ヘアバンドだけを10万個も販売したECサイト「Bolder band」

Bolder Band」は、ヘアバンドに特化したECサイトだ。

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ヘアバンドなんてそこら中に売っている。わざわざ専門店を立ち上げるような価値があるかどうかも疑わしい。

しかし、同社はたった1年で10万以上のヘアバンドを世界中の顧客に販売した。

同社のヘアバンドがもつたったひとつの特長、それはずれにくいことだ。一人の女性のちょっとした願望から生まれただけのヘアバンド。

それがどうしてここまで売れたのだろうか。その背景に迫ってみたい。

激しい運動でもズレないヘアバンドを自作したことがキッカケ

Bolder Bandの創業者のAmy Crouse(クラウス)氏は米国コロラド在住、3人の子を持つ育児に熱心な母親だ。

同氏は近年流行しているエクササイズのクロスフィットやランニングが大好きだったが、長年疎ましく思っていることがあった。それはどうがんばってもヘアバンドがずれてしまうこと。クラウス氏のブロンドの髪は乱れやすく、運動の際には必ずと言っていいほどヘアバンドがずれて目にかかってしまったり、最悪の場合外れてしまい、そのたび運動を中断して付け直さなければならなかったのだ。

そこで激しい運動をしてもずれないようなヘアバンドをスーパーやデパート、ネットなどで隈なく探してみたが、ずれないヘアバンドを見つけることはできなかった。この問題をクロスフィットやランニング仲間に話してみたところ、同じような悩みを抱えていると答えたことから、自分だけの問題ではなかったと考えたクラウス氏は、ならばずれないヘアバンドを自分で作ってしまおうと決心する。

まずは長年使っておらずホコリを被っていたミシンを取り出し、いくつかの材料の布を店で調達してきて試作品を作りはじめた。

「ずれにくい」ヘアバンドを模索する上でクラウス氏が着目したのは素材だった。例えばニット素材の場合は伸縮性が高いのが特長だ。しかしこの素材にはずれやすいという欠点もある。

そこで高い伸縮性と、水分を吸収する力を併せ持つ素材を探し、スパンデックスを使用することにした。スパンデックスはライクラの商標名でも知られ、ブラジャーや水着、スポーツウェアなどにも使用されている。するとクラウス氏の目論見は当たり、トレーニング中に汗をかいても吸湿性のハイテク素材がずれを防止し、しっかりとしたフィット感を保持できるようになった。

こうして完成した試作品を友達に着用してもらったところ高い評価を受けたことから、これはビジネスとして可能性があると考え、2013年、夫のJD Crouse氏と共にBolder Bandsを創業することになった。

用途と好みに応じた豊富なラインナップ展開

現在Bolder Bandsでは、運動用に特別に作られたヘアバンドの他、シャツやパンツ、スカート、防寒服などを販売している。いずれもアクティブな活動をしている女性を主なターゲットとしているようだ。

ヘアバンドを注文する利用者は、まず巻き尺やメジャーなどを使用して、自分の頭のサイズを測定し、適当なサイズを選択する。サイズは4種類に分けられており、19.5インチ(約49.5cm)未満であれば「x small」、19.5~21インチ(約49.5~53.3cm)なら「small」、21~22.5インチ(約53.3~57.1cm)なら「regular」、22.5インチ以上の場合は「large」となる。具体的な測定の手順は同サイトが用意しているビデオで確認することができる。

(出典:https://www.youtube.com/watch?v=0AtDTMtIen4

自分に相応しいサイズが分かったら、あとは用途やデザインの好みに応じて選べばOK。ラインナップにあるのは豊富なデザインの「Designer」、単色のシンプルな「Solid Style」、光を反射するようにつくられていて、早朝や深夜の活動に最適な「Reflective」、アルファチーオメガなどのソロリティ(大学の社交クラブ)のロゴをあしらったデザインの「Sorority」、男性用の「Bro」、約1.5インチ(3.81cm)と細い「Thinner」などだ。

これらのヘアバンドの価格は15ドル(約1800円)からで、いずれでもほとんどの大人にフィットするサイズが用意されており、夏でも冬でも快適に過ごせるものになっているという。

Bolder Bandのマーケティング手法

同社の商品はユニークではあるが、それだけでは10万ものヘアバンドを売ることはできない。成長の影にはマーケティングの努力がある。同社が注力したのは2つの手法だ。

1.facebookを使ったギブアウェイキャンペーン
ギブアウェイキャンペーンとは抽選プレゼント企画のようなものだ。目新しいものではないが同社ではこの手法を丁寧に継続し、今やフォロワー数は56万人を数える。

具体的なキャンペーン設計を見てみよう。まずはBolder Band「いいね!」を押す。その後キャンペーンのフィードにコメントを残し、投稿文の中にあるリンク先のBolder Bandのページにてメールアドレスと名前を登録する。これでキャンペーンに参加することができ、抽選で無料プレゼントがあたる。

またBolder Bandを着用した写真をフィードに投稿することでも応募できる。投稿された写真はBolder Bandを着用していることがわかるものの中から、サイトのスタッフが質の高いものを選考。選ばれた写真はfacebook上で動画で公開され、その動画に登場した写真を投稿した人にBolder Bandが無料プレゼントされるという。

このように、同じキャンペーンでも見込み顧客と既存顧客の両方が一緒に参加し、楽しめるキャンペーンを展開している。

2.ブロガーとの提携
Bolder Bandもう一つ力を入れているマーケティングが女性ブロガーとの連携だ。彼女たちに直接コンタクトをとり、成果報酬型のアフィリエイト契約を結ぶ。そうやって提携したブロガーに紹介記事を書いてもらい、商品情報の拡散を実現している。

丁寧さ、それが成功の秘訣。

Bolder Bandの成長の裏側を覗いてみると、あまり新しさは感じない。最前線でしのぎを削っている商品開発者やマーケッターからみたら、拍子抜けしてしまうようなことしか見つからない。

そう。ECサイトでの成功に手法の新しさというのはほとんど関係ないということなのだ。

Bolder Bandの活動に新しさは感じないがかわりに感じるものがある。それは丁寧さだ。

まず、商品開発。そもそもずれないヘアバンドへのニーズがあるかどうか、試作品を提供してリサーチしている。非常に重要なことだが、やっていない人は多い。

その後のマーケティングもそうだ。ギブアウェイもブロガー連携も以前からある「使い古された」手法ではあるが、とにかく丁寧に運営されている。

eコマースは(まだまだ)新しいビジネスモデルゆえ環境の変化が激しい。様々なツールやマーケティング手法もどんどん生まれてくる。それゆえ担当者は新しいものに目を奪われがちだが、効果が明確なのは昔から長く続いているツールや手法だ。

Bolder Bandのように実績のある手法を丁寧に実行することが、結局は売上アップの近道なのだ。