子供がお風呂を嫌がることに悩む親のための意外なソリューション 入浴用ぬいぐるみ「Soapsox」

Tomo Amaguchi
Jul 10, 2017 · 7 min read

大人になればリラックスの意味も兼ねて、お風呂に入ることを好むようになる。しかし、子供の時からお風呂に入ることが好きだった、という人はどれだけいるだろうか。親戚や知人の子供を見ていると、お風呂に入るのが嫌いという話を時折聞くし、僕自身、具体的な記憶こそほとんど残っていないものの、好きか嫌いかでいうと決して好きではなかったと思う。

これは日本に限らない。どの国にもお風呂に入るのが苦手な子供は一定数いるようだ。そのため世界の多くの保護者が子供がお風呂を嫌がることに頭を悩ませ、どうすれば良いのかと考えている。

そんな世界中の子供、いや子供の保護者のために開発されたのが今回ご紹介する「Soapsox」だ。同サイトは子供がお風呂におもちゃを持ち込みたがることに着目し、身体を洗うのに使うことができるぬいぐるみを販売し、子供がお風呂に入ることを後押ししている。

Soapsoxは2013年、米国カリフォルニアにて設立。同年8月にKickStarterで支持を募ったときには、目標金額4万5000ドル(約540万円)を超える51930ドル(約620万円)の支援金を集めることに成功している。

ぬいぐるみで子供の入浴をサポート

Soapsoxの商品は様々なかわいいデザインの品揃えから選ぶことができ、価格は1つあたり14.95ドル(約1800円)。クジラとエイの組み合わせ「Dive」やカバとワニの「Safari」各29.93ドル(約3600円)、クジラ、カメ、サメの3点の入った「Sea」、カバ、ワニ、アヒルの「River」各41.90ドル(約4940円)など、それぞれ共通項ごとに組み合わせたパック販売も行っている。

これらの商品の外見は普通のぬいぐるみと大差ないが、内部に石鹸を仕込んでお風呂場で使用することに特化しており、お風呂に入ることを嫌がったり、体を自分で洗うことを面倒くさがる子供を持つ保護者の悩みを解決する商品となっている。

ぬいぐるみ内部には子供が舐めたり噛んだりと口にしても大丈夫なよう雑菌が繁殖しないよう抗菌加工が施されたスポンを使用。内側には固形・液体の両方の石鹸を入れることが出来るようにメッシュ加工のポケットが縫い付けられている。これは特許申請中とのことだ。

また洗うことにも使われるために裏打ちをして通常のぬいぐるみよりも頑丈に設計されており、洗濯機で洗っても大丈夫なようになっている。

商品の使用は、まずはぬいぐるみの中に石鹸を入れることからはじまる。動物のキャラクターをうまく生かしており、固形の石鹸であれば石鹸をキャラに食べさせるようにして、液体であれば呑ませるようにして注入。石鹸を入れたぬいぐるみを水に入れてよく揉むと、次第に泡立ちが出てくるので、後はそのまま身体を洗うのに使うことができる。石鹸の入れ方まで遊び心があり、これなら子供たちにも喜んで使ってもらえそうだ。

お風呂が嫌いな子供もぬいぐるみと一緒ならお風呂に入ることを知った

(出典:Big Commerce Blog

Soapsoxの創業者はカリフォルニア大学で心理学を学んだRay Phillips(写真左。以下フィリップス)氏。大学卒業後は、虐待などを受けてトラウマを持っている、あるいは精神的に不安定な子供たちのいる児童養護施設で16年間働いてきた。

施設で働く中でフィリップスは、子供たちの多くが入浴を嫌う、ということを知った。入浴の時間になると泣く子供、入浴を嫌ってどこかに隠れる子供に散々に手を焼かされ、中にはお気に入りのおもちゃを手放さなければならないからお風呂に入りたくないんだ、と言う子もいたという。

おもちゃを手放さない子供を見たフィリップス氏はある時、お風呂に持ち込めるぬいぐるみを作ってはどうかと考えた。さらにそのぬいぐるみに石鹸を入れ、そのまま体を洗うものとして使えば、入浴に抵抗を感じる子供も減るし、体を洗うのが苦手な子供も大丈夫ではないかと思ったのだ。

そこで、実際に石鹸を入れることのできるぬいぐるみを自分の手で作ってみた。これを子供たちに与えてみたところ反応はとても良く、彼らはぬいぐるみと共にお風呂に入るようになったという。フィリップス氏はこの様子を見て、これは自分の周りの子供たちに限った話ではなく、世界中の子供のお風呂嫌いを直すアイディアになると感じた。

このようにして少しずつアイディアを温めるようになったフィリップス氏は、ある時友達からAlvin Uy(ウイ)氏という人物を紹介される。ウイ氏にはディズニーなどの大手企業からキャラクターのプロタクト開発やデザインを請け負う会社を経営していた経験があった。そこでフィリップス氏は、石鹸を入れることができるぬいぐるみのアイディアをウイ氏に話してみた。

すると同じような商品はまだ市場には多く出回っていないこと、ビジネスとしても可能性があることが分かり、フィリップス氏はウイ氏を共同創設者として迎えてビジネスを開始し、以後2年間を製品開発に費やすことになった。2013年の8月にはKickStarterにプロジェクトを立ちあげ、目標金額の4万5000ドル(約540万円)を超える5万1930ドル(約620万円)の支援金を集めることにも成功した。

リスクのある取り組みに、2つのプランを準備して臨んだ

SoapsoxがKickStarterにて成功したことを受け、ある時米国版のマネーの虎である番組、SharkTankから出演のオファーが舞い込んだ。

この番組は全国放送で影響力も高く、フィリップス氏らはこの番組に出たことがマイナスに作用する可能性がある、ハイリスクな広報手段だと認識していた。

プロデューサーは「君たちが次の機会に、と言うのなら戻ってきて欲しいと思うけど、保証はできないよ」と今すぐ出演するよう促したが、結局準備不足であると判断し、出演を見合わせることにした。

そして6ヶ月かけて顧客基盤が整ったと考えた2014年10月、満を持して同番組に出演することに決めた。一度こちら側から断ったという事情もあってか、一度は不採用というメールを受け取ったものの、ニューヨークで行われたトレードショーにてディレクターに会って働きかけたことで、出演を取り付けることができた。

この時フィリップス氏らは、影響が判断しきれないSharkTankに出演することを決意するにあたって、あらかじめ2つのプランを考えて臨んでいたようだ。

”シャークタンクでオファーを受けると、あとあとプラン全体の変更が必要になってくるんだ。僕たちは番組に出て実際に出るまで、どんなものかがまったく分からなかった。だから状況に合わせた対応ができるよう、プランAとプランBを用意していたんだよ。”
— フィリップス氏

この作戦に基づいて、彼らは提示されたオファーの全てを断ってしまった。しかし番組に出演したことで、Soapsoxの知名度は大きく飛躍したという。

もしフィリップス氏らが最初のオファーを受けた段階で番組に出演していたら、右も左も分からないうちに意に沿わないオファーを受け入れ、その後のプラン作りにつまづいていた可能性もあっただろう。

同社の成長は、リサーチとプランニングの賜物だと言える。競合製品の存在や、テレビ番組に出演することのリスクなどを入念にリサーチし、複数のプランを用意してリスクを取りに行くことで成長を続けている。かわいい子供向け製品の中には、大人の果敢なチャレンジ魂が注がれていたのだ。

Tomo Amaguchi

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