祖母と土用の丑の日

4niruddha
abt 4NIRUDDHA
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4 min readAug 4, 2013

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2013年8月4日、今年は2回あるうちの後半の土用の二の丑、の翌日。照りつける太陽の日差しに時折吹く風が心地よく、そんな夏風を縁取るように鳴る風鈴の音色が盛夏に彩りを与えて、その暑さを少し忘れさせてくれた。

今年の夏は前半の酷暑を過ぎた辺りで豪雨と雷雨が続いて、気温に落ち着きが見られて過ごし易いように思う。そんな日曜日の今日、大叔母さんの葬儀の少し後に、土用の丑の日になったら、いつもの鰻屋で鰻を食べようと約束した祖母との約束を果たしに青砥に向かった。

あいにく、土用の一の丑の日は仕事で土日を消化し、休む間もなく翌週も金曜からボランティアで石巻に行き土日を過ごしていたので、結局、二の丑あたりまで約束がのびのびになってしまっていた。

祖母とは3時頃に家に行く連絡をしていたので、今年の四月の花見に行った時に写真が撮れずに悔やんだ雪辱を晴らそうと、今回はしっかりゴールデン街のサーヤに忘れたカメラを持参して、また京成立石で降りた。

いつもは軽く一杯お酒を入れて写真を始めるのだけど、日曜日は立石の仲見世もお休みのお店が多いのをすっかり忘れていて、仕方ないので栄寿司で瓶ビールとお寿司で遅い昼食を取った。

この寿司屋も自分が子供の頃からあって、写真屋のお使いで買い物に来ていた祖母がさぼってお寿司を食べていたんだとよく笑いながら話してくれるお店だ。いくつかお寿司を摘んで店を後に写真をしに辺りを散策した。今度は宇ち多゛か鳥房や江戸っ子などに寄って写真をしたいな、などと思う。

写真をしていると、ついつい葉をつたう雫のように路地の裏へ裏へと滑り込むように足を運んで、夢中でシャッターをきってしまう。そうこうしていると、約束の時間が迫っていたので、少し早足で祖母の家へ急いだ。花冷えの春に来た時はモノクロームな印象を抱いていた道が、今日は夏の日差しと風のせいか、原色が濃く目に飛び込んでくるように思えた。

祖母の家に着くとクーラーと扇風機で涼しく冷えていて、冷たいおしぼりも用意してくれていて、額に浮かべていた汗が役目を終えたかのようにゆっくりと引いていった。

出してくれた缶ビールを二人でコップにつぎながら、しばらく近所の人の話などを聞きつつ、祖母の写真も何枚か撮った。スナップ写真ばかりやっているせいか、ポートレートのように向き合って撮る写真というよりかは、瞬間瞬間の写真になってしまって、ファインダーが無いカメラというのは被写体と物理的にも精神的にも境界線を生まないところが、良くも悪くもあるよなぁ、などと祖母の話に耳を傾けながら、ぼんやりと考えていた。

連日の疲れが溜まっていたのか、1時間半ほど話したら睡魔がやって来て30分ほど、仮眠を取らせてもらって目が覚めたら、夕飯にちょうど良い頃合いだったので、いよいよ二人していつもの鰻屋に行こうとなった。

最近は鰻が絶滅危惧種に入るか入らないかといった話が世間を賑わせているのだけれど、食文化というのはそんなにすぐには変えられないものだし、なかなか難しい問題だと感じる。鰻が自分の好物だというのもあるけど、祖母と二人で歩いて行ける店が鰻屋しかないので、そうした世情から一歩はずれたところに居るのでご勘弁を、などと妙な免罪符を心に秘めて鰻屋に向かった。

去年や今年の春と比べると、ずいぶんとしっかりした足取りで鰻屋への道を歩く祖母の姿を見て、幾分の安心感が得られた。聞けば、春の頃より体重が1kgほど増えたそうで、タンパク質とカルシウムを意識的に取った結果、足の筋肉なども多少もどったみたいで、食生活が大切なんだよと改めて諭したら「知ってるよぉ」と返してきたので、二人して笑った。

いつもの鰻屋に着いて、いつものようにうな重を二人前。お酒を1合頼んで二人してお通しの枝豆を摘みながら、ここの店は頼んでから捌いて焼くから美味しいんだよと教えてくれる様子を、また写真に撮った。

今回も注文した鰻をぺろりと平らげたのを見て安心し、この調子でたくさん栄養を付けてもらうよう、タンパク質が多めの食品で食べ易いものをいくつか教えてあげたりした。

鰻屋からの帰り道、二人で祖母の家のほうをぼんやりと見つつ、世間話をしていたら、遠くから盆踊りの祭囃子が聞こえてきた。夏が始まるようにも、終わるようにも、どちらとも取れるような囃子だった。

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