頓挫したり、動いていたシステムが動かなくなってしまったりという事が多発しているようです。
都内でそれなので、日本全体で見ると、その比率はもっと多いのではないかと思います。
――そのような状況が生まれる一番の原因は何でしょうか?一番は、いわゆるCIO、CTO的な人材の不足だと思っています。
そういう人たちは、お給料が良かったり、市場評価も高く、自分たちでチャレンジできる場がいくらでもある中で、NPOを選ぶっていうのはなかなか難しいと思います。
NPOだと多くの場合、どうやって社会課題を解決できるか考えるところから伴走しなければなりません。解決ができた後にシステム化するのは、少し難易度が下がるとは思いますが、その手前から関わっていくと、自分の役割が多くなり、本来やりたかった仕事に集中できなかったりします。
あとは、やはり認知不足というところがあります。システム会社に勤務していたとき、周りにNPOを知っている人はほとんどいなかったので、そもそも興味を持つ人がいないのだろうと思いますね。
――NPOは一般企業よりも、エンジニアとの距離が遠いと感じますか? めちゃくちゃ遠いですね。
私が入って一番初めに思ったのは、言語理解、共通言語がなさすぎて、そもそも会話が難しいという事です。たとえばWEBサイトの1ページを更新するにしても、ベンダーさんと現場ですごく不毛な会話が続いているというか、お互い必要な事を伝えられない。たとえばタグという言葉の意味が通じないとか、勘違いしていたりして、コミュニケーション齟齬が起きます。ベンダーさんも疲れるだろうし、現場も疲れるというころで、さらに距離が開いてしまう感じがあります。
――企業のスタートアップだと、IT活用は大前提になっている事が多いと思うのですが、なぜNPOだけそこまで距離ができてしまうのでしょう?多分、NPOの第一創業期だと、ITっていう言葉自体ができたばかりの時代なので、そういう意味でITへの抵抗感みたいなのがあった時だと思っています。
我々みたいに10年20年やってる団体に関しては、そこそこ若い人が入ってきて、ITに対して慣れも出てきてはいますが、理系専攻の方などITに詳しい方がこっちに来る事が感覚的に少ないですね。
――今でもまだ、新卒でNPOという選択は少ないですよね?

特にうちの団体だと、ボランティアを見ても理系の子があまりいないというのがあります。それに、テクノロジーを使って社会を変えようというようなNPOが、そもそも少ない状態だと思います。
大きいところ、フローレスさんやETICさんを見ても、「システムで何とかする」という話ではもちろんない中で、理系大学生や社会人になった人が、そこに関わるという事は少ないので、そもそも接点を持ちづらい。
逆に文系で社会問題に関心を持つ子の方が、まだNPOに接点を持つケースというのが多いのかなと考えると、接点不足というのは大きいと思います。
――ソーシャル側からは、IT活用というのは、どんな感じに見えているのでしょう?IT活用はしたら良いとみんな思っているんですけど、その方法が分からないというのがあると思います。
ITを魔法だと思っている気はしています。だから魔法使いが一人いれば全部解決してくれるから、来て欲しいみたいな感覚はあります。
現場の話だと、たとえばマクロを3時間で作れば、今やっている毎月の月次報告が毎月30分で終わるようになるというのが、エンジニアならすぐに分かります。でも、こういう事でも、徹夜して現場で8時間ぐらい作りこんで「もう無理!助けて!」っていうまで来なかったりするという事が現実にあります。
それぐらい、現場でマクロを知らない、マクロを使うとどうなるのか分らないという中だと、何となく今やってることが大変なんだけど、解決されたらどうなるのかっていうのが全然イメージがつかないのだろうな、と。多分、他のNPOさんも同じなんじゃないかなと思いますね。
――そのような現場とITの距離を縮めるには、どこら辺から始めるのが良いのでしょう?私がカタリバに入って良かったなと思ったのは、現場とITのハブみたいな形になれた事です。ボランティアで大学時代に関わっていたので、現場の課題感を分かっている。何となく現場がどういう事をしたいか、カタリバがどういう事をしたいか分かっている状況で入っている。一方で、外の社会に目を向けてみると、どういうツールがあるか、それをどういう風に組み合わせたら現場の課題が解決できるだろうかという、ベンダーとの対話や交渉がある程度できるようになっていたので、そこの対話を通して、現場と外をつなぐっていう事はできるようになっていると思っています。
だから、そこのハブ、通訳する人が一人いるというのが、まず一つだと思っています。
――岩澤さんのエンジニアとしての経歴は、どの辺りからスタートしていますか? エンジニアとしては、中学生の頃、母親の背中を見てたのが最初だと思います。母親がプログラマなので、家に帰れば在宅でプログラミングしている姿を見ていて「あ、こういう仕事していれば、こんな稼げるんだ」みたいな。しかも聞いた事あるようなメーカーさんのシステムなんかを作っていて「あ、かっこいいな」と思ったのが一番最初です。
そこから特に意識せずに進んでいったら、いつのまにか理系に進んでいて、大学も理系専攻で、でそのままシステム系の会社に入って、インフラエンジニアをやったという感じですね。
――最初は一般企業に入ったんですね。 そうですね。300名ぐらいの企業でした。
8年ぐらい前なので、まだNPOでお給料もらうっていうのが全然現実的じゃなくて、都内で生活できなかったというのもあって、NPOに就職するというのは一切考えず、ボランティアで少し関わろうかなぐらいでした。
――ボランティアやNPOというのを意識し始めたのは? 大学時代に何かやっていて面白くないなと思っていたところ、たまたま友達がNPOに関わっていて誘ってくれて、まさにカタリバなんですけど、そこで初めて会ってから、何回か活動したという形ですね。NPOっていうより、コミュニティにいたという意識です。
活動していたのは主に大学生の頃で、就職した後は、年に2、3回ボランティアで関わっていたぐらいです。
当時、カタリバ以外のNPOはほとんど知らなくて、カタリバ経由でいくつか関わる事があったぐらいです。
――エンジニアとして一般企業でスタートしてから、どういう経緯でカタリバにつながるんですか。 カタリバに入ったのが、入社して三年ほど働いたところで、次のチャレンジをしたいなというか、自分でもう少し裁量をもって動きたいなと思ったときに、カタリバから声をかけてもらいました。
100名くらいのどんどん成長していっている組織で、一人で情シスできる経験ってなかなかないよなと思ったのと、元々カタリバの理念とか共感してますし、好きな場所でもあったので、そういうところでできるなら素敵だなと思って、転職を決めました。
――ボランティアの中に他にも候補はいたのでしょうか? ほぼ、いなかったですね。
年間でがっつり関わっている理系学生が1、2人いるかいないかだったのと、私は元々カタリ場のプログラムを作るのコアスタッフという形でサポートをしていたので、すでにシステムとかExcelで資料作ったりとかいう事もあった関係で、声をかけてもらったんだと思います。
――給料などの条件面は、どうだったのでしょう? 私の場合、前職が新卒で3年半だったので、そこまで大きく下がらなかったんですけれども、それでもやっぱり20%くらい減で、4年働いてようやく追いつけたかな?みたいな状態です。
――それでも転職をされたのは、お金に勝る価値を感じていたという事ですか?一番大きな理由は、やっぱりチャレンジできる環境があることだと思っています。
安心安全の場がある事が分かっている中で、経済的にも死ぬようなお給料ではないし、多少生活が変わる程度かなと。そう考えた時、次に来るのは、どれだけチャレンジができる、自己実現ができるかだと思います。
100名規模の全国に拠点があって、これからどう伸ばしていくか模索中の法人に私が入ったら、何かチャレンジできる事があるんじゃないか、その面白さっていうのは他にはないだろうなっていう感じですね。
――普通の企業からカタリバに入って、違いは感じましたか?まず、システムに関わるルールがないというのが、すごくありました。例えば企業だと、パソコン持ち出すのにも申請フローがあって、こういうガイドラインを読んでというのがあると思うんですけど、そういうのがほとんどなかったというのが一番の大きな違いかと思います。
システム的な情報リテラシーが低いというのは感じましたね。なので、そういうところの提案をしても、あまり理解を得られないという事も多かったです。
――仕事の内容は当時から変化していますか?今が4年目、次で5年目といったところですが、だいぶ変わっていますね。
現場に半分入りながら、経営管理本部としてのシステムの全体改修みたいなのをやっていたのが、最初の1、2年ですね。
その後、経理担当が育休でいなくなったので、私が経理をやるようになりました。そのタイミングで、財務を見られるスキルは、それこそCIOやCTOには必要だろうと思っていたので、そのスキルが欲しいと思い、メインでやるようになりました。
気付いたら、経理もマネージャをやるようになっているので、今は経理とシステム両方のマネージャとして働いています。
――カタリバにIT部門の人は何人ぐらいいるのでしょう?カタリバ全体で、常勤スタッフはパート職員合わせて120名ぐらいいます。
その中でIT部門は、去年までは私一人だったので、0.5人分ぐらいですね。今年一人常勤スタッフが入りまして、今は1.5人分ぐらいになっています。
――実際そのぐらいで回せる仕事量ですか?回せてるかというと、必要な部分にしか手がつけられていない感じですね。
なので、拠点でもう少し業務改善をしたいとか、システム導入したいというところには、全然手が回ってないの状況です。
――カタリバの中で、ITだけに集中するというのは、体制的に難しい状況ですか?難しいですね。誰かがいなくなったら、そこの手伝いをしなければいけなかったりとか。一個の大きな課題を解決するというところにフォーカスしようと思っても、現場の小さな課題が山ほど来るので、それを一回置いておいて、本来の課題に集中できるのかというと、正直できない環境ですね。
――単純に人が足りないのが原因ですか?人が足らないのと、現場のリテラシーが低いというのはあると思います。低いというか教育できていない、育成できていないです。
――カタリバの中で、ITの活用はどのくらい進んでいますか? パソコン使わないと仕事ができないので、そこは概ね使えるんですけど、人によってレベルはまちまちです。パソコンを使えるところから上にいけていない人っていうのが2、3割ぐらい。
たとえば、Excelで分析ができるとか、Salesforceからのエクスポートデータをカスタマイズできるような人は、1割いるかどうか。
さらに、自分たちのビジネスへの影響を考えてレポーティング、分析、モニタリングを実現できる人は120名中5、6人ぐらい、ほぼ存在しない状態です。
――特殊なツールの活用はされているのですか?いいえ、SalesforceとExcelだけです。それをPowerPointにまとめたりするんですけど、Excelのマクロが使えないと作業に半日かかってしまったり、レポーティングをうまく作れないから、統合にすごく時間がかかってしまうみたいな状況です。
――Salesforceは何に活用されているのですか?大きく3つあって寄付者の管理と、現場の生徒の管理、勤怠・経費等の管理ですね。現場の生徒の管理はその子たちが何時間ぐらい学習したのかなどの分析に使っています。
Salesforceは、大量のデータを扱えるところやレポートの作りやすさ、データベースの柔軟性などが大きい利点です。NPOには相当安く提供頂ける事もあって、下手に他のデータベースソフトを使うより管理もしやすいという事で使っています。
――システム開発や導入には、年間予算を組まれたりしているのですか?来期、システムを改修するのですが、それは予算をしっかり取って、ベンダーさんに外注するつもりです。
たとえば寄付システムであれば、年間どれぐらいコストが削減できて、どれぐらい寄付者が増えるから、今回このタイミングで導入をしたいという予算の立て方をします。
会計システムの場合は、これからカタリバの組織が大きくなると想定した時に、人件費がどれぐらいになるかを見越して、大きくするための予算管理、予実管理、投資管理をするためには入れた方が良いのではないかという判断をしています。
――NPOの中でのIT活用は、コストセンターという感覚になりますか?受益者の方に向けたIT活用、システム活用を本来したいところではありますが、社会課題がどう解決すれば良いかというビジネスモデルが、まだ明確にでききっていないので、システムを導入するフェーズまでは行っていないのが現状です。
ただ、テクノロジー的に新しいものが出て、これを実現できる可能性があれば、もちろん優先的に投資をするというのが考えられると思っています。まだ、そこをイメージできるほど、ITに関するリテラシーとか、現場の成熟などが足りていないので、コストセンター側の工数削減とか、より良い投資をするための工数管理、経営管理というところに手を入れているという状態です。
――STOが加わる事で、組織全体のリテラシーの底上げができれば、戦略的なところにも影響していく可能性はありますか?大きく影響すると思いますね。
現場は、どういうシステムを入れれば子供たちがどうなるのか、本当にそれは運用できるのかというイメージができていない状態です。そのイメージを具体的にできるような自分たちのレベルアップができて、STOがそこに対して提案をしてくれるとなると、一気にプロジェクトが進むと思っています。
――一般企業とNPOで比較した時に、大きな違いは感じますか?私は元々インフラのエンジニアだったので、工数削減とか基盤をどうやって運用するかという話が中心で、フロント側で大きく利益をバンバン出していくような提案には関わっていませんでした。ですが感覚値として違うのは、システム投資をすれば必ず投資対効果で何かが返ってくるという前提があると思っています。
NPOの場合は、「お金として、収益として返ってくる事が大前提ではない」というのが、一番の違いじゃないかなと思っています。開発が必要なシステム案件であったとしても、収益じゃなくて受益者の社会課題の解決といったところに、フォーカスが必ず当たるので、そこに収益がついてこないというのが、一番苦しいところというか、違いではあるのかなと思います。
――受益者のメリット、ベネフィットは数値化しづらいと思いますが、どのように評価をしていますか?社内的には5ステップというフェーズで生徒の状態を整理していまして、最終的には自分で考えて、マイプロジェクトという形までステップアップしていく。自分で考えて自分で行動していくというのができたというのをゴールにしていて、そこを数値化するという事をやっています。しかし、どういう数値にしていくかというのは各現場、各拠点で課題が違うので、そこは練っている状態です。
もう一つは、外部の方に入って頂いて、社外にも伝えられるような共通の指標というのを試作中です。子供たちにアンケートを受けてもらって、それが定点でどう変化したのかが見える形にしようと思っています。
――ITの投資効果を考えたときに、定量化されたデータの必要性は感じますか?導入効果を考えた時は、もちろんそうなのですが、実際に同じ指標、1つの指標で異なる案件を比較できるかというと、多分できない気がしています。むしろ、寄付者の応援して下さる声とか、子供たちの表情がどれだけ変わったかという、社内的な納得感の方が重要なのかなと思っています。
――そういう意味では、カタリバの中ではうまく回っている感じですか?逆にですね、そういう意味では、うまくまわせてないというのが正直なところです。
要するに、システム投資ができていない理由も、何に対してシステム投資をすれば子供たちがどうなるのかというのが分らない。今も試行錯誤中で、うまいアイディアが出ていない状況なので、そこに対してあまり効果は出ていません。
寄付システムや会計システムというのは、一般企業と同じで投資対効果が見えやすい部分でやっているので、そちらの方が動きやすい状態です。
――今後に向けて戦略をこう変えていくみたいなプランはあるんですか?まず、会計システム側で投資対効果を見える化しようというのを考えています。具体的には、ある投資をした場合に、子供たちにどういう変化が起きたかを見える化していくのが最初のフェーズです。
それによって、拠点に対して投資をできるだけしやすい形にして、投資を考える、戦略を考えるような下地を作っていくのが次のフェーズかなと思っています。
社外的には、先ほど話したような定量評価を出しながら、クラウドファンディングで資金調達するような流れもあるかと思います。
――NPO間でIT担当者同士のつながりはありますか?ツールごとに、たとえばSalesforceのユーザ会だったりはありますけど、それ以外の勉強会っていうのはあまりないと感じています。この前私が主催でやったNPO業務ハック勉強会みたいなものでも、定期的に行われているケースは、あまりなかった気がしますし。
何か小さいつながりがあったりしても、大きくならなかったり、続かなかったりっていうのがあって、横のつながりっていうのは正直あまりないですね。
――外部のソーシャルにいないエンジニアとのつながりは、どうでしょう? やはり、小さいつながりはあるのですが、中長期間的に関わっていくのは、なかなか難しいと感じます。NPOの現場のスピードが速いので、社会課題の解決、何が今できないんだろうというのをディスカッションして、ようやくシステム導入できる時には、その人はもういなくなっている。しかも、それが2、3カ月のスパンで起きたりするので、スピード感とか現場感の違いで、外にいる一般企業の方とのつながりは、なかなか維持できないっていうのはあるかと思います。
――今後のキャリアについては、どう考えていますか?

寄付システムの改修が終わるまでは、この法人でしっかりやろうと思っています。その後は、もう少し外に目を向ける活動を増やしながら、どうやってカタリバ含めたソーシャルセクターでインパクト出せるかっていう事にチャレンジしていくつもりです。
自分のレベルアップ、スキルアップをしながら、新しいアイディアを広げていく感じです。
外のテクノロジーをつなぐっていう事にもっとフォーカスして、上手く活躍できていけたらなと思っています。
――エンジニアは一般的に、ソーシャルに対する関心が薄いと思うのですが、どうしたら変えていけるでしょう?今、良い流れが来てるなというところが1つあって、プログラミング教育とかが学校教育の必須科目になったので、プログラミング教育だったらという事で、外の方々が関わって下さる事があるんですね。
プログラミングを通して窓口ができたという感じがするので、何かシステムに特化してお手伝いできる部分っていうのが増えてきていると思っています。そこをちゃんと公開して、ボランティアを募集して、認知を広げていく事が、まずは重要なんじゃないかなと思っています。
業務改善をお願いしても、社会課題にフォーカスしたっていう実感値はすごく小さくなると思うので、そういうところを窓口にするよりは、実際に「社会問題を解決する」という事を窓口にして、自分たちで子供たちの表情を変えたとか、現場の社会課題を解決したっていう感覚を持ってもらうような活動が良いんじゃないかなと思っています。
最初は、ボランティアレベルが良いと思います。一日とか半日とか、数時間単位で関わってもらう。それを五回、十回繰り返していると、勝手に社会課題というか、その現場の課題含めて見えてきたりするので。私もそうでしたが、少しずつ自分の関わり方、ポジション、役割とか、求められている事が、お互いに分かってきます。そうすると、こういう提案ができるかもしれない、こういう提案をして欲しいという、両方の思いが擦り合わせさってきます。
――ソーシャルの現場でITを活用したい人には、どのようなスキルがあれば良いのでしょう?どのレイヤーかによりますが、現場の業務改善レイヤーであれば、Excelを使えるような事務スキルがあれば十分だと思います。そこから始めて、スキルアップをしていくとかでも良いですね。
ですが、社会課題を一気に解決するようなアイディアやスキルを試したいようなレイヤーであれば、やはり現場とのコミュニケーションというか、言語のすり合わせみたいなスキルと、今ある社会課題で何が本当の原因なのかみたいなのを特定する、仮説を持つ、それを実行してPDCAを2、3年間回すぐらいの根気と、自分の経済状況が重要になってくるのかなと思っています。
――経済状況も重要なのですね?20代とかで、色々なチャレンジをしたいという中でだったら、完全に経済状況考えなくて良いと思うのですが、そういう人は少なかったり、経験値が足りていなかったりするので。そうなると、家庭の理解も含めて、経済状況って意外と重要なファクターになってくるのかなって思います。
――今回、新しいエンジニアを採用されたようですが、どのような基準で採用されましたか?元々の採用要件としては、ITの知識があるというところです。でも最終的には、「何かしたい」じゃなくて「これがしたい」という人を選びました。この団体でこれがしたいっていう人が欲しかったっていうのが、正直なところだったのだと思います。
「何かしたい」という人、本当に多いんですよ。ありがたい事ではあるのですが、「何かしたい」だと多分、仕事がなくなるというか。現場で依頼できるほどITスキルがないというのは、すでに伝えている通りなので、自分で仕事を見つける事が何よりも重要です。
STOを雇うっていうのは、もう少し大変だと思っています。
どういう社会課題を解決できるか分らない、本当に解決できるのかが、そもそも分らないような状態でジョインして、その人が成果を上げたとしても、収益としての効果は出せないので。
どういう効果が出た時に、どれぐらい法人がそこに対して投資できるのか、今どれぐらいキャッシュがあるのか、無いなら集められるのかどうなのか、っていうところから考えないといけない。
考えるとしても、中小企業の支援金とか、IT導入補助金だとか、色んな手はありますが、そこに工数を割ける人がいるのかどうか、実際いないから雇えないという状況もあると思います。
逆に、それぐらいしてでも解決したい課題なんだよねっていう事を経営に説明するっていうのが大事だし、STOの方にはそこも含めて伴走して欲しいって事を伝える事が必要だと思っています。
――STOは今後、社会的にどういう役割を求められると思いますか?まだ分らないですけど、社会課題を解決するアイディアを実現できる人っていうのが求められてくるんじゃないかなとは思っています。
実現っていうのが、多分、半年とか1年というスパンじゃなくて、3年、5年、10年というスパンになってくるので、そういうところまでちゃんと伴走をし続けられるっていう事が、一つの役割になってくるんじゃないかと思っています。
その次には、それを1つの団体だけではなくて、同時に5団体、10団体に同じナレッジを横展開して、社会課題をより大きく解決するっていうのが、上位のSTOっていうか、すごく優秀な方に求められる役割なんじゃないかなと思っています。
――ユーティリティに複数の団体に関わるのではなく、それを上位概念的に広げていく?多分、ユーティリティに関わる必要は出てくると思いますが、それをちゃんと上位概念に落として再展開するっていう事が求められてくると思いますね。
だから、そこに優秀なCFOというかSFOみたいな人がつくと、なおさら良いと思うんですけど。
じゃあ、どうやって資金調達をして、どうやってやるか、マーケティングと資金調達がセットなのかなとは思っています。
――これからSTOを目指す人へメッセージをお願いしますそうですね、本当にしんどいとは思うんですよ。でも、しんどい中に、なんか楽しさはあって。
理不尽だったり、無理難題だったり、もうわけ分かんねえよみたいな事もあるんですけれども、そこのわけ分かんねえよみたいなのを解明する手続きは、やっぱり面白いですし、解明した時のすっきり感みたいなのはすごくあります。
解明した後に、どうやってシステム化していくかというところも、やっぱりしんどくて、現場の理解が得られないとか、マニュアルはああだこうだ言われるだとかあるんですけれども、じゃあ、さらにそれを実現した、1年後2年後にバックしてくる効果っていうのは、多分、想像を絶するぐらいに、喜びとか感謝とか含めて、達成感がすごいあると思います。
そういうしんどさみたいなのも付き合いながら、可能性を本当に信じて、頑張ってもらいたいなと思いますし、ぜひSTOとして社会課題の解決に携わって欲しいな思っております。