革新的な26のVenture Capitalとそのパフォーマンス

Yuya Murakami
27 min readMar 13, 2019

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※この記事は元記事の筆者に許諾をとった上で掲載しています。

はじめまして、最近East Venturesで働くことになりました村上です。

「Twitterちゃんとやろうぜ」ってことなので、フォローしてもらえると嬉しいです…! @yu8muraka3

さて、今回はこちらのMediumの記事を元に、26の革新的なVCについての解説とパフォーマンス(といってもリターンベースではありませんが)を調べてまとめて、興味深い順に並び替えました。ただすごく長いです…!

https://medium.com/startup-grind/the-most-innovative-venture-capital-firms-baba2d5a7b38

元記事を書いてるのは、Stefano Bernardiというエンジェルやってたり、EthereumのプロジェクトのAragonのExclusive directorやってたりする人物です。なので、彼の独断による定性的な選出となっていますが、普通におもしろいので紹介することにしました。

ただ記事自体が2016年のもので、変化の早い業界的にはやや古いのでそこはご勘弁ください(許諾取った際に彼も「ちょっと時代遅れだけどね」って言ってました)。でもそのかわり月日が経って、当時革新的だったVCのパフォーマンスが見れる&日本としては画期的なはずなので。

1. Tusk Ventures

ここは元々2011年にUberの最初の政治顧問会社としてスタートして、法律や規制、政治家などとのコミュニケーションを行うことでスタートアップをサポートしていました。それからVCを作り、規制された業界のスタートアップに投資をして、規制や政治の専門家からなるチームがバックアップするというスタイルをとっています。ステージは、シリーズAが4割ほどを占める中心で、ミドル〜レイターまで投資しています。2019年には2号ファンドも立ち上げていて順調の様子。

・運用額:$100M
・投資数:8(内リード3)
・Exit数:0
・代表的な投資先:Circle(仮想通貨投資アプリ、ユニコーン)、Coinbase(仮想通貨取引所、ユニコーン)、FanDuel(架空のスポーツチームを作って競い合う、Paddy Power BetfairにM&A、ユニコーン)

ハードルが高くて敬遠しがちな規制産業に政治や規制の専門家をチームにして支援するスタイルはユニークで、完全にほかのVCと差別化できていると思いました。さらに規制産業はそれだけデカイのでリターンも大きく、CircleやCoinbaseといったCrypto領域でユニコーン2社生み出すなど結果も出ていて凄いです。

政治力、ロビイング力をバックにしたVCは面白いです。

2. Flight Ventures

AngelListのシンジケートを活用して作られたVCです(AngelListが主導しているわけではない)。

元起業家などのエンジェル投資家がシンジケートのマネージャーとなっていて、SaaSやCrypto、レイターステージ用といった、それぞれ趣の異なるシンジケートがドメイン知識のあるエンジェルによって管理されています。

またAngelMobというツールを提供していて、Flight Ventures(シンジケート)から投資を受けたスタートアップがシンジケートに参加している個人投資家に向けてプロモーションや拡散の依頼をすることができるようになっています。(が、現在確認したところ閉鎖していました…)

AngelListを見るとFlight Venturesは現在46のシンジケートを管理していて、シードでの投資が4割5分を占めています。

・運用額:不明
・投資数:59(内リード7)
・Exit数:10
・代表的な投資先:Dollar Shave Club(カミソリのサブスクリプション、UnileverにM&A、$1B)、Contactually(CRMツールのSaaS、CompassにM&A)、Cruise Automation(自動運転技術の開発、GMにM&A、$1B)

$1BでのExitが2社。

3. Indie.vc

OATV(Oreilly AlphaTech Ventures)のパートナーであるBryce Robertsが始めた実験的なモデルで、スタートアップによくある「急成長にフォーカスすればいい」という考えに対して疑いを持つところから始まっています。ゆえにindie.vcは会社からの配当金で収益を得るモデルを作っていて、具体的には、転換社債(恐らくConvertible Bond)で投資をし、投資額の2倍になるまで80%を、その後ハードキャップである投資の5倍に達するまで20%の利益を得る仕組みになっています。

そして、スタートアップが急成長して追加の資金を調達する場合は、あらかじめ交渉済みの価格で株式に転換します。しかし彼らがユニークなのは、起業家がもう資金調達を望まず、キャッシュフローでビジネスを成長させたいと思った場合、そのスタートアップは株式を買い戻すことができ、3倍のキャップを設けてその後レベニューシェアを続けます。

現在2号ファンドを運用していて、ステージはシード中心の$50K〜100Kのレンジで投資しています。

・運用額:$30M
・投資数:2(リード2)
・Exit数:0
・代表的な投資先:不明

4. 137 Ventures

グロース段階のスタートアップの創業者や投資家、従業員の株式を取得することによって、未上場株式における流動性を提供してレイターステージの企業に投資することに注力しているのが特徴です。彼らが素晴らしいのは市場より低い評価で、少額をかなり実績のある企業に投資できることです。

・運用額:$387M
・投資数:26
・Exit数:7
・代表的な投資先:Spotify(音楽ストリーミング、IPO)、AirBnB(民泊サービス、ユニコーン)、SpaceX(ロケット・宇宙船の開発・打ち上げ、ユニコーン)、Grab(東南アジアの配車アプリ、ユニコーン)

代表的な投資先のメンツがエグいですが、ほかにもDiDiやPalantir Technologiesなどなど錚々たるネームが並んでいます。

一般的にVCは第三者割当増資を引き受け、会社がグロースするように会社に資金を投下しますが、このアプローチは既存株主の現金化したいニーズに対してお金を払って株式譲渡をしてもらうわけです。どちらの方法でも株式を取得するというのは変わりませんが、元記事を見る限り既存株主から買い取る方が低い評価額で、しかもチケットサイズもそれほど大きくなく手に入れられるという利点があります。なので、同じタイミングで投資をしていても、このアプローチの方がリターン効率がいいです。そして、ポートフォリオを見る限り、超有望案件に遅く投資をしている割に良い条件で株式を取得できているんだと思います。

ただ、会社に資金が投下されないので資金の面でグロースには貢献しません。

5. Lighter Capital

彼らはVCと銀行のギャップを埋める存在だと謳っています。というのも、彼らはスタートアップに”融資”をして収益を得るモデルで、SaaS事業に収益ベースの融資を提供することで、年間約30%の収益を上げています。

例えば、$100Kの小切手を渡したら、それを何倍かにして返すといった具合です。彼らは、融資先の会社の年間収益の最大1/3の額の小切手を書いていて、株式は取得しません。融資の際も、データとメトリクスを使用して収益を予測することで、わずかな時間で資金を提供できるようになっています。(そこが銀行と異なる点)

また株式を取得しないのでその企業のExitにも関心はなく、安定的な収益を生んでいて、ブーストをかけたいけど株式を譲渡・新規発行したくないスタートアップにとっては良い選択肢になります。

・運用額:$140M
・投資数:317(リード116)
・Exit数:19
・代表的な投資先:省略

6. Scout Programs

ファンドが元起業家やアドバイザーに一定の額を渡してパートタイムのエンジェル投資家として働いてもらうという方法で、Sequoiaが導入していたり他のVCもやっていたりします。Sequoiaの場合は年間10万ドルでスカウトの人数は100人ほどだそう。もし投資がうまくいくと、そのスカウトとLPが利益の大半を持っていき、残りをGPと他のスカウトで分け合います。なのでスカウトはほぼノーリスクでアップサイドだけあるという感じで、事実上SequoiaがLPのエンジェルファンドのGPのようなものです。

スカウトは特に投資手法について縛りを受けることはありませんが、スカウトが将来のディールにSequoiaがアクセスできるように計らうことをSequoiaとしては望んでいて、StripeやThumbtackはスカウトプログラムによってSequoiaが投資できたそうです。

したがってVC側にとってこのScount Programsの狙いは、スタートアップに優先的にアクセスできる強力で幅広いネットワークを確保して、ファンド本体から良いディールに投資しやすくすることです。

7. Upside Partnership

First Round CapitalのパートナーだったKent GoldmanがFirst Round Capitalを去って、新しく始めたのがこのUpside Partnershipです。面白いのは、ファンドのパートナーに投資先のFounderを据えるということです。

そしてパートナー同士(=Founder同士)でナレッジの共有をしたり、お互いの挑戦や成功を理解し、お互いのスタートアップを助け合うような関係性が生まれるようになっています。

さらに興味深いのは、このファンドの投資先からExitが出てキャピタルゲインが発生した場合、それをパートナーであるFounderにもキャリーが分配される設計がなされていることです。

分配されるキャリーの割合は正確には公表されていなく、Goldmanは2ケタはあると言っていて、元記事では「おそらく約20〜40%はある」と言っています。このようにFounderにもキャリーが入ることでファンド全体の成功にインセンティブが働き、Founderのパートナー同士の交流や助け合いが促進されるのでしょう。

また、最悪自分が上手くいかなくても他のスタートアップが成功すれば、多少お金が手に入るというセーフティーネットとしての役割も果たすのかなと思います。

基本シード期に投資しています。

・運用額:$72.5M
・投資数:28(リード0)
・Exit数:2
・代表的な投資先:Smyte(SNS等での悪意のあるユーザーの検出、TwitterにM&A、$65M)、Astro Technology(メールアシスタント、SlackにM&A)

8. Unshackled

米国の就労ビザで行き詰まっている外国生まれの起業家にフォーカスして投資を行っており、資金提供はもちろんビザスポンサーとしての役割も果たし、多様な起業家にアメリカで挑戦する機会を提供しています。元記事では、”超賢い裁定取引だ”と表していました。たしかに他が手を付けていない分、いい人材に低いコストでアクセスできそうです。

・運用額:$3.5M
・投資数:17
・Exit数:1
・代表的な投資先:Immediately(営業効率化ツール、New RelicにM&A)

9. Draper Esprit

ロンドン証券取引所でIPOを行って上場企業となっているベンチャーキャピタルファンドという点で革新的です。これによって、一般的なVCの10年というファンドサイクルに縛られること無く、長い期間かけて投資をすることが出来、大胆な投資が可能になります。

・運用額:$1B
・投資数:125(2006年以降)
・Exit数:不明
・代表的な投資先:Revolut(ネット銀行、ユニコーン)、Transferwise(海外送金サービス、ユニコーン)、Graphcore(機械学習用のアクセラレータの開発、ユニコーン)

10. Cota Capital

上場株・未上場株どちらにも投資するスタイルを取っていて、両方のマーケットを行き来することで、魅力的な投資を特定できるようにしているのが特徴です。また資本に柔軟性を持たせることを好み、長期的なコミットができないLPにとっても、良い選択肢になるのも利点です。

SECにもヘッジファンドとして登録しています。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1665350/000166535016000001/xslFormDX01/primary_doc.xml

・運用額:$59.5M
・投資数:45(リード11)
・Exit数:2
・代表的な投資先:Cloud Lending(レンディングプラットフォーム、Q2ebankingにM&A)、boomtrain(AIによるマーケティングの自動化、Zeta GlobalにM&A)

11. AngelList’s Syndicates + Maiden Lane

AngelListが取り組んでいるオンラインのVCファンドで、Angel Listのシンジケートに投資をしたり、プラットフォーム上のトップエンジェル投資家に資金提供するといった方式です。

一般的なVCがとっている管理手数料はとらず、そのかわりにキャリーの30%をとっている点でLPフレンドリー。また、資金提供したエンジェル投資家とはエンジェル投資家に20%、VCが10%とキャリーを分け合います。ステージはシードが7割を占めています。現在はAngel Fundsへと進化?を遂げているようです。

・運用額:$25M
・投資数:29
・Exit数:5
・代表的な投資先:Bedrock Data(複数のクラウドシステムの同期・管理SaaS、FormstackにM&A)

12. Redstone

サービスとしてのVC(VaaS)を掲げていて、企業の代わりにコーポレートベンチャーキャピタルを立ち上げて、ディールソーシングからディール実行、ポートフォリオ会社をサポートするといった運用まで行う方式を採用しています。サポートする各CVCにカスタマイズ性を持たせていて、企業が求める分野に特化することもできるようです。スタートアップに対しても、通常のVCの条件に基づいて、秘密の条項や特別な戦略的合意を求めないようになっています。

日本だとグローバル・ブレインがKDDIや三井不動産のCVCを運用していて、かなり近いですね。

・運用額:不明
・投資数:13(リード0)
・Exit数:0
・代表的な投資先:不明

なるほどと思ったモデルだったんですが、CVCのアウトソースって割とあるんですね。収益のとり方が異なるかもしれませんが。

13. Data Collective

主にシード・アーリーのビッグデータやITインフラ系などのディープテック領域の企業に投資するファンドで、特徴的なのは経験豊富なベンチャーキャピタリストと50名以上のテクノロジの専門家(CTO、CIO、チーフサイエンティストetc…)にキャリーを提供し、ポートフォリオ企業を支援するよう連携する”Equity Partner Model”を採用したことです。

簡単に言えば、上手くいったら利益を分配するからという条件で専門家をガッツリ味方に付けるみたいな感じです。専門家とのネットワークをウリにしてるVCは結構いますが、明確にインセンティブ設計をしてるのってどれくらいいるんですかね。

・運用額:$637M
・投資数:339(リード46)
・Exit数:48
・代表的な投資先:Square(モバイル決済、IPO)、Elastic(検索用のソフトウェア、IPO)、Uber(配車アプリ、ユニコーン)、Zoom(オンラインミーティングサービス、ユニコーン)

14. FundersClub

FundersClubは世界で初めてのオンラインベンチャーキャピタルプラットフォームです。会員になれば世界中のスタートアップに投資ができ、すべてオンラインで完結するようになっています。

投資対象のスタートアップのソーシングは、直接の紹介やY Combinator、First Round Capitalなどからの紹介によって行われます。そしてそのスタートアップがプラットフォームで投資を募ってよいかの投資検討を行い、審査対象になったスタートアップのうち2%以下のスタートアップがプラットフォームの利用が許可されます。

投資先にはソフトウェアやコミュニティへのアクセスを提供してサポートします。

ビジネスモデルは、一般的なVCと変わらず投資によって挙げた利益の一部を成功報酬として貰うのと、管理報酬を貰うというものです。

・運用額:$387M
・投資数:26
・Exit数:7
・代表的な投資先:GitLab(Gitリポジトリマネージャー、ユニコーン)、Coinbase(仮想通貨取引所、ユニコーン)、Instacart(地元の店からの食料品や生活必需品の配達、ユニコーン)、Slack(ビジネスチャットツール、ユニコーン)

15. The DAO

Ethereumで$163Mを集めて作られた自律分散型ベンチャーファンドです。

The DAOは、Ethereumブロックチェーンのスマートコントラクトを活用して、特定の管理者を無くして、全員で運営する組織です。参加するには、DAOの管理に関する重要な決定に投票することができるといった利点を持つDAOトークンを購入します(もしくはICO時点で投資)。そしてトークンホルダーによって選出されたキュレーターと呼ばれる人たちが、DAO保有者からの「このプロジェクト良いんじゃ?」という提案された投資候補の情報整理や精査、共有を行います。その後、DAO保有者で議論をし、最終的に投票をして多数決で可決されれば、投資実行となります。

この一連のプロセスにかかる期間は最低でも7週間はかかるそうです。

投資が決まると、DAOの保有割合に応じてReward Tokensが発行され、投資先のプロジェクトが上げた売上の一部をThe DAOが配当として受け取り、Reward Tokensの量に応じて分配されます。なのでThe DAOはプロジェクトが上げた売上から収益を得る配当モデルです。

しかし最終的には 、2016年6月にコードの脆弱性を突かれて、The DAOの資金の3分の1が盗まれまれてしまい、頓挫しました。

16. Correlation Ventures

彼らは資金調達ラウンドを完了させるための共同投資家というポジション(つまりリードはやらない)に特化していて、さらにその投資も分析を用いて2週間以内に投資決定をするというスタイルです。

実際にcrunchbaseを見ると200を超える投資を行っているにもかかわらず、リードは1件のみでした。シードとシリーズAが中心です。2017年に2号ファンドを作っているので、うまくいっているようです。

・運用額:$365M
・投資数:217
・Exit数:30
・代表的な投資先:Synthorx(癌や自己免疫疾患向けのバイオ医薬品、IPO)、Flex Pharma(けいれんの治療法を開発、IPO)

17. Kima Ventures

フランスとイスラエルのハイブリッドファームで、週に2〜3回の投資を行うスピード感で5年間で24カ国400社に投資するというスタイルです。このスタイルの背景には、スタートアップにとって資金調達はステップの1つにしか過ぎないため、素早い意思決定をして資金調達プロセスをなるべくスムーズに進めることで、起業家がビジネスの構築に専念できるようにした方が良いよねという起業家フレンドリーな考えがあります。

ステージはシードからシリーズAを中心に投資しています。

・運用額:不明
・投資数:491(リード22)
・Exit数:45
・代表的な投資先:Zenly(友だちや家族との位置情報共有アプリ、SnapにM&A、$213M)、TransferWise(海外送金サービス、ユニコーン)、Formlabs(3Dプリントシステムの開発、ユニコーン)

18. Andreessen Horowitz

こちら今更取り上げるまでもないですが、設立からわずか5年でトップ3のファームまで上り詰めた前例のないファンドがAndreessen Horowitzです。

この圧倒的パフォーマンスはMarc AndreessenとBen Horowitz自身の力もあるけど、VCモデルの再構築も影響としてデカイようです。彼らはHollywoodのタレント事務所を元にVCモデルを作り上げています。

100人以上いる従業員は、採用・顧客開拓のためのネットワーキングのチームからマーケティング、市場開発、コーポレート・デベロップメントなどそれぞれチームに分かれて投資先のバリューアップに貢献します。

また、ネットワーキングのチームはさらに2つに分かれていて、マネジメント層の人材の供給を担うチームとエンジニアやPM、デザイナーといった専門職の人材の供給を担うチームに分担されています。

さらに社内ツールも充実していて、パートナーレベルの人の人的ネットワークをツールに入れて社内で誰でも利用できたり、ソフトウェアによってスケールする仕組み作りをしています。

・運用額:$6.6B
・投資数:668(リード223)
・Exit数:103
・代表的な投資先:Groupon(共同購入型クーポンサイト、IPO)、Zynga(ソーシャルゲーム、IPO)、Instagram(写真共有アプリ、FacebookにM&A、$1B)、Pinterest(ピンボード風写真共有ウェブサイト、ユニコーン)、Slack(ビジネスチャットツール、ユニコーン)

19. Y Combinator

こちらも言わずもがなですね、みんな大好きY Combinator。年二回開催されるバッチにWebフォームから応募し、ビデオ審査も通ると、面接に呼ばれます。そこでYCのパートナーと10分間の面接を行って、見事通過すると3ヶ月のYCのバッチに参加することができ、7%放出の15万ドルの投資を受けます。あとはVCと連携して、YC卒業生全員に自動的に一定額投資するみたいなスキームも本で読みました。

バッチ中は週一の夕食会で他の参加者やグレアム等とコミュニケーションを取ったり、YC卒業生やエグゼクティブからのありがたい話を聞いたり、オフィスアワーでYCのパートナーに相談できたりします。参加者によると、YCが終わって悲しいのは週一の夕食会が無くなることだというくらいモチベーションの面で超イイそうです。

シェアオフィスに詰め込まれるといったこともなく、原則自由ですが、唯一の条件はシリコンバレーに住むことです。そして、3ヶ月ガッツリとプロダクトを磨いて、最後のデモデーに臨みます。デモデーにはVCや著名エンジェルが参加していて、多くのスタートアップがそこでファイナンスすることを狙います。

・運用額:$700M
・投資数:1994(リード343)
・Exit数:214
・代表的な投資先:Dropbox(オンラインストレージ、IPO)、Reddit(ソーシャルニュースサイト、Condé NastにM&A)、Airbnb(民泊サービス、ユニコーン)、Stripe(オンライン決済APIの提供、ユニコーン)、Docker(コンテナ型の仮想化環境構築のソフトウェアを提供、ユニコーン)、Coinbase(仮想通貨取引所、ユニコーン)

20. 500 Startups

元記事の筆者も「わざわざ挙げる必要もないが…」と前置きしつつも、取り上げているのが500 Startups。ファウンダーのDaveは「投資家は勝者を選ぶことができない」という考えから、投資の最善の方法は「多くの企業に投資し、よい企業にフォローオンすることである」と確信して、スタートアップ投資のhigh-frequency “index” modelを開拓しました。シリコンバレーでは反感を買ったようですが。

また、彼はこれからはユニコーンが世界中で誕生するという考えのもと、世界各地でローカルファンドや業種別ファンドを立ち上げていっています。

・運用額:$480M
・投資数:1913(リード206)
・Exit数:178
・代表的な投資先:Twilio(コミュニケーション手段組み込みのためのAPI提供、IPO)、Reddit(ソーシャルニュースサイト、Condé NastにM&A)、SendGrid(クラウドベースのメール配信サービス、IPO後Twilioに$3BでM&A)、Grab(東南アジアの配車アプリ、ユニコーン)、GitLab(Gitリポジトリマネージャー、ユニコーン)

21. SOSV

SOSVは領域特化のアクセラレータープログラムをいくつも運営するスタイルをとっており、ハードウェアからバイオやライフサイエンス、フード、モバイルなど計6つのプログラムがあります。こう使い分けることで、それぞれのプログラムに専門性のあるパートナーやスタッフを据えることができ、メンターやパートナー企業、先々のファイナンスなどもその領域に合わせたサポートを提供できる利点があるようです。

・運用額:$150M
・投資数:1270(リード771)
・Exit数:30
・代表的な投資先:Formlabs(3Dプリントシステムの開発、ユニコーン)、JUMP Bikes(電動自転車シェアリング、UberにM&A、$200M)

領域特化のアクセラレータープログラムはあるけど、それを並列していくつも運営するというスタイルって意外とないんじゃ?パフォーマンスは良いとはいえなさそうですが。

22. Entrepreneur First

英国(または海外)のトップ大学の若い人材にチームもない、アイディアもない段階から投資をして、共同創業者を見つけたり、アイディアを決めるといった会社の設立から支援する方式をとっています。6ヶ月のプログラムに応募してきた起業志望者に対して、専門的な才能があるかどうかを測り投資するかしないかを決めるといいます。現在ポートフォリオ全体で$1.5Bほどの企業価値があるそうです。

・運用額:$150M
・投資数:1270(リード771)
・Exit数:30
・代表的な投資先:Adbrain(マーケティング最適化ツール、The Trade DeskにM&A)、Magic Pony Technology(機械学習ベースのビジュアルプロセシングの開発、TwitterにM&A、$150M)

23. Bullpen Capital

Bullpenは、シードファンドの増加(当時はかなり革新的)とバブル後のレイターステージのVCの縮小によって、低価格のポストシードディールに大きなチャンスがあると考えました。

すなわち、シリーズAにはまだ届かないが、シードファイナンスは既に終えていてシードVCがブリッジできないスタートアップに対してのブリッジをするところにフォーカスしているということです。そしてこれは、かなりリスクが低いが、非常に安い企業に投資できるといいます。

すでに4号ファンドで$140Mを集めていて結果も出ているっぽいです。

・運用額:$253M
・投資数:87(リード31)
・Exit数:11
・代表的な投資先:FanDuel(架空のスポーツチームを作って競い合う、Paddy Power BetfairにM&A、ユニコーン)

24. SignalFire

ソフトウェアを活用しているVCで、採用支援のために世界のトップエンジニアを追跡してランク付けする独自の求人プラットフォームを構築したり、オンデマンドで専門家からアドバイスを貰えるネットワークのシステムや顧客や事業パートナー開拓を目的に企業と繋がれるようになっています。

ファンド自体にもエンジニアが8人くらいいます。

このSignalFireのソフトウェアがどの程度かは分かりませんが、a16zはじめがっつりソフトウェア活用してるVCはあるので特段目新しさは個人的には感じませんでした。

・運用額:$256M
・投資数:37(内リード18)
・Exit数:2
・代表的な投資先:Uber(配車アプリ、ユニコーン)、TextRecruit(採用ファネルを最適化するHRツール、iCIMSにM&A)

25. Deep Knowledge Ventures

このファンドは主にディープテック、AI、そしてライフサイエンスに投資していて、VITALというライフサイエンス分野の投資検証ツールを使用し、財務および科学データを分析することでパートナーおよび取締役会による投資決定をサポートする体制を敷いています。ほぼシードで投資をしています。

・運用額:$100M
・投資数:8(内リード3)
・Exit数:0
・代表的な投資先:不明

$100Mも運用しているのに8つ、しかもシードしか投資していない上に2017年9月を最後に投資をしていないっぽいです。謎…!

26. Foundry Group Next

自社ポートフォリオ及び他のレイターステージのディールへ参加することと、他VCファーム(ファンズ・オブ・ファンズ)への投資をする用に既存のファンドを拡張する形で作った模様。

27. Studios (Science, Expa, etc.)

特定のファンドではなく、施設から人材、事業アイディアまで全面的に支援するスタートアップスタジオのこと。新しいモデルではないが、ハイブリッドな事例が出てきているので革新的だといいます。面白いハイブリッドの1つはUberの共同創業者であるGarrett Campによって設立されたExpaで、これはスタジオでのプロジェクト活動とベンチャー投資およびアクセラレーションプログラムを組み合わせたものです。

運営メンバーはFoursquareの創業者Naveen SelvaduraiやGoogle、Linkedin、Twiterのエキスパートたち計25人前後で、スタートアップのプロジェクト支援をスタジオ方式で行っています。アクセラレータープログラムのExpa Labsでは、180日間のプログラムで20% $50Mの投資を受けることができます。起業家はプロジェクトを提案して応募し、採択されれば参加でき、Expaの全面支援のもと1つのアイディアに取り組みます。

・運用額:$150M
・投資数:25
・Exit数:0
・代表的な投資先:Uber(配車アプリ、ユニコーン)

28. Vertical Funds (Seraphim Space Fund, Rock Health, etc.)

こちらも特定のファンドではなく、1つの分野に絞って投資するファンド概念のことです。こうしたVerticalな領域特化型ファンドをやるなら絶対に市場規模が巨大である必要があり、その好例がデジタルヘルス領域に特化して25万ドルシード投資するRock Health(インキュベーターとして始まった)です。

・運用額:不明
・投資数:96(リード1)
・Exit数:13
・代表的な投資先:Wello(ビデオライブフィットネス、Weight Watchers InternationalにM&A)、1DocWay(患者が医師を予約したりビデオチャットできるサービス、GenoaにM&A)

最後に

ここまで読んでる人がいるのかという程に長くなってしまって、途中からしんどすぎました。1つでも「知らなかった」VCを知ってもらえたら満足です。(次からはもっとライトにします)

間違ってるよ!今はこう変わったよ!みたいなのあればぜひご教示ください。

Twitter:@yu8muraka3

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