本格派じゃない人のためのアウトドアブランド「Poler Stuff」

アウトドア用品の市場はパタゴニア、ノースフェイス、コロンビアなど有名ブランドがひしめいているまさにレッドオーシャン市場だ。普通に考えてそんな市場にスタートアップが参入するのはかなり難しいように思える。

しかしレッドオーシャンに見えるアウトドア用品の市場にも案外、まだまだ参入する余地があるようだ。それを実際に示してくれたのが今回ご紹介する「Poler Stuff」。2011年に米国のポートランドにおいて設立されたブランドだ。同サイトは、これまでの競合企業がアウトドアに精通している利用者にばかり目を向けていることに着目し、より気軽にアウトドアを楽しみたい人に向けた製品開発とマーケティングを行った。

その結果、Instagramアカウントには36万以上のフォロワーがつき、高い認知度を持つブランドに成長した。その成功を受けて2013年3月に米国ポートランドに小売店も開いた。有名ブランドがひしめく市場においてもユニークな商品、ソーシャルメディアによるマーケティング、ブランディングによって戦って行くことができるということを証明してみせてくれた一例だ。

既存のアウトドアブランドは「普通の人」を無視していると感じた

(出典:http://hypebeast.com/the-hypebeast-hundred-2014/benji-wagner

Poler Stuff創業者のBenji Wagner(写真。以下ワグナー)氏はアウトドア好きの父親のもとスケートボード、スノーボード、そして写真撮影が大好きな子供として育った。その後大学に進学するも、勉強に馴染むことができず退学。好きな写真撮影を活かしてプロのカメラマンとなった。カメラマンとしての仕事は順調で、NIKEなどをはじめとする大企業のスポーツ用品やアウトドアブランドをクライアントに持ち、商品の写真撮影やビデオの作成を請け負っていた。

そんなワグナー氏が起業を考えるようになったのは、アウトドア用品ブランドの商品やブランディングに違和感を感じていたのがきっかけだった。メーカーは登山家など、アウトドアにかなり精通している人たちにフォーカスした商品製造やマーケティングを行っていたが、彼らは気軽にアウトドアを楽しむような「普通の人」を見逃しているように思えたのだ。

実際にはアウトドア用品は本格的な用途で使う人ばかりが購入している訳ではない。スケートボード場や、友達の家を訪問して地べたで寝たり、いろんなビーチを旅してビーチでテントを立てて寝るサーファーなど、カジュアルな形でアウトドア用品を使う人たちは大勢いる。

アウトドアブランドの打ち出す商品の方向性と、スケートボーター、サーファー、そして一般的な「普通の人」が大半の消費者の間には大きなズレがある。これ埋める必要性がある、とワグナー氏は考えた。

同氏は年を重ねるに連れ激しいスポーツの写真撮影を行うフリーランスのカメラマンの仕事が難しくなりつつあるとも感じていた。そこでフリーランスという立場を脱してこれまで自身が持っていたアイディアを活かしたアウトドアブランドを立ち上げることを構想。

アウトドアメーカーは有名な企業が軒並みひしめいて参入の余地が難しいようにも思われたが、ワグナー氏は「有名な企業もそんなに歴史は長いわけではない。まだまだ参入の余地がある」とポジティブに考え、アウトドア市場に参入することに決めたのだった。

普通の人をアウトドアに連れだすことを狙いとしたブランド

従来のアウトドアブランドは登山をするような本気でアウトドア派な人を対象にした商品の機能、ブランディングを行ってきた。そこでPoler Stuffでは、スポーツを屋外で楽しんだり、もっといえば散歩を楽しんだりするような、「普通の人」が利用しやすいバックパック、寝袋、テント、服などのアウトドア用品を販売している。

たとえば簡易寝袋の「The Napsack」135.95ドル(1万6200円)は夏のキャンプ、他の人の家に泊まりに行くときの布団代わり、スノーボードやサーフィンのあとなど体温が下がった時、冬の家の中、屋外でちょっと寒い時など寒い時に手軽に使うのに適した商品だ。

スマートフォンを収容する胸ポケットもついていて、ポケットの内側の穴から寝袋内部にイヤホンを通して音楽を聞くこともできる。ちょっとしたことではあるが、ディテールにこだわった設計だ。

また「Ninja Suit」は名前の通り、忍者のような形状をしたスーツだ。値段は146.27ドル(約1万7500円)。機能性が高く、保温機能を備えており、山や海に着ていくと動きやすく、体温の調節もしやすいのだという。そのまま着ても良いし、服の下に着てもOK。汗をかいてもにおいになりにくい素材を利用している。

Poler Stuffは創業者のカメラマン経験を活かし、写真を積極活用しているのも特長のひとつだ。Instagramは36万以上のフォロワーを持ち、ハッシュタグ#adventuremobileではキャンプカー、ワゴンでアウトドアに出かける様子の写真がタグ付けされている。写真を見ているだけでキャンプ、自然に出かけたくなるような内容だ。

また「Adventure」というページでは、Poler Stuffに所属するカメラマンが世界各地を旅をしてとった写真集が多数紹介されていた。豊富な写真の中には風景のみならずPoler Stuffの商品も度々登場しており商品をどのようなシーンで利用するのかを顧客にとって非常に分かりやすい形で提示しているようだ。「普通の人たちがアウトドアで使う」というサイトの主旨にも適合した試みと言えるだろう。

ソーシャルメディアを通じてブランドのストーリーを伝える

“有名スポーツブランドにはストーリーを持っていて顧客をエンゲージできている企業は多いが、一方でアウトドアブランドにはそのようなストーリーを顧客に伝えることに成功しているブランドが少なかった。そこで自分たちはそのアウトドア市場においてストーリーを顧客に伝えることに取り組んだんだ”

— Poler Stuffの共同創業者のKharma Vella氏

厳しい業界と見られていたアウトドア市場への参入。Poler Stuffの成功は、レッドオーシャンのように見える市場においても顧客の支持を得る余地はまだまだ残されているということを感じさせてくれる。

画像系SNS、特にInstagramの普及によって、ブランドが持つストーリーを自然に顧客に伝えることができるようになってきた。加えて先日、Instagram内での広告も解禁となった。これはファッション・ライフスタイル分野のECサイトにとっては強力な武器になるだろう。Instagramを活用する際にはPoler Stuffを覗いてみていただきたい。かなり参考になる。