ビットコインとイーサリアムの現在地は?

何が同じで何が違うのか整理してみた

Ryo Tanaka
Aerial Partners
8 min readJan 5, 2019

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Photo by Bruno Martins on Unsplash

こんにちは。Aerial Partnersで事業開発をしている田中です。

ブロックチェーンの中でも最も注目されているのがビットコイン、イーサリアムであることは誰も異論がないはずです。

日本では、イーサリアムのコミュニティが大きい一方、ビットコインを中心に見ている人は多くない印象を受けます。

僕としては、ビットコインの注目度はもっと上がって良いと思っていて、そのためにビットコインとイーサリアムの現在地を整理しつつ、それぞれの関係についてもみていこうと思います。

よくある疑問に沿ってみていきます。

そもそもビットコインとイーサリアムって何を目指しているんだろう?

ものすごく単純化して簡単にいえば、目指すところの違いはこんなイメージです。

  • ビットコインは、銀行システムの非効率性、脆弱性を解決するもの。通貨支払いのプラットフォーム
  • イーサリアムは、ネット企業に情報が集中するシステムの非効率性、脆弱性を解決するもの。通貨以外にもありとあらゆるプログラムを誰でも実行できるプラットフォーム。ワールドコンピューターを目指します(ただし道半ばです)

ビットコインとイーサリアムのそれぞれの進捗どうですか?

ものすごくざっくりと、それぞれの進捗をみていきます。

  • ビットコインは、2009年に動き始めた瞬間から、銀行システムの非効率性や脆弱性を解決するための機能を備えていました。つまり、生まれたときからお金の支払いについて分散合意するシステムとして基本機能が完成していたわけです。ライトニングネットワークなどの技術進歩に伴って、これから多くの取引をさばけるようにネットワークが拡大していくに従って、解決できる幅が広がっていきます。2019年以降2,3年間でさばける取引量が爆発的に増えていくと予想しています。
  • イーサリアムは、2015年に動き始めた瞬間はまだ実験段階で、2018年時点でもまだごく簡単なプログラムしか実行できない状態です(正確には難しいプログラムも実行できるのですが、実行のための手数料が高すぎたり計算に時間がかかりすぎて事実上できない状態)。イーサリアムは、計算機で解けるあらゆる問題を中間者なく処理できる「ワールドコンピューター」を目指しています。その理想が高い分、実現への道のりは長くなると考えるべきでしょう。まだまだコンピュータ(=計算機)としての処理能力が高くないイーサリアムですが、ICOとかクリプトキティ(イーサリアム上で猫を交配して自分だけの猫を育成するゲーム)、DAI(ドルの価値に連動するコインを発行できるもの)のようなアプリケーション)は既に存在しています。つまり、計算処理が多くなるアプリケーションは全然使えないけど、計算処理が少ないアプリケーションなら、現時点でも十分に実用レベルと言えます今後数年スパンで、プラズマやシャーディングといった技術進歩に伴ってイーサリアムもネットワークが拡大し、コンピュータとしての性能が向上していきます。実行できるアプリケーションが爆発的に増えていくでしょう。

イーサリアムの方が幅広いなら、ビットコインいらないんじゃない?

いいえ、ビットコインは必要です。理由としては次のように考えられます。

  • お金として見たとき、ビットコインには発行上限があるため希少であり絶対的な価値がある。この世にいる人類70億人に2,100万BTCを平等に分配すると0.0028BTCしかないって知ったら、1BTCには相当な価値があると思いませんか?ビットコインは価値を保存しておくことに非常に向いているお金です。
  • ETHは発行上限が現状では存在せず、年7%程度インフレするため保有通貨の価値は下がります。
  • また、ETHは通貨ではなく、ネットワークを動かす燃料のようなものと説明されています。ETHはイーサリアム・ネットワークを維持するための税金のようなものと考えたいところです。
  • もちろん、ETHも燃料になる以上、その価値があると考えられます。ただし、純粋にお金としてはビットコインのほうが価値保存に特化した機能を備えています。
https://www.ethereum.org/ether

ビットコインとイーサリアムによって社会はなにが変わるんでしょうか?

ビットコインやイーサリアムだけではなく、いろんなブロックチェーン技術が新たな分散合意できる仕組みとして社会に根付くことにより、社会的な合意形成コストを下げるんだと思います。この点は、ビットコイン、イーサリアムともに同じ方向を目指しています。

人間同士が合意形成するより、暗号学的に安全なかたちで、プログラムによる合意形成をしたほうが効率的ですよね?

例えば、賄賂が横行している国を思い浮かべてください。

土地の所有権を登記しようと思うとき、通貨の発行スケジュールを決めるとき、政府・中央銀行とビットコインとで、どちらのほうが効率的でしょうか?政府・中央銀行制度を維持するために膨大な公務員コストが発生し、議論のために多大なコストが費やされます。さらに、議論は人間が行うものなので、一貫性に欠け、人々が予測できないという社会コストも発生します。その点、ビットコインは通貨発行量が事前にプログラミングされているので、議論は不要です。ビットコインはマイニングによるエネルギーコストを犠牲にして、社会的な合意形成コストを低減しているのです。

ここで注意したいのが、ブロックチェーンが削減する社会コストはとても大きなものですが、ブロックチェーンこれまでの中央集権的システム全てを置き換えるものではないということです。今までのシステムを破壊するものではなく、選択肢を与えてくれるものになるでしょう。

人間が運営する中央集権的システムと分散システムはグラデーションで併存するかたちが一番自然と思います。

例えば、チャットやメールでいいのに、今でも手紙が存在しますよね?車が登場しても乗馬は趣味として残ります。同様に、銀行システムもビットコインなどブロックチェーンが提供するシステムと並行して残っていくでしょう。ただし、銀行の影響力はだんだんと小さくなっていきます。

ビットコインとイーサリアムがつくる未来

ここまで現在地をみてきましたが、ちょっとだけ未来のことに触れます。

グーグルには、Don't be evil(悪いことはするな) という行動規範があります。影響力が大きいので、悪さを働くとそのマイナス効果も大きいわけです。事前に利用者と合意した内容を後からひっくり返すことだってできます。

これに対し、ビットコインやイーサリアムのつくる未来像はちょっと違っています。Can't be evil(悪いことはできない) というところでしょうか。暗号学の裏付けをもとに、みんなで納得できるようにシステムでの合意を行っているので、誰も後からひっくり返すことができない。

インターネット企業が悪いことをするかしないかを選択できるかたちでは、第三者であるグーグルのような企業を信頼しなくてはなりません。「第三者」とは人間なので、ときに間違えたり裏切ることもあります。しかし、「数学と暗号学によるシステム」であれば、裏切ったり間違えることがありません。つまり「悪いことはできない」ことになります。

こうした未来をビットコインとイーサリアムは目指しているのです。目指す未来の方向性は同じですね。

最後に

ブロックチェーン業界では、それぞれが違った問題意識を持っているので、人によって注目するブロックチェーンが異なります。そのため、ブロックチェーン間の役割の違いや共通点を整理することは重要になります。

Aerial Partnersでは、ブロックチェーン業界全体を俯瞰して、足りないピースをはめていきながら、ブロックチェーンの社会実装を目指しています。

Aerialのメンバーと一緒に話してみたい、ブロックチェーン技術の社会実装に興味がある、という方はぜひ一度私たちとお話しにオフィスまで遊びに来てください!

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Ryo Tanaka
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