ABEJAの壮大な人工知能プラットフォーム構想
“医療の未来を切り拓く人工知能ディープラーニング”セミナーにて
ABEJA創業者・岡田社長のお話を直接お伺いする機会があり、
私自身ABEJAを小売店舗分析の会社だと勘違いしていたことが分かりました。
確かに今ABEJAは三越伊勢丹グループなどと小売店舗の分析をしています。
ただ、それは壮大なABEJA Platform構想の一端にすぎず、
全産業を取り込むPlatform As a Service(=PaaS)が目標でありました。
PaaSとは?
SaaS: ブラウザ上で動くソフトウエアやWebサービスの事で、現状表に出ているABEJAの小売向けソリューション(Retail Platform)がこれに当たります。
PaaSの上に乗っているのがSaaSなので、
SaaSを今後増やしていくのがABEJAの計画になります。
PaaS: Google App Engine/Microsoft Azureなどが持っている共通基盤がこれにあたります。ABEJAのメインビジネスとなるABEJA Platform(データベースシステム)はPaaSであり、ABEJAのクライアントは月額定額と従量課金でプラットフォーム使用量を支払います。
PaaSは、INPUT => BIG DATA POOL => AI => BIG DATA POOL => OUTPUTの様に使用します。
IaaS: インフラをサービスとして提供する場合の名称です。仮想マシン、仮想OSを提供し、Amazon EC2などがこれにあたります。
ABEJA Platformの何がすごいのか?
小売系のプロジェクトで使われている様に、
動画のディープラーニングのテクノロジーが進んでいます。
高性能なため、ハイスペック計算機であるGPUが必要なく、
一般のPCに使われているCPUで動きます。
これにより、小売店の動画解析コストは以前は数千万円かかりましたが、
ABEJAは初期費用ゼロで導入できる様になりました。
最新の世界の論文をキャッチアップし、
処理速度改善にかなりの力を入れて取り組んでいます。
売上予測など、未来予測シュミレーションもリアルタイムフィードバックを元に進んでいるので、分単位で予算実績管理ができ、
異常値が発生している時はそこがトリガーとなり、
マーケティングオートメーションにつながっています。
自動で、ソーシャルメディアに投稿したり、Emailを送ったり、
物流を動かしたり、プッシュ通知を行ったりして、
そのループがどんどん賢くなり小売店の売上を最大化させます。
すでに製造業向けプラットフォーム(ABEJA Platform for manufacture)の導入として、DAIKINとの協業がスタート。
このエアコンそろそろ壊れるよね、
みたいな予測分析が顧客体験の向上に役立っています。
私が共感したのは、
こういった壮大なPaaS構想がありつつも、
人工知能先行では顧客への提供価値と関係なくなってしまうので、
お客様が何を欲しいのかを徹底的に起点にしている点です。
ですので、あくまで表向き、小売店舗分析が前面に出ています。
今後のABEJAの注力点
1.周辺のエコスシテムとAPI連携
IoT等の場合、APIの処理が遅延すると意味がないので、
周辺プレイヤーのパフォーマンスが上がるようカスタマイズして連携を深めていくとのこと。
2.プラットフォームとしてのパフォーマンス改善
日進月歩のディープラーニングでは、
近年アルゴリズム優勢度はあまり差がつかなくなっています。
例えばホモトピーテクノロジーをディープラーニングと掛け合わせる事で、
速度が100万倍速くなるといった事象が起きており。
こういった”ディープラーニングの、その先”に着手することで、
他社に圧倒的な差をつけることが目標です。
これは海外の最先端の論文をリサーチしないとできない点です。
3.ビジネス開発
各産業への応用を増やしていく。
事例情報提供を求められたり、
保証できないディープラーニングの成功確率をコミットさせられる様なクライアントは断っているそうです。
これは正にPaaSだから起こっている現象で、
ABEJA Platformを”使いこなせる”クライアントが現在は限られているという事かと思いますが、これはディープラーニングの仕組みを使いこなせるという事と同義なのである程度当然だと思います。
ABEJA for Retail, ABEJA for Manufacturer に続く、
ABEJA for X(各産業)のSaaS型ソリューションになれば非ITのユーザーも使えるようになると思いますので、
次の産業への応用例が楽しみです。
岡田社長の素晴らしいプレゼンテーションを聞いて、
今後のABEJAから目が離せないと思いました。