Microsoft vs Amazon のAI特許戦略分析

米国大企業の知的財産の中身を分析しました

前回のGoogle vs Facebookの特許分析に続き、

今回はMicrosoft vs Amazonを分析します。

仮説としては、Azure vs AWSで戦っているのでAI特許上も権利の取り合いになっているのかと思いましたが、

Microsoft vs Amazon に限った話でもなく、

Google Facebook IBM等も意識した特許ポートフォリオになっていると思いました。

Microsoftの事例(年間300件ペースで出願)

Search engine results system using entity density

一言で:対象の密度を利用し検索エンジンの結果表示システム

Abstract: 結果の一貫性を向上させることにより、検索エンジンが検索結果(たとえば、質問 — 回答)に対するユーザーの期待を満たすことを可能にするアーキテクチャ。 これは、大多数のケースでシステムがより多くの質問に答えることができないか、同じクエリークラス内の顕著なクエリーを知ることができない場合に、クエリーに応答することを拒否することによって達成されます。 一貫性を実現するために、クエリはクラスに分類され、次に特定のクラスのクエリがセグメント化されます。

石井コメント:BingおよびMicrosoftの各ビジネスに活用できるとともに、Googleへの牽制になっています。

Automatic recognition of entities in media-captured events

一言で;動画イベントから抽出された対象の自動認識

Abstract: 認識プロセスを使用して、ライブブロードキャスト(例えば、ライブイベントのストリーミングコンテンツ)およびライブ以外のプレゼンテーション(例えば、映画)における人およびコンテンツなどのエンティティの識別をリアルタイムで可能にするアーキテクチャ。 これは、ライブイベントに関連するライブデータを抽出することによって達成することができる。 人々のエンティティに関して、抽出されたライブデータから名前付き(人物)エンティティを識別し、発見された動向のトピックをフィルタリングすることができます。

石井コメント:YoutubeやAmazon Primeへの牽制になっています。ベンチャーではHULUなど影響を受けるでしょう。

Context-sensitive content recommendation using enterprise search and public search

一言で;法人検索と個人検索を利用した文脈を加味したコンテンツレコメンド

Abstract: 内部ネットワークやパブリックネットワーク(検索エンジン)からパーソナライズされた関連文書を推薦(示唆)して、ユーザーが現在作業中の文書を完成/更新するのを助けるアーキテクチャ。 アーキテクチャはクエリを抽出し、コンテキストを使用して検索を実行し、ドキュメントのテキスト全体を使用して関連性を向上させる編集アプリケーション内から検索を実行します。 ユーザーコンテキストとテキスト/セッションコンテキストが検索に使用されます。

Speech recognition using a foreign word grammar

一言で:外国語の文法を利用した音声認識

Abstract: システムおよび方法は、部分的に外国語である音声を認識するために利用される。 このシステムおよび方法は、ユーザからの音声入力を受け取り、外国語を利用する規則または文入力文法構造が発話されたかどうかを検出する。 外国語を認識するために、外国語の文法が利用される。 外国語文法は、発話された外国語を認識するための規則を含む。 2つの規則は、各正当な理由のために外国語の文法に含まれてもよい。

石井コメント:かなりGoogle翻訳への牽制を意識しています。Microsoft GroupのSkypeには音声同時通訳が組み込まれています。かなり汎用的なので、世界中のベンチャーへの牽制にもなっています。

Amazonの事例(年間500件ペースで出願)

Networked robotic manipulators

一言で;ネットワーク化されたロボットの操作システム

Abstract: ロボットマニピュレータを使用して物体を操作することができる。 オブジェクトに対して実行される操作に関する操作データを生成してアクセスすることができる。 このデータは、オブジェクトがどのように操作されるかを示すプロファイルを生成するために分析されてもよい。 プロファイルの一部は、特定のロボットマニピュレータに送信することができる。 例えば、その部分は、ロボットマニピュレータの操作能力に基づくことができる。 次に、ロボットマニピュレータは、プロファイルの一部を使用してオブジェクトを操作することができる。

石井コメント:Industry4.0の提唱者であるドイツのSIEMENSへの牽制になっています。FUNACなど日本の産業用ロボット各社も影響を受けそうです。Amazonがロボット領域(もともと物流効率化目的)にかなり本気で取り組んでいることが伺えます。

Video segmentation techniques

一言で:ビデオの自動セグメントシステム

Abstract: ビデオセグメント化システムを利用して、デジタルビデオコンテンツのセグメント化を自動化することができる。 ビデオのビジュアル、オーディオ、および/またはテキストコンテンツに対応する機能は、ビデオのフレームから抽出できます。 隣接するフレームの抽出された特徴は、急激な遷移によって区別されるショットまたはビデオセグメントの第1の集合の境界を決定するために、類似性の尺度に従って比較される。 第1のショットセットは、ヒューリスティックに従って分析され、徐々に遷移することによって区別される第2のショットセットを認識する。 キーフレームは、第1および第2のショットセットから抽出することができ、キーフレームは、ビデオセグメンテーションシステムによって、シーンごとに第1および第2のショットセットをグループ化するために使用することができる。 俳優の名前または歌のタイトルなどのメタデータを、検出されたシーンに関連付けるために、追加の処理を実行することができる。

石井コメント:Amazon Primeの同業であるHULUやYoutubeへの牽制となっていますし、最近出てきた動画分析手法に先手を打つ形で非常にタイミングが良いと思いました。

Color name generation from images and color palettes

一言で:画像や色のパターンから、テキストとしての色の名前を生成する技術

Abstract: 画像および/またはパレットに対応する色の色名を生成するシステムおよび方法が提供される。カラー画像が得られ、カラー画像に対応する1つ以上のカラーパレットが識別される。カラーパレットはパレット生成基準に基づいて生成することができ、パレット生成処理を容易にするか、または制御することができる。例示的に、パレット生成プロセスは、画像前処理、色分布生成、代表色識別、パレット候補生成、及びパレット決定を含むことができる。カラーパレットおよび/またはカラー画像で識別された各カラーのカラー名は、カラー名人気情報に少なくとも部分的に基づいて識別することができる。色名人気情報は、ソーシャルネットワークサイトによって提供される色名関連の投票結果から特定することができる。本開示の態様はさらに、元のカラー画像および/またはカラーパレットに関連するカラー名メタデータを更新するなど、識別されたカラー名を処理することに関する。

石井コメント:GANをはじめとした生成AI技術が出てきている中で、こういった汎用性のある生成系の特許を先行して取っているのはさすがAmazonだと思いました。E-Commerceをはじめ、Amazonの様々なビジネスドメインで活用できそうです。

Content search using visual styles

一言で:フォントなどビジュアルスタイルの要素を利用したコンテンツ検索技術

電子装置内の処理装置は、リフロー可能な電子コンテンツアイテムの検索クエリを受信し、前記検索クエリは、第1のフォーマットスタイルまたは第1のフォーマット構成のうちの少なくとも1つを示す。 処理装置は、第1のページングスタイルまたは第2のページングスタイルの少なくとも1つを使用して、第1のページに関連付けられたコンテンツデータの少なくとも一部が以前に提示されたことをスタイルデータが示す電子コンテンツアイテムの第1のページを決定する。

石井コメント:地味ですが、立派に検索の王者であるGoogleへの牽制になっています。

結論

GoogleやFacebook(年間2000–3000件出願)に比べ、

特許の出願数自体は少なめでした。

生成や動画認識など、新しい分野の特許も目立ちましたが、

同時にレコメンドや分類といった定番技術のニッチ領域活用も特許の対象になっていました。

例えばYouTube vs Amazon Prime (動画配信)といった戦いでは、

課金やコンテンツの競争もありますが、

特許領域のニッチな技術保有ポートフォリオも戦場になっている事が良くわかります。

私も知財スキルを持った人間として、

今後定期的にこういった調査を継続するとともに、

知財専門の投資会社等にヒアリングし、

“AI領域で企業はどう特許を活用し競争力をつけるべきか”というナレッジを貯めたいと思います。

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