東大休学してブロックチェーン領域で修行した

Kosuke Ito
Aerial Partners
Published in
Sep 3, 2019

こんにちは。

Aerial Partners エンジニアの伊藤光佑です。

Aerial PartnersはWeb3時代のブラウザを発明することを掲げているブロックチェーン領域の企業です。現在は仮想通貨の税務、会計領域の課題を解決するために、Gtax、Guardianなどのサービスを提供しています。

僕は、8月末で、Aerial Partnersでの約1年間の休学、フルコミット期間を終了しました。

AWSも、JSONも、Gitもわからなかったレベルの自分がどうして休学してブロックチェーン企業で働くことにしたのか、休学してみてどうだったか、自らの振り返りも兼ねてまとめようと思います。

Aerial Partnersに入社するまで

昨年の4月に松江高専から東大工学部へ編入学し上京しました。工学部編入学生は最初は教養過程の授業を取る必要がありました。高専で学んだ専門分野についての学びを深めようと大学に来たはずだった僕は、特に意欲もなく第二外国語や人文科学系の授業を受けに学校へ行くのがかなり苦痛でした。

「50年後の飛行機アイデア大会」的な授業がある日の僕

サークル活動もいくつかやりましたが、思った以上に活動に熱心なところが多くて、その勢いに乗ることができませんでした。高専時代に自由な学生生活を謳歌し終えて、就職する道もあるなかで進学した身として、結構エンジニアとして頑張るつもりでいたことが理由だったと思います。授業にも、サークルにも、「頑張る」気持ちがフィットしないままの生活が続いていました。

要するにぼっちだった

そんな中、実はブロックチェーンにハマっていました。きっかけは、東大ブロックチェーンサークル「Bit Penguin」の方々と会ったことです。P2Pネットワーク上で独自の通貨をやりとりするオープンな送金プラットフォーム。これが既に世界中で動いていることに感動しました。Bitcoinのシンプルでイノベーティブな仕組みの美しさ、主体がないまま動き続ける有無を言わせない存在感に熱中しました。

Aerial Partnersへのジョイン

5月頃からブロックチェーン関係の会社でインターンしたいな〜と考えていました。一方で、2017年のICOバブルや、ブロックチェーンに対する過剰な期待の空気を知った僕は、ブロックチェーン技術を正しく捉えることの難しさを感じていました。ブロックチェーンはなんとなくすごいんだけど、自分がこの技術領域に打ち込むことで、社会にどんな利益が生まれるのかがわかりませんでした。

ブロックチェーン何もわからない僕

そんなとき、あるイベントでAerial Partnersの田中さんと一緒になり話をする機会がありました。ブロックチェーンがもたらしてくれる便益やそれによって変化する社会の今と未来について、深い知見や鋭い洞察を、僕のような初めてあった学生に教えてくださいました。そして後日、Aerial Partnersのオフィスへ遊びに行くことになりました。

Aerial Partnersはスタートしてから1年未満の、とても新しい会社でした。2017年の仮想通貨市場の拡大によって顕在化した仮想通貨取引の税務問題に取り組むベンチャー企業です。税務、会計の専門家とエンジニアの両方が社内にいる、専門性と技術を併せ持ったチームでした。世の中に生じている課題を解決し、実際に社会に利益を提供しているところに、魅力を感じました。

その時点で、僕は高専での授業や研究以外にほとんど開発経験がなく、ほぼ素人の状態だったのですが、幸運にもエンジニアインターンとして採用してもらえることになりました。

休学するまで

大学の授業が終わるまでは、週に15時間程度勤務していました。最初は、Laravelで社内用のWebアプリを作成して、Webエンジニアの基礎の基礎を学びました。本当にAWSも、JSONも、Gitもわからなかっただったので、最初はちんぷんかんぷんでした。

.envをpushしてしまったときの僕

自分がやりたかったことは大学の講義ではなくエンジニアとしての実務の世界にあることに、このときになって気が付きました。編入学して初めて、やりたいことができて楽しいと感じ、業務の方にのめり込みました。夏休みに入ってからは、平日は毎日出勤して社外向けのWebアプリの作成をしていました。

チームには本当にいろいろなメンバーがいて、一人ひとりがこのチームに入るまでのいきいきとした経歴を持っていました。大学に通っていたときに、どれだけ自分の視野が目の前のことに縛られていたかを痛感しました。

休学、1年間のフルコミットを決めた理由

当時、ブロックチェーンはハイプ・サイクルのピーク付近でした。ブロックチェーンが、長い時間をかけた成長を必要としている一方で、足元のトピックは急速に変わる状況でした。

2018年当時は「過度な期待」のピークの後半とされた 出典:ガートナー (2018年8月)

そんな状況下で、プレイヤーが短期と長期の視点を併せ持っていなければいけないこと。テクノロジーの社会実装には必ず制度や通念との摩擦が起きること。特定領域のNo.1にこだわることが最終的にはユーザーに最大の利益をもたらすこと。Aerial Partnersのこうした考え方や、今困っている人を助けるの精神に深く共感していました。

エンジニアとしても、小さな開発チームの中で、先輩から教えてもらいながら重要な案件を担当する経験ができる貴重な環境でした。

また、チームにとって、そこからの1年間は最も重要な期間と言えました。メインのプロダクトであるGtaxを成長させることが、次の確定申告期に多くの人を手助けすることにつながることは明白でした。自分にとって、先進技術と専門性が融合した領域での勝負の1年に加わることは、めったにないチャンスだと感じました。また、大学に通いながら小さなタスクのお手伝いをするのか、フルコミットの形でチャレンジの中心にいつづけるのかで、得られる経験に大きな差があると感じました。そこで、後期の授業が始まるタイミングから1年間、大学を休学してAerial Partnersでフルコミットすることを決めました。

Aerial Partnersのメンバー

休学中は学費もかからず、その後の大学生活で不利になることも特にないため、卒業が1年遅れること以外のデメリットはないと思います。普通の就活においても卒業より前に実務経験とエンジニアスキルを獲得できるのはアドバンテージでしかなく、休学をためらう理由はありませんでした。

休学期間の取り組み

夏休みの後半以降からは、Gtaxの開発に関わるようになりました。SPAの開発や、チーム開発、テストコードなど、新しいことにたくさん取り組みました。最初は1つの案件にかなり時間をかけてしまったり、コードレビューで多くの指摘をうけたりしていましたが、少しずつ開発のスピードが上がっていきました。
大規模なアプリケーションの開発を通じて、オブジェクト指向を実践することや、Readable なコードを書くことの重要性を理解するようになりました。技術、経済学、ブロックチェーンに関して、自分で勉強する時間もたくさん取れるようになりました。技術系の勉強会にも参加していましたが、日々の開発や個人的な勉強に多くの時間を使っていました。

いつも先輩エンジニアのとなりで開発していました

年末頃には、Gtaxのシステムのほぼ全てを把握していました。自分が中心となって追加した機能もいくつかありました。その後も、新UIへの刷新や損益計算の高速化など、Gtaxの大きな進歩に貢献することができました。休学して集中的に開発に取り組むことで、次々とチャンスが回ってきて、成長につながっていました

その後は、Go言語の導入や新サービス開発、ブロックチェーン領域におけるR&Dなどにも携わりました。開発業務以外でも、ブログの執筆、勉強会への登壇、Aerial Partnersチームでのブロックチェーンハッカソン参加などさまざまな活動をしていました。社内では、ブロックチェーンや経済、金融についていつも議論したり、社内勉強会を開いたりしていました。

社内での金融勉強会

1年間の休学で、エンジニアとしてのスキルを大きく伸ばすことができました。ブロックチェーンについても、自分の関心の中心を見定め、知見を深めることができました。

フルコミット期間を終えて

休学して、1つの会社での業務に集中する選択をして良かったなと感じています。去年の自分からは考えられないほどのスキルを身につけられましたし、Aerial Partnersの前進に貢献することができました。何より、1年間楽しいことの連続でした。社会に価値を生み出すために努力することの楽しさを知りました。大学に戻っても、以前とは違い、自分の目的ややりたいことを見失わずに過ごすことができると思います。一度離れてみて、アカデミックな場で学びたいこともはっきりしてきました。

Aerial Partnersは素晴らしいチームです。ブロックチェーンの社会基盤を作るという熱い使命感を持って、社会課題である仮想通貨の会計領域に取り組んでいます。ユーザーや他のメンバーを思いやる心を持ちながら、常に前進し続ける人たちが集まっています。このチームにお世話になって、本当に感謝しています。

今後について

数週間後に大学に復学しますが、今後やりたいことはたくさんあります。まず、仮想通貨の会計という前例のない複雑なドメインを扱っていて、DDDスキルや設計スキルをじっくり身につけたいと思うようになったので、まとまった時間が取れる今勉強したいと思っています。
また、自由貨幣や地域通貨について興味があるので、これについても調査、研究したいです。
今年立ち上げたTuringumのメンバーとしても、一層精力的にEnigmaの研究開発を行っていきたいです。

Aerial Partnersはまだまだ大きなチャレンジが続く段階で、これからもっと面白くなると思います。このタイミングで一旦離れてしまうのは残念ですが、もっといいエンジニアになって、最高の形で長期的にコミットしていきたいと考えています。

最後に

大学によっては、休学することは全く不利ではありません。ベンチャー企業でのフルコミット生活は自分だけの密度の濃い経験になるかもしれません。しかし、それぞれの会社が求めるもの、提供してくれるものと、自分がマッチするかは、場合によりけりだと思います。環境でなく、自分の中に成長の種を持つことが重要だと思います

ブロックチェーンは面白いです。10人に語らせると10人が違うことを言うような、先のわからないカオスな領域ではありますが、その多様性こそが急速な成長の理由でもあると思います。高専の後輩を含めて、もっと色んな人に面白さを知ってもらいたいなと思っています。

Aerial Partnersはインターン、正社員含めてエンジニアを絶賛募集しています。インターンはお試しからという選択もあるので、気になったらぜひご連絡ください。

--

--

Kosuke Ito
Aerial Partners

Blockchain and Web Engineer. I like Go, Rust, Laravel, Vue.js, Bitcoin and Enigma. Cryptocurrency accounting at Aerial Partnres. Student of University of Tokyo