スタートアップのステロイド時代は終わった

Yusuke Tanaka
6 min readMay 4, 2016

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先日公開したGreylock PartnersのSimon氏のブログの翻訳「なぜUberは勝ったのか」は予想以上に様々な方がシェアをしてくださり、反応の大きさに驚きました。先日Simon氏がその投稿の続編として”The Steroid Era of Startups is Over”を公開されていたので、またご本人の許可を頂き翻訳をさせて頂いた。

ちょうど2日前にもUberが全米規模の訴訟をされた、という記事が出ていたが、この引き締め期間に置いてはお金で全てを解決できず、競合との戦いにおいてこう言った出来事が命取りになる可能性も秘めている。

それでは下記より翻訳。

スタートアップのステロイド時代は終わった

しかし次に何が起こるのか?

最近私のブログの投稿「なぜUberは勝ったのか」はたくさんの示唆に富むフィードバックを生み、また幾つかの重要な問いが浮かんできた。その投稿についてのすべての議論を考慮した上で、いくつか追加で私の考えを共有したい。

そのブログの投稿は、2010年から2015年の間に、いかに多くのスタートアップが文字通りグロースとスケールを買うための武器としてお金を使用したか、についての振り返ったものである。私は、積極的なスタートアップがパフォーマンス向上薬としてお金を使用する「ステロイド時代」の極端なケーススタディとしてUberを取り上げた。私はUberが「勝った」と主張したい、なぜなら彼らはお金をステロイドとして使い、流動性を手に入れることができたのだから。

この先、同じ戦略は単に通用にしない。お金を簡単に手に入れることは難しくなり、またそれ故、会社はお金よりも創造性に頼らなければいけない。なので、Uberが市場においてリードしてるからもしれないが、一方で、この市場を巡る戦いは必ずしも終わったわけではない。米国におけるライドシェア市場は勝者が全てを手に入れるタイプの市場ではない。それは今、米国を含めたほとんどの国においては複占市場(ある市場においてサービス供給者が2社のみしか存在しないケース)であり、賢い戦略的な行動や、アンフォースドエラー(テニスで使用される用語で、ミスする所でもないのにしてしまったミスのこと)によってパワーバランスが変わりうるのである。お金を武器化することはこの競争の激しい戦いにおいては(短期的には)効果的だったかもしれないが、それによって長期的な問題を引き起こすかもしれない。それは決して「無料」ではない。

勝者は全てを手にするわけではない

他に例のない状況:ローカルのオンデマンドサービスは都市ごとに制していく必要がある。理論上、別々の会社は別々の都市を制することができるはずだが、実際問題は、それはほぼ不可能なのである。典型的には、ある一つの都市において流動性を先に手に入れた会社が、他の競合が一つ目の都市で流動性を手に入れるよりも速く、他の都市へと拡大してしまう。地理的に流動性を拡大していくこと(サービス提供エリアを広げること)は流動性を手に入れることよりも簡単である。しかしそれはライドシェア市場において起こったことではないのである。LyftとSidecarがpeer-to-peerのタクシー市場を開拓した。流動性を先に手にしたのはLyftだった。Uberはその後すぐに、流動性を手に入れるための戦略を理解し、Lyftよりも速く他の都市へ拡大したのである。私のパートナーであるレイド・ホフマンがBlitzscalingのクラスで述べたように、「市場に最初に参入することではなく、市場で最初に大規模になることである」。

デフォルトの複占市場:マーケットプレイスが流動性とマネタイズを手に入れると、それらを取って代わることは困難である。最低限の効率的な規模とリソースを持った流動性のある2つマーケットプレイスのビジネスは市場独占への戦いとは反対に、複占市場に向かう傾向にある。優位に立っている者が、複占市場において支配者となるための優先交渉権を手にする。しかし、Uber とLyftはともに流動性を手にし、比較的両者間のスイッチングコストが低いことを前提に、LyftがUberにおいつく可能性もあるのである。マーケットシェアは変わったとしても、この時点におけるデフォルトの状態は米国では複占市場なのである。賢い戦略的な行動や自ら招いたミスが競争環境を変えうる。デフォルトの複占市場から独占市場へと変えうるのである。最終的にどうなろうとも、競争は顧客、運転手そして競争している企業に取っても良いことだ。UberとLyftは単に調節だけの理由であっても、お互いの事を求めているのである。

パフォーマンス向上薬からの解毒

禁断症状:我々は投資が抑制された新しい環境に突入しており、それはミドルステージからレイターステージの会社に影響を与えるのである。長年Uberはお金をパフォーマンス向上薬として使用してきた。そして今彼らはお金にハマってしまってるのだ。何かが変わらなければいけない、なぜなら、お金を使う能力がお金を集める能力よりも上回ってしまっている。Uberはすぐに純利益を上げるかドラッグとしてのお金を使うことをやめ始めないといけない。もしそうでなければ、深刻な禁断症状は出てくるだろう、鈍化した成長率や弱いサービスレベルアグリーメントなどだ。

麻痺したスキル:お金に関してのもう一つの課題は、お金があるときは、お金で全てを解決してしまう。創造的な課題解決のための会社が磨くべきスキルは、典型的には望みからではなく必要性から出てくるものだ。お金がたくさんある会社にとっての問いは、なんでも解決するためのお金に依存することをやめた時に何が起こるのか?ということである。流動性の持つ力が極めて寛大である(流動性さえ手に入れれば何でも許される)がゆえに、マーケットプレイスビジネスは少し甘いかもしれない。だが、本当に十分に許されるのだろうか?

LyftとUber共に流動性と流動性を獲得するためのうまく機能している方法を同時に持っていた。マーケットプレイス市場においてこのような状況にあることは、熾烈な競争になるだろう。熱い戦いは引き続き継続され、観戦に値するだろう。どのようになろうとも、ビジネスの歴史を創っているのだ。

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Yusuke Tanaka

Founder of RestUp, Inc. Working on something new and exciting in San Francisco.