アーティストコレクティブとレコードレーベル

Yuya Yamamoto
8 min readSep 1, 2016

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ここ数年はもっぱらSoundCloudとSpotifyを利用することが多いのですが、ひとつ気付いたことというか、感じたことがあったので、文章に残そうと一念発起しました。

*SpotifyのYear in Music、SoundCloudからSpotifyへ…

アーティストコレクティブの拡大

インディペンデントなアーティスト、プロデューサーやトラックメイカーが活動していく中で、インターネットは言わずもがなインフラです。iTunesができたのが2001年、実はすでに15年も経っていて、去年AppleはiPod Classicの生産を終了し、日本やドイツなどを除いてCDショップは発見することが困難な絶滅危惧種。昨今国内でもストリーミングサービスに出会い、愛用していたiPod Classic 160GBをメルカリで売りさばいた、なんて人も少なくないと思います。

ではここ15年足らずの間に、どれほどのプレイヤーが生まれて、またネット上に音源をアップしてきたのかの図を探したのですが、もちろん見つからなかったので割愛します。が、普段からプラットフォームに没入して音楽を漁利まくっているディガーな人たちは、そのコミュニティーの絶妙な変化だったり、断片的な膨らみだったりをある程度の周期でなんとなく感じていることと思んですね。そしてそれが面白いと思うんですよね。そういう音楽の話です。

SoundCloud

その中で特にここ2,3年に感じたこととして、海外でアーティストコレクティブができまくってる、ということです。コレクティブとは、辞書的には「集団」の意。アーティストコレクティブとはアーティストの集まりです。SoundCloudでディスクリプション見てると他のアーティストやトラックへの導線を用意してて、これが似たような音や人に出会いやすくなっている。SNSでもS/Oする。ちゃんと目的を持ちブレない。今でこそレコメンド機能でトラックやアーティストがRelatedされますが、それもある程度の実数が蓄積された後の話で、それ以前どうするかって、リスペクトしあってお互いのフォロワーや再生回数を伸ばしていこうとなります。こういうの自体前からあったとは思うんですが、そういうのとはまた違った、なんとなくこの現行の一種ムーブメント的に起こっていることが面白いなぁと感じるんですね。

コレクティブのあり方として

・みんなアーティストでありプレイヤー
・似たような音色のグッドミュージックを作っている
・カバーアートやロゴデザイン、活動の印象が統一されてる
・現実世界でもグッドフレンズ
・お互いのリスペクトは忘れない
・集団としてリーチの母数を多く持つ

みたいなことが挙げられるかなと。(あくまで現時点の個人的主観であり一概に定義はできないので自分の肌で感じてください)

加えて海外で露骨なのがティーンでもめちゃめちゃイケてる奴がたくさん出てきていること。この背景を考えると、例えば今の時代、ソフトやハード機材の価格が比較的安価なってるし、もしくははじめからDAWやVSTをクラックする人も全然いるだろうし、コミュニケーションツールも発達してるのでそこらへんのノウハウ伝達も早いだろうし、イニシャルコストなんてPC代くらい(それも中古)、そこからトラックメイカーやプロデューサーになって、有名アーティストにフックアップされて、フェイマスになる人も海外では全然見られますよね。これは経済的なハードルの低下と、何かを学ぶ際のネット上の情報量(YouTubeのHowToやプロジェクトファイル)、加えてSCのようなプレイヤーにとってのコミュニティーがある程度成熟してきたことが相まって、な気がしてます。その周りでmajesticやムーキャス、Monster Catなど次世代的な発信型のメディアが良い役割を果たしていて丁度よい塩梅で動きやすいというか。そしてコレクティブを組んでいくのも、やはり若いプレイヤーはどんどんやっています。時代が変わればこういうのって起こってくると思うんですけど、こういうカルチャーが好きです。

レコードレーベルとコレクティブの違い

レコードレーベルってなんぞやってことになりますが、基本的なスタンスとしてコレクティブとは存在の目的が異なります。レーベルはあくまでメイクマネーなビジネス、コレクティブは露出。レーベルって言葉自体権利的な意味合いが強く、逆にインターネットが生まれる前の概念なので、そもそものスタンスが違うのは当然ですが。

レコードレーベルは予算組んでプロモーションして録った原盤を売っていく存在でした(過去形)。ストレイトアウタコンプトンでもN.W.Aが揉めてたように、所謂権利ビジネスです。しかしコレクティブはアーティストプレイヤーの集団なので、直近で原盤を売ることでメイクマネーしないし、そもそもアンオフィシャルなリミックスとかブートものでハイプするのが手段の一つなので、権利処理できずで売れないです。最近は公開するもストライク喰らうので控えめな様子でもありますが。

なので、あくまで個々がオフィシャルな音源を発表する場として、自主やどこかのレーベル(という存在)を通す。ここからSpotifyやApple Musicへディストリビューションする。一度何かしらで配信プラットフォームへのディストリビューションをはじめた人は、SCやYouTubeにフリーで公開している音源も、権利的に問題なければストリーミングに配信するケースがここ最近増えてきてるなぁと感じます。フランクオーシャンみたいな億単位のハイパーディール戦略を除いて、出先を縛る必要もないし、どのプラットフォームでも聴けた方がなによりリスナーファースト。今や誰でも配信なんぞできるんで、そこらへん海外のひとたちの行動に対して個人的には有難いなぁと思いますし、そういうことしてる人って確実に印象に残ってくるんですよね。ここがリスナーとしても感じる将来のポイントかなと思います。

Apple Music & Spotify

活動はあくまで個人、だけど一緒にやっていく人たちで緩やかなスクラムを組んでる集団をコレクティブと呼ぶのであれば、それは個人とレーベルあいだのレイヤーでもあり、協力することで生まれているいい感じの露出のあり方なのかなぁと。必要最低限であり、広告やヘビープレイしまくり単純接触の原理でファンにさせるそれとは違うので。そういうのが生まれて、それの周りをフォローする人たちがいて、ある程度定めてやっていて、それも上手く機能するカルチャー自体が好きです。ボトムアップ感があって最高。話が変わりますが普段から音でいろんなものを聴く人たちを除いて、やっぱり好きなアーティストのレコメンドする曲とかって音より言葉のイメージが先行しているので入りやすいんですね。よく「シェアする」を見かけますが、音楽そのものをシェアするよりか、その曲の感想や印象のコメントをシェアする方が本質的に日本人には合っている気がしたりもしています。

残念ながら、日本にもすごくいい音楽やアーティストがいるのに、自分の意思でいいものをいいと言える人たちが、圧倒的に少ない。

SCの特定のジャンルしか見てないので、全てに当てはまるというわけではないですが、国を跨いで一緒に曲作って、オーガナイザーに呼ばれたSXSWで合流して、そんなん普通に考えて楽しいに決まってるんですね。彼らはそこそこ有名でも音楽一本でもないし、職場や学校のPCでDAW開いてるのとかざらにいるので、結構優雅に音楽を楽しんでる。でもSCで数万人のフォロワーがついてる。ChanceもFlumeもgnashもインディーでTOP入りするし、そもそもマスではないSCだったりdatpiffでのプロップスを得てそうなっていった。であればそういう耳が肥えたはやい人たちのプロップスをどう得るかに焦点を当てていくのは、プレイヤーとして至極まっとうな気がします。

コレクティブはヒップホップ、ブラックミュージック界隈におけるクルーやポッセにも近しいと思いきや、実際は外面見た目が近しくても背景を辿ると意味合いが違うので別物。特定のジャンルの中でさらに細分化されたジャンルの中の絶妙な音の質感の違い、に似ているというか。それが生まれた背景やストーリー、どうやらそんなものに心惹かれるようです。(国内ではマルチネがやはり動きとしてNICEと思います。レコードはとっていいと思いますが)

今回のコレクティブもそうですが、それ以外でもレーベル型メディアだったりプレイリストだったり、今後も素敵なものがスルっと入ってくる道が増えると楽しいと思うし、それを楽しむ人がもっと増えると、面白いイベントも増えていくし、巡っていいものも増えていくんじゃないかなって思います。

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