娯楽のための動物利用に君はNoと言えるか

こころ
4 min readNov 2, 2016

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―意思決定における理性的価値判断

あなたはトリップアドバイザーを利用したことがあるだろうか。観光地や街角の美味しいレストラン、お得なホテルの情報…、寄せられた口コミに基づくレーティングは、単なる情報のまとめサイトより参考になることも多い。サービスの紹介や口コミの閲覧から、ツアーやアクティビティの予約までを一貫して行えるのも便利だ。

このトリップアドバイザーで購入できるチケットの中には、ゾウに乗ったりイルカと泳いだりする、動物との関わりを含む体験型アトラクションがあった。ここで「あった」と書いたのはほかでもない、それらのチケットがもうトリップアドバイザーではほとんど取り扱われていないからだ。

こうしたアトラクションは多くの人にとって非日常の体験で、人気が高いのも頷ける。ではいったいなぜトリップアドバイザーは、これらのチケットの販売を取りやめたのだろうか?

via: National Geographic Creative Photograph by Scott S. Warren

なぜ?

これらのアトラクションは精神的にも物理的にも動物にとって負荷が高いものだ。このようなアトラクションのために、多くの野生動物が捕獲され、苦痛を伴う調教や薬物の投与によって人間の支配下に置かれている。彼らは行動を制限され、本来の生態とは異なる行動様式を要求され、衆人環視のもとに置かれ、使役されている。飼育環境が劣悪であることも多い。

にもかかわらずトリップアドバイザーは長らく、動物を使用したアトラクションに関して利用者を特定方向に誘導するのはトリップアドバイザーの役割ではないとの立場を取っていた。アトラクションを選ぶときに、「人道的なアトラクションかどうか」という指標を考慮に入れるか否かを旅行者に委ね、その点に関し特段の情報の提供を行っていなかったのだ。

今後 トリップアドバイザーは動物関連アトラクションのチケット販売を中止して旅行者向けの教育サイトを開設し、さまざまな観光名所での野生動物保護や環境保全の重要性について説明するという。このサイトには、動物愛護団体ワールド・アニマル・プロテクション、オックスフォード大学の野生生物保護調査ユニット(WildCRU)、動物の倫理的扱いを求める人々の会といった、動物の生態に配慮したツアーを提供する団体も関わる予定だ。

口コミに関してはそのまま継続され、教育サイトにリンクされることになる。また、これらのアトラクションはトリップアドバイザーを介しての予約ができなくなるだけで、直接コンタクトをとればもちろん予約することが可能だ。トリップアドバイザーは、「人道的なアトラクションかどうか」を考えた上で意思決定することを利用者に求めるようになったのだ。

意思決定における価値判断

昨年ワールド・アニマル・プロテクションとWildCRUが合同で行った研究によると、野生動物のアトラクションが人道的なものかどうかを旅行者が判断するのは難しいという。トリップアドバイザーでは、専門家が明らかに非人道的だと判断するアトラクションが高い評価を得ることが多いこともわかった。非日常の体験であればあるほど、旅行者のその日一日を満足させるための刺激的な演出が追求され、恒常的に抑圧される動物への配慮は後回しにされる。

だからこそ、業界の雄であるトリップアドバイザーが旅行者の教育に乗り出すことには大きな意味がある。教育サイトで情報を得ることによって旅行者は、目先の刺激ではなく、本当に価値のある体験かどうかを見極めた上でアトラクションを選択することができるようになる。

折角の旅行なのだから、犠牲の上に成り立つ娯楽より、意味のある体験を選ぶことができる旅行者でありたいものだ。それでこそ、行きたいところを自分で決める主体性を備えた、真の旅人といえるのではないだろうか。

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