暗号屋 年頭所感 2024年

Yuki Shichiku
ango-ya
Published in
Jan 8, 2024

あけましておめでとうございます。元旦から実家の新潟に居たので能登半島大震災の津波警報で避難したり、近所の道路が液状化して少し断水したりガスが止まったりそれなりに被災して今年の悪運は使い果たしたのではないかと思います。

ブロックチェーン企業の老舗になりたいと和名で法人登記し、今年で6期目に突入しました。スタートアップで5年生き残るのは15%くらいらしく、運良く5期連続黒字で締めくくることが出来ました。とりあえず10年は続けてみようと思って立ち上げたこの会社も折返し(10年目で畳むつもりではないですが)と思うと感慨深いものがあります。紫竹個人としては市場と社内外のいつもお世話になっている皆様に支えられて今日までやってこれて感謝しかありません。

さて、今年も毎年なんとか書いている年頭所感を正月ボケのリハビリがてら書いているわけですが、まずは2023年を振り返ってみましょう。

2023年「死ぬかと思った」

それ以前は web3 という名前で業界が盛り上がり、人もお金もたくさん集まっていた時期でしたが、去年はもっとわかりやすいAIを中心に業界が盛り上がっており、人の役に立つ仕組みがバンバン生まれていた年でした。仮想通貨等の相場を表す言葉として「ベアマーケット(上から下に腕を振り下ろす下降相場。対して下から上に突き上げるブルマーケットがある。) という風に言われた1年でしたが、市場からは皆撤退したかの様に思えるほど、特に4〜6月は案件が全く無い上に数十社に及ぶ企業に様々な提案を行うも無風で正直「死ぬかと思った」年でした。いわゆるハイプサイクルの「幻滅期」というものに突入し、ブロックチェーンという技術オリエンテッドな起業をしたばかりに、トレンドに殺されそうになるという辛い冬の時期を過ごしてしまっていました。

そんな中、web3 ではなく「ブロックチェーン」起点で相談されることが7月頃から徐々に増えていきなんとか持ち直した2023年でしたが、改めて感じたのは我々はミッションに掲げる「ブロックチェーンが拓く新しい経済活動を社会実装する」という会社そのものなのだということでした。ブロックチェーン技術を何が何でも使わせるのだというのが暗号屋のポリシーなのではなく、あくまでその先に生まれた「自律分散」するカルチャー・経済活動の社会実装こそが我々のミッションなのだと感じています。2023年にふと今の考えをまとめるために書いた「 なぜブロックチェーンを使うのか? 2023年版 」にもあるように、情報管理の主体・責任を分散したり、トークンの流動性供給を分散したり、管理責任が分散されたフェアなプロトコルを実装するというちょっと分かりづらい活動が徐々に市場に理解され始めてきたのでしょう。

去年までの活動の答え合わせとしては、弊社の活動ベースでいうと VWBL ( https://vwbl-protocol.org ) という分散型アクセスコントロールプロトコルの設計は Appchain, DePIN などという名前がついた領域として理解され、DEX 最大手の Uniswapリリースと同時期に開発していた分散型流動性供給サービスの Choja ( https://choja.org ) は CeDeFi という名前がついたり、そもそも CEX 向けに AMM による流動性が必要だというコンセプト自体がようやくわかって貰えてきた感じがします。その他にも DID ベースの IoT データ流通を促す PTPF 等、暗号屋が今まで自社事業として考えてやってきたことがブロックチェーンや最近だと DID を軸にして事業をやりたいという方たちから理解して頂けてきたという年でもありました。感覚でいうと大体2〜4年ほどやっていることが早い感じがしています。

一方で2023年の年頭所感に書いた分社化などは出来ませんでした。スタートアップスタジオの様なカッコいい経営をやろうと思っていましたがまだまだ未熟だったり人材が育っていなかったのと、言い訳をするとベアマーケットの時期であったり、自己資金でまだ事業継続できそうだったりしたこともあり分社化は一時ストップすることとなりました。難しいDAO設立を具体的にそれを仕組み化しようと取り組んだりしたこと自体は今後に活かせるので無駄にはなりませんが、分社化自体は引き続き社内の人材が育ったり、事業として独り立ちして資本を入れて伸ばすべきタイミングで検討していきたいと思っています。しかし2024年は協業の相談などもあり、代わりに事業立ち上げをしてくれるような方を募集しているのでコッソリ紫竹まで相談していただければと思っております。

「自分たちで価値を創れる」をサポートする

振り返りだけで終わってしまいそうなので 2024 年のことも書いていきましょう。2024 年は「自分たちで価値を創れる」という言い方でブロックチェーンの本質的な価値を表現し、この活動自体をサポートすることで引き続きミッションの遂行をやっていければと思っております。とはいえやっていくことはほとんど変わらず、どちらかというとやってきたことの伏線回収が出来たというような1年にしたいです。今年は今までにないレベルで経営のことを考える余裕ができ、戦略的に採用や広報を進めていこうと準備を進めています。事業レベルではまず Choja の IEO での流動性サポートをなんとしてもスタートさせ、発行されたトークンに自分たちで価値を付けることで新しい価値の創造をサポートできればと思っています。VWBLではデータ管理の在り方を変え、2025年大阪万博の落合陽一パビリオンのデジタルヒューマン(ミラードボディ)にてその活用を実行していきます。(万博に関しては賛否両論ありますが、私個人としては未来をちゃんと示す価値のある催事にして欲しいと思っていて、テーマパークではなく世界中からアイデアを持ち寄って社会課題に立ち向かう、みんなで未来を考える場所として機能することを願って技術提案をしていきます。)

誰のためのブロックチェーンなのか?

一方で、これは今年に限った話ではないですが今後は「誰のためのブロックチェーンなのか」を考えながら舵取りしていくことが今まで以上に重要になっていくと考えていて、暗号屋としてどんな価値を社会に提供できるのか考えた時に次の2つが明文化されています。

「自分のデータは自分で持つ事ができる」

「トラストから迫害された人達もシステムを使うことができる」

1つ目は特に日本においてはこちらの用途が強いと考えています。責任の分散が行えて、今まで管理が難しかった情報がより手軽に低コストで扱えるようなユースケースを作り出すことで「これめっちゃ便利だけどなんで今まで出来なかったんだろ?」という新しい体験を提供していきたいと思っています。

2つ目に関してはまず日本は金融的に安定した国であり、銀行口座保有率が高く、証券システムなどがブロックチェーンに乗ることは重要ですが、それで起こる恩恵はエンドユーザーには起きにくいといったことに対する提案です。ブロックチェーンを使うことでサーバーを中心としたシステム設計が必要なくなるため、誰かに許可されないと使えないといったことがなくなっていきます。言い方を変えると権力耐性が必要みたいなところでの活用が起こると思っていて、どちらかというと2つ目のほうがエンドユーザーのインパクトが大きいのではないかと考えています。

暗号屋が創業当時から言っている「社会実装」の話をしておくと、社会実装にはデマンド・インパクト・ガバナンス・リスク・センスメイキングの5つの要素が必要です。特に重要なのがデマンド( 需要があるかどうか )とインパクト ( あるべき社会の姿 ) です。現状からなるべく大きく離れた世界 (デマンド) と現状からの変化の量 (インパクト) という見方をした時に、どれだけ現状から離れた大きなインパクトを創れるかを指標としています。

上記の2つの価値でいうと1つ目<2つ目といった感じでインパクトの大きさが違います。一方で1つ目のほうがわかりやすく案件化しやすかったりしますが、「ブロックチェーン技術が拓く新しい経済活動の社会実装」をする上で大きなデマンドとインパクトがどこにあるのかをじっくり見定めながら、今まで仕込んできたものを1〜3年先くらいを見据えて社会に浸透させていくことで、会社のビジョン・ミッションを達成していきたいと思います。

終わりに

少し長ったらしくなってしまいましたがまとめると、死ぬかと思った2023年でしたが、やってきたことが徐々に理解されてきたので 2024 年はその伏線回収を行い、誰かのためになるブロックチェーンを通じて暗号屋のやっていることをより皆様に理解していただける年に出来るよう頑張っていきたいと思います。

近いうちに暗号屋の新しい経営体制等についてもお伝えしたいのと、経営の分散を行うことで規模をもっと大きくしていく意思表明もついでにして年頭所感を締めさせていただきます。本年もよろしくお願いいたします。

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Yuki Shichiku
ango-ya

紫竹佑騎と申します。しちくゆうきと読みます。79と表記したりします。