なぜビットコインの最大の課題はプライバシーなのか?

Ryo Tanaka
Aerial Partners
Published in
6 min readJan 9, 2019
Photo by Bernard Hermant on Unsplash

ビットコインには3つの大きな課題があります。

① スケーラビリティ

② ユーザ体験

③ プライバシー

① スケーラビリティとは、たくさんの取引量をさばけない問題。Visaが秒間5万取引さばけるのに対して、ビットコインは秒間6,7取引ほど。多くの取引が集中すると手数料が高騰します。世間では、これが最大の課題として語られることが多いようです。この課題の解決策として、ビットコインのブロックチェーン上にもう一つレイヤーをつくり、高速・極小手数料を実現するLightning Network(ライトニング・ネットワーク)という技術が実装され、利用が拡大しています。ライトニング上ではVisaのように取引を検閲しないので正確な数値は不明ですが、秒間10–50万取引ほど処理できるといわれています。

② ユーザ体験に関しては「使いにくい」という一言につきます。 一般ユーザにとって、中央集権的な取引所なしでビットコインを使うのは非常に難しい。自分でビットコインを管理して使う場合、ハードウェアウォレットを管理したり、秘密鍵を紙に書いて保存したり、非常なストレスが発生します。一般人が使うにはまだ早すぎるように思えます。

③ プライバシーに関しては、取引に使用したアドレスから、その人の資産状況や使用状況が丸見えになってしまう問題があります。実はこれが最大の課題なんです。①②は、今の延長線上で順調に開発が進んでいけば必ず解決できる課題です。しかし、取引が丸見えな仕様になってる現状は非常にまずい。ビットコインの仕様自体に関わるものなので、ハードフォークも必要になってきます。今熱心に議論・開発されている部分です。

ビットコインは取引が丸見え

ビットコインでは、全ての取引を全員で検証することで改ざんを防いでいます。その性質上、他人の取引まで丸見えになってしまうという弱点があります。

こうした弱点を補うため、ウォレットなどビットコイン外のサービスがプライバシーを高める取組をしています。しかし、アプリケーションレイヤーでプライバシーを高めても、グーグルやアップルをはじめとした、ネットの支配者に検閲され潰されてしまうことがあります。 現に、GooglePlayが、プライバシーの高さに定評のあるサムライウォレットに秘匿系の機能を外させるというニュースがありました。

侍ウォレットでは、様々なプライバシー機能が標準仕様となっています。ビットコインの最大の弱点プライバシーを高めてくれる貴重なウォレットなのに残念なことです。 やはりプライバシーはプロトコル自体で高めないといけません。

今は普通の個人がプライバシーを守ってビットコインを使う選択肢は事実上ないといえるでしょう。 だから、プライバシーは重要なのです。個人に選択肢をもたらすためのテクノロジーとして重要なんです。何度でも言います。

とはいっても、俺には関係ないもんねというあなた

プライバシーが重要な理由として、たとえば家賃を支払うとき。アドレスから大家さんに資産状況が丸見えになります。意外と持ってるね〜と家賃が上げられちゃうかもしれません。大家さんはいい人でも、もし、店舗決済時にアドレスが悪い人に知られてしまい、誘拐などの犯罪に巻き込まれる危険も考えられます。

もし現金を使うとき、支払い相手に自分の口座情報が丸見えになるとしたら、気軽に現金をつかえませんよね?現金にはプライバシーがあるのです。日常的に使われるお金にプライバシーがあるのは、わたしたちにとってあたり前のことなのです。

丸見えでも気にしない人もいるかもいると思いますが、気にする人もいます。 同じ人でも、プライバシーを気にしない場面もあれば、気にする場面もあります。プライバシーを求めない人もいていいし、プライバシーを求める人もいていい。 両方とも自分で決められる「選択肢があること」が豊かさであり、お金としての絶対条件だと思うのです。

ビットコインが日常的に使われるためには、プライバシーを守る選択肢が必要不可欠なのです。

プライバシーに関しては、基本は秘匿できて、必要に応じて自分でオープンにできる仕組みが望ましい。 ビットコインのプロトコル自体に組み込まれるべきでしょう。

プライバシーを高める取組

ビットコインのファーストレイヤーでは、ダンデライオン、シュノア署名といったプライバシーを高める技術の開発が進められてます。 また、サイドチェーンのリキッドでは、秘匿トランザクションが標準仕様となってます。

ビットコイン以外の新しい取組として、MimbleWimble(ミンブル・ウィンブル)という、ビットコインに似たブロックチェーンGrinとBeamが2019年の早期に始まります。プライバシーが標準装備された取組なだけに、注目しています。

MimbleWimbleの解説をAerialのエンジニアが書いてます。 夜な夜な、オフィスでホワイトボード相手に難しい数式を解きながら書いていた記事(笑)数ある技術の中でも特に難しいらしい。 数学得意な方はぜひ挑戦してみてください。 https://vitocchi-tech.hatenablog.com/entry/2019/01/09/015200

プライバシーを高めるためには、ハードフォークも含めた大幅なビットコインプロトコルの変更が必要です。そのために慎重に議論が進んでいます。しかし、技術は着実に進歩しており、10年や20年の単位で見たとき、プライバシーの課題は解決可能なはずです。

ビットコインの最大の課題、プライバシー。そのための取組はもうすでに始まっています。日本のクリプトコミュニティでも、プライバシーに関する議論が盛り上がることを期待しています。

Aerial Partnersでは、クリプトユーザーの安全な資産管理をサポートし、ブロックチェーンの社会実装を目指しています。

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