【女性も男性も知っておくべき】ピルってなんのこと?
ピル?OC?LEP?呼び名が多く、自費や保険もどっちかややこしい
一般的には「ピル」と呼ばれている避妊薬ですが、産婦人科医などの医師では自費の経口避妊薬を「OC:オーシー」、多くの人が3割負担となる保険適応となる月経困難症や過多月経などに出す薬を「LEP:レップ」と呼んでいます。
基本的な成分はほとんど同じと考えてよいですが、副作用を減らすために薬剤のエストロゲンという成分量を減らしているものもあり、LEPは避妊目的の薬ではないため、避妊効果は保障できません。
用語
経口避妊薬:口から内服する避妊薬のこと
OC:oral contraceptives(経口避妊薬)
月経困難症:月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状、日常生活への支障の有無が目安となることが多い
過多月経:月経の出血量が異常に多いもの、通常140mL以上を指すが量の測定は行わない。貧血になっていることが多い。
LEP:low dose estrogen progestin(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)
ピルの成分は?
ピルは女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲスチンの2つの成分が入った薬剤です。
エストロゲンは、血栓症のリスクがあることから、ピルの歴史では副作用を減らすためにどんどん量が減らされてきました。そのため、現在のピルはほぼ全て低用量です。
月経移動(生理をずらすこと)のためや、性器出血を抑えるために一時的に中用量ピルを使うことがたまにある程度です。
プロゲスチンには様々な種類が使われており、それがピルが何種類もあるという理由です。
血栓症の副作用が怖い?!
必ずピルの処方の時に説明されるのが血栓症です。エコノミークラス症候群はご存知でしょうか?
これは長時間飛行機に乗り足を動かさないことで足の静脈という血管の中に小さな血の塊ができ、最悪のケースではそれが肺に飛んで息ができなくなり致命傷となりえます。
記憶に新しいものであれば、大地震後の避難所先や車中泊でも起きうるもので、血栓症予防のために、脱水を防ぎましょう、足を動かしましょうなどとテレビで連日放送があったかと思います。
ピルを内服していると1年間に1万人中8~9人が血栓症になると言われています。これはピルを内服していない人の1万人中4~5人と単純比較すると血栓症のリスクは2倍となります。
ただ、知っておいてほしいのは妊婦さんやお産が終わった後の褥婦(じょくふ)さんはもっとリスクが高く、妊婦さんで1万人中29人、褥婦さんで1万人中300~400人と言われています。
外来では避妊薬を飲みたいが、血栓症が怖いという患者さんに対してはいつもこう説明します。「血栓症が怖くて妊娠したくありません」という人がいないように、「血栓症が怖くてピルを飲みません」と考えなくてもよいでしょう。
日本ではコンドームによる避妊が一般的ですが、確実な避妊方法はピルしかありません。また、月経困難症や過多月経で今困っているのであれば、ピルを飲んで月経をコントロールし、日常生活をよりよくするためにピルを使うのは非常によい選択肢と思います。
血栓症で注意すべきことは?
万が一、血栓症を起こしてもほとんどの人が治療できます。早期発見と予防が大切です。
早期発見は脳に血栓症ができれば、脳梗塞で視覚異常や顔面の表情がおかしくなる、肺では呼吸が苦しくなったり動悸がしたり、足にできれば赤く腫れたり、むくんだりします。
あとは、血栓ができる部位が痛くなるので激しい頭痛、胸痛、腹痛(お腹の中にも血管があります)、ふくらはぎの痛みには要注意です。
足をよく動かし、脱水とならないよう気を付けることも大事です。
一般的に加齢に伴い血栓症のリスクは上がるので、40歳以上は慎重投与、50歳以上は投与しないことになっています。また、喫煙も血栓症となるリスクなので禁煙がもっとも望ましいです。
最後に
多くの人がピルを処方してもらうのに産婦人科に行くと思います。20歳以上であれば子宮がん検診が2年に1回受診するよう勧められているのでその時にチラッと相談してもよいかもしれません。
体調が悪い時に近くの内科のかかりつけに行くように、産婦人科もかかりつけをつくることで月経や避妊で困ったことがあればすぐに相談できるかもしれませんね。
避妊は日本では選択肢がなかなか少ないですが、月経困難症、過多月経に対するお薬はピルだけではないので一度お近くの産婦人科に相談してみてはいかがでしょうか。
参考文献
OC・LEPガイドライン2015年度版 編集 日本産科婦人科学会
産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版 編集 日本産科婦人科学会