『罪悪』(フェルディナント・フォン・シーラッハ)
Published in
2 min readFeb 20, 2015
渋谷の奥、以前済んでいたところの近所にある本屋SPBS(Shibuya Publishing & Book Sellers)で見つけた本。予想外の本に出会うには、シブパブくらいの規模でセンスよくセレクトされた書店が一番だと思う。
著者は ドイツの刑事弁護士で、ナチ党全国青少年最高指導者を祖父に持つという。まるで小説の主人公のようなプロフィールだが、実際にこの小説の語り手はシーラッハという名の弁護士である。
淡々と静かに語られる、なんでもない人たちが起こすとんでもない事件の数々。被告の弁護人として語る「私」による正義と悪の判断は周到に控えられている。冒頭に引用されている「物事をあるがままに」というアリストテレスの言葉が貫かれているのだ。
語られる事件がどんなにおぞましいものでも、読み手は犯人を「悪」として切り捨てることに逡巡させられる。正義と悪という概念の曖昧さ。”物事を簡単に済ませられない”ということを痛感させられる。
弁護士の方々に是非読んでもらいたい。タダジュンさんの装画も秀逸。