今、パートナーとは

Shelly
afterwecameback
Published in
Jun 24, 2023

パートナーという関係のあり方について考える。そんな私の卒業プロジェクトを進めるにあたってインタビュイーとなってくれた方々たちは、23歳である筆者の親くらいの年齢で、スイスに住む女性たちである。スイスに住み始めて20-30年以上がたち子供たちも成人になりはじめた今、彼女たちは皆、これからの生活をどのように過ごすか、その時パートナーとの関係をどうしたいかを改めて考える時期にきているようだった。

スイス人パートナーと結婚して長年連れ添い、2人の大学生の子供がいる女性は、家族に「もう少しみんなが大きくなったらママ日本に帰るかも」と伝えている。スイス生活にも慣れて特に困難なことがあるわけではないものの、「老後は自分の母国語が通じる場所で暮らしたい」という。女性のパートナーは「老後は二人で老人ホームに入る」というのをイメージしているようだが、彼女にとっては、自分の母国語が全く通じない環境で色々な人と集団生活を送る、誰かにお世話されるというのは居心地の良いものではない。加えて、子供がいなくなって、パートナーとの二人で話してコミュニケーションをする時間が多くなることを考えると、「パートナーにも日本語を喋ってほしい」という気持ちにもなるようだ。現在、スイスのドイツ語圏に住む彼女らは、二者間での会話をドイツ語で行っている。女性は「スイスでの生活がしやすくなるように」とドイツ語を習得する環境を作ってくれたパートナーに感謝をしているものの、子供たちが家からいなくなると同時に「日本語を話す」という家庭環境がなくなってしまうことを心配している。スイスの老人ホームのニュースをパートナーと見ながら、「せめてあなたが日本語を話してくれないと、本当に日本に帰るからね」と伝えたこともある彼女だったが、パートナーが本気に捉えているかはわからないという。

もう一人の女性には、10年続いているパートナーがいる。彼女もそのパートナーも、それぞれ別に、前のパートナーとの間の子供と暮らしている。お互いの家庭の事情を踏まえると結婚をすることは現実的ではないものの、「この人の妻になって死んでも良いかも」と思うことがあるらしい。「尊敬している人だし、その人の最後のパートナーとなる証として結婚するのは良いかも。名誉みたいな感じ?」しかしやはり、今までの過去のパートナーたちと何度か送ってきた結婚生活や同棲生活の経験を振り返り、お互いに打ち込んでいる仕事や活動のことを考えると、「今の距離感がちょうどいい。あまり近すぎないからこそ仲良くいられるのかも。」という気持ちに落ち着くという。

そして、スイスの綺麗な山の近くに住む女性は、長年夫婦として暮らすパートナーと心理カウンセリングを受けながら、自分たちなりの夫婦という関係を定義しなおしている最中である。子供達が家を出ていき2人で過ごす時間が増えるなかで、お互いが考える関係のあり方の相違がで始めた。別々に暮らしてみたりカウンセリングを受けたりする中で、二人の関係自体だけではなく自身の今までの人生や考え方・気持ちを振り返ったことによって、やはり両者とも「一緒にいてホッとする」ということに気づいたという。

子供を育てることへの責任をはじめとして、親族からの期待や、世間からの目線、生まれとは違う国で暮らすことの苦労や制約、仕事への向き合い方など、今まで人生を構成してきたことが無くなったり形を変えたりしている。その中で彼女たちは、未来の生活を想像したり、過去の関係を振り返ったり、自分の内面を見つめ直すことで、自分とパートナーとの関係について改めて考えている。そんな新たな人生のフェーズが訪れているかもしれない時期に、今私は話を聞かせてもらっている。

--

--