プロダクトマネージャーとは何者か?その仕事と役割、今後のニーズとは

はじめに

近年、インターネット業界を中心に”プロダクトマネージャー”という職種が注目を集めている。日本でもプロダクトマネージャーという肩書きでの求人を行う企業が外資系IT企業やスタートアップを中心に目立ち始めており、昨年には日本で初めてとなるプロダクトマネージャーカンファレンスなるイベントが大々的に開催された。

このようにプロダクトマネージャーという職種がはじめて一般に広く認知されるようになった訳だが、これまでインターネット業界においては、ウェブディレクターやプロデューサー、プロジェクトマネージャー(PM)といった職種がいわゆる非エンジニア職の花形として取り上げられることが多かったにも関わらず、なぜここにきてプロダクトマネージャーへのニーズが高まっているのだろうか?

今回は、現役のプロダクトマネージャーとして主にアドテクプロダクトの開発をリードする自分の経験も踏まえて、今一度プロダクトマネジメント(マネージャー)の定義、そしてプロダクトマネージャーに求められる要件やニーズについて紐解いてみたい。

インターネット業界におけるプロダクトマネージャーの定義

まずはじめに、プロダクトマネージャーの定義について確認してみたいと思う。いくつか僕自身が参考にしているプロダクトマネージャーの定義を紹介しよう。

まず初めに紹介したいのは、米国VCのGreylock Capitalでパートナーを務める Josh Elman氏による定義だ。

Help your team (and company) ship the right product to your users

(プロダクトマネージャーは、)ユーザーに最良のプロダクトを提供するためにチーム(または会社)を助ける存在である。

もう一つ別の定義を紹介したい。アマゾンでプロダクトマネージャーを務めるIan McAllister氏による定義は以下だ。

Product managers own “What” and “Why”.
Project managers own “How” and “When”.
プロダクトマネージャーは、”What(何をするか?)”と”Why(なぜやるか?)について責任を持つ。プロジェクトマネージャーは”How(どうやるか?)”と”When(いつまでにやるか?)”について責任を持つ。

最後に紹介したいのは、Kaizen PlatformのKenji Sudoさんがプロダクトマネジメントに関する講演でおっしゃっていたプロダクトマネージャーの定義であり、僕自身いちばん実感を持って理解しているのがこの定義である。

プロダクトマネージャーは、決裁権を持たない経営者である。

上記で紹介した定義を総合すると、プロダクトマネージャーの仕事は、「自社のプロダクトやサービスのコンセプト、機能、品質、収支全般について全体的な責任をもち、そのプロダクトやサービスの実現にかかせないチームをモチベートして成功に導くリーダー」といるだろう。

言い換えれば、企業が行う経済活動の主体となる自社の製品やサービスについて全ての責任を一手に担うミドルマネージャーとしての要職であるといっても良いかもしれない。

実際に米国のテック業界の求人マーケットを調べてみると、プロダクトマネージャーの 職種で数多くの高給な求人募集がされている。以下、実際の求人サイト上で日本と米国でのプロダクトマネージャーの求人数や給与レンジを比較して、現在の両国のマーケットにおけるプロダクトマネージャーへの市場ニーズを明らかにしてみよう。

プロダクトマネージャーの求人数・給与レンジ 比較(日本VS米国)

Fig.1 Indeed.com(US)での「Product manager職」の検索結果

上記からお分かりになるとおり、米国では求人サイト上で「product manger」というキーワードで検索してみると23,000件を超える求人が表示される。給与レンジもボリュームゾーンが$75,000+(約830万円)~$90,000(約996万円)台と米国におけるフルタイムの平均所得と比較しても高いレンジの給与が提示されていることが分かる。年収10万ドル以上の高額求人も全体の半数以上の13,000件以上あることが見て取れる。このように、プロダクトマネージャーという職務が労働市場の中でポジションを確立しており、高給取りとなっているのだ。

Fig2. Indeed Japanでの「プロダクトマネージャー職」の検索結果

一方で、同じ「プロダクトマネージャー職」で日本における求人数を検索してみたところ、検索結果で表示されたのはわずか2,639件であった。給与のミドルレンジも500万円台と、1000万円越えの求人が数多く掲載されている米国と較べてみても、「決裁権のないCEO」としての責任と業務量を求められる職務としてはいささか物足りない。

では、プロダクトマネジメントの本場、米国のテック業界の求人要件の事例をもとに、プロダクトマネージャーに求められる職務要件を見てみよう。

Google社(Mountain View, CA) の事例(下記に掲載されているのは、実際に掲載中のプロダクトマネージャーの求人票である。)

At Google, we put our users first. From innovative software products like Gmail, YouTube, Chrome, Street View to pioneering mobile devices like the Android, we build products that organize the world’s information and make it universally accessible to our users. The Product Management team works closely with our engineers to guide products from conception to launch. As part of the Product Management team, you bridge the technical and business worlds as you design services that our customers love. You’ll work with Googlers from Engineering, Sales, Marketing, and Finance, to name just a few. You have a bias toward action and can break down complex problems into steps that drive product development at Google speed. As a Product Manager, you will be part of shaping Google’s next moonshot.
(プロダクトマネジメントチームは、プロダクトのコンセプト立案からローンチまで首尾一貫してエンジニアと協働する。ユーザーに愛されるサービスをデザインしながらテクノロジーサイドとビジネスサイドの橋渡しを担うことになる。エンジニアや営業、マーケティング、財務といった広範なチームと協働しなければならない。行動志向で、複雑な問題をブレークダウンしながらスピーディーにプロダクト開発を実現しなければならない。プロダクトマネージャーとしてグーグルが目指す壮大な挑戦の一翼を担うことになるのだ。)
One of the many reasons Google consistently brings innovative, world-changing products to market is because of the collaborative work we do in Product Management. With eyes focused squarely on the future, our team works closely with creative and prolific engineers to help design and develop technologies that improve access to the world’s information. We’re responsible for guiding products throughout the execution cycle, focusing specifically on analyzing, positioning, packaging, promoting and tailoring our solutions to all the markets where Google does business.
(グーグルが革新的で世界にインパクトを与えるプロダクトを提供できるのは、プロダクトマネジメントで様々な人のコラボレーションを実現しているからだ。未来をともに見据えながら我々のチームは、世界の情報へのアクセスを向上するテクノロジーをデザインして開発するためにクリエイティブで生産性の高いエンジニアと協働している。プロダクトマネジメントチームは、分析、ポジショニング、プロダクトの仕立て、プロモーション、カスタマイズを行い、グーグルがビジネスを展開するすべてのマーケットでプロダクトを提供するために、プロダクト開発のすべてのプロセスに介在してプロダクトをリードすることに責任を持つのである。)
■業務内容
・Gather requirements: 要件の整理
・Help to define a product vision and strategy: プロダクトのビジョンとストラ テジーの策定
・Work with world-class engineers.: 世界レベルのエンジニアとの協働
■応募にあたって必要な条件
・BA/BS in Computer Science or a related technical field or equivalent practical experience.
コンピューターサイエンスまたはそれに付随する領域の学位もしくは十分な実務的経験
・Product management or product design experience
プロダクトマネジメントやプロダクトデザインの経験
・Experience developing Internet products and technologies
インターネットプロダクトや技術の開発経験
■あると望ましい条件
・MS or PhD
修士号もしくは博士号
・Familiarity with business issues, or the ability to quickly learn
ビジネスについてのリテラシーと学習スピードの速さ
・Understanding of the search engine space
検索エンジンの仕組みに関する理解
Excellent written and oral communication skills
優れた言語運用・コミュニケーション能力
Excellent organizational and analytical skills with strong technical abilities
技術への知見をベースにした優れた組織リーダーシップ・分析スキル

これが世界基準のグローバル企業で求められるプロダクトマネージャーの標準スキルといえるだろう。端的にまとめると、

・プロダクトのビジョンを提示して企画から開発、ローンチ後のグロース ストラテジーまで一貫してプロダクトの成長をリード出来るスキル (計数管理、収支管理、経営陣へのアカウントも含む)を有していること。

・複数の部署間を横断して、プロダクトに関わる人全体の足並みをそろえてリードするリーダーシップ&コミュニケーションスキルを持っていること。

・エンジニアやデザイナーといった専門職の人々と会話するうえでの技術的な知見、テクノロジーへの理解や共通言語を有すること。

このようにインターネット企業におけるプロダクトマネージャーには、テクノロジーへの知見やファイナンスの基礎知識といったハードスキルのみならず多数の関係者とコミュニケーションを図り、ビジョンを浸透させてプロダクトの成功へと導くソフトスキルも求められているのである。

最後に

いかがだっただろうか?人工知能(AI)やIoT、ブロックチェーンといった様々な技術分野が日進月歩のスピードで生まれ、プロダクトのライフサイクルがますます短くなっていく現在のマーケットの中で、これからプロダクトマネージャーの存在がますます重要となってくるだろう。今後、日本でもプロダクトマネージャーという仕事がより広く認知されて人材へのニーズが急速に高まるはずだ。ビジネスサイド、エンジニアサイドどちらでキャリアを積んできた人にとってもこれまでの経験や知見を活かしてプロダクトマネジメントに挑戦してみるには絶好の機会ではないだろうか。