医療領域での人工知能の活用と課題
東大発ベンチャーL Pixelさんのイベントが楽しかったので報告します
L Pixelさん主催、人工知能エンジニアMeetup 医療ビッグデータの活用 がとても面白かったので内容シェアします。
L Pixelとは?
東京大学発のベンチャーで、
ディープラーニングによる高度な画像解析を医療分野に応用しています。
具体的には、
脳のCTスキャン画像解析から脳腫瘍を見つける精度をアップしたり、
放射線治療の処置後の効果測定を効果的に行うなどの活用がされています。
私は当初、
”医師の診断プロセスを人工知能で自動化する=AI自動診断で医師をいらなくする”ことも可能なのかと思っていたのですが、
勘違いでした。
自動化すると、
誤診して例えば患者が死んだ時誰が責任を取るのか、
という倫理的な問題になりますし、
そもそも医師は免許業なので、
医師免許を持っていない人工知能が診断することが許可される事は法的にありません。
人工知能による自動診断は違法なのです。
L Pixelさんの事例を通じて私も理解できましたが、
医療 x 人工知能 のあるべき活用は、
“医師の診断プロセスを楽にしてあげるアシスタントツール”であったり、
“医師の診断精度をアップさせ人の命を救うツール”であるべきなのです。
L Pixelさんの脳のCTスキャン画像解析により、
医師の診断にかかる時間は1/100になりました。
言葉を変えれば同じ時間で100倍丁寧に診断することが可能になりました。
画像解析による脳腫瘍の正解率は95%です。
凄い精度です。
これは正にイノベーションだと思います。
具体的には、
人間の顔写真を何枚もディープラーニングにかけ、
その中で眼を特定する技術に似た技術で、
脳の写真の中での腫瘍の特徴を見つけ出し、
類似の症例を医師に見せる事で、
医師の診断クオリティを上げることに成功しています。
今までは職人技というか、
医師の記憶と経験に頼り脳腫瘍かそうでないかを見分けていた訳ですが、
圧倒的に多いデータを蓄積・分析するのは人工知能の方が得意なので、
最終的な判断は医師がするにしても、
クオリティの高い判断材料を瞬時に提供することができるのです。
実用にあたり、
人間のCTは患者が動いて画像が斜めになったりするので、
高度な数学理論を使い斜めから縦に補正しながら画像を重ね合わせて行く、
といった技術が使われていました。
頭部の動脈を解析し、
3D表現するためにゲームによく使われているUnityも活用されていました。
明らかに人命を救っているL Pixelさん、
インターンもミッションに共感した数学や物理の優秀な東大生が集まっており、
とても羨ましかったです。
包括的医療ビッグデータの必要性
セミナー後半で感銘を受けたのが、
米国を経験された馬込先生の問題提起でした。
・馬込 大貴 氏
九州大学大学院博士(保健学)。日本学術振興会特別研究員PDとして東京大学医学部附属病院、ミネソタ大学にてTotal Marrow Irradiationの臨床治験に従事。2016年4月より駒澤大学医療健康科学部講師。資格は、医学物理士、診療放射線技師等。研究分野は、コンピュータ支援放射線治療システム開発。
提起された課題:
大規模な質の高い包括的医療ビッグデータが、
今後の医療業界への人工知能活用に必須となるが、
日本ではまだまだ公開データが少ない。
米国オバマ政権はすでにこの重要性に気づき、
200億円の予算を投下し国を挙げて医療ビッグデータを公開している。
Cancer Genome Atlas : がん患者のDNAデータベース
DNA(ゲノム)と画像のミックス領域はほとんど未着手
ICTMI: 医療ビッグデータの国際会議
TCIA: The Cancer Imaging Archive がん画像のデータベース
この様な分野は、
Panomics Medical Data(全分野の医療データ統合)と言われ、
しっかり解析に役立てるために非常に重要である。
逆に言えば、
データに抜けがあると人工知能の精度が中途半端になり、
医療に役立たなくなる。
日本でよくある問題としては、
電子カルテと各診療科のデータベースが別管理になっている点。
例えば胃のCTスキャン画像があっても、
前後の患者の体調カルテと紐つけられなければ関連性を見つけにくい。
医療カルテのテキスト解析(抽出と活用)による診断精度向上は日本では未着手分野。
また、医療の現場の方々が部外者である人工知能エンジニアを拒絶する場面も日常的に起きている。
次回イベント
ということで、大変勉強になったL Pixelさんセミナーでした。
次回9/23開催は既に枠がいっぱいになっていますが、
増枠もあると思うので申し込みをお勧めします!
追伸:Team AIでは人工知能専門に受託開発を承ります。
いまなら無料で御社のビジネスに効く人工知能技術コンサルティング致しますので、
是非dai@jenio.coまでご連絡ください。