【YFC】9/10 日本各地から集結!Young Farmers Camp開始

LabとExhibitionに続き、3つめのプログラムである「Young Farmers Camp (YFC)」が始まりました!

29歳までの応募者のなかから選ばれたのは、「この人達が出会ったらどんな化学反応が起こるんだろう!?」と期待したくなる5名です。劇作家・演出家、俳優、ダンサー、劇場職員などさまざまな職種のメンバーが日本各地から集まり、2020年度YFCが始動します。

9月10日、この日がメンバー全員の初顔合わせ。Zoomにて第一回目の集まり“Camping Day”が開催されました。

これから10月25日までのAPAF期間中、LabとExhibitionの国際コラボレーションの現場に立ち会うほか、メンバー同士でのディスカッションなどを重ね、最終的にはレポートを公開します。LabとExhibitionがアジア圏対象のプログラムなのに対し、YFCはいずれ日本国外でも活躍したいと考える若手向けのスタディグループです。

1.「僕らはなにを欲望しているのか?」

YFCは2019年度からはじまったプログラムです。初年度は多田淳之介APAFディレクターがファシリテーターを担当しましたが、今年は、劇団ままごと主宰の柴幸男がYFCファシリテーターをつとめます。


「(昨年は)ExhibitionとLabの見学をするなかで、メンバーでシェアしたことを発展させたいというムードが自然とできていった。そして、自分たちで劇場ロビーを使ったトークセッションを開催したり、研究会のようなワークショップを行ったそうです。
今年も、もし自分たちでなにかを発展させたいと思うのであれば、そのための土壌を用意します。今年はオンライン開催なのでどんなことができるのかわかりませんが、僕らはなにを欲望しているのか?なにができるのか?を考えていきましょう」

メンバー同士が発展的な関係を作るためには、発言しやすい状態を作っておいた方がいい、ということで、まず簡単なゲームが始まりました。

2.2つのゲーム

「紙とペンはありますか?」

ルールはシンプル。たとえば「赤いもの」というお題に対し、1分間で思いつく限りの赤いものを書く。同じ答えを書いた人数が得点になります。つまり、他の人が考えそうな答えを書くと得点が高くなるのです。

お題は「緑のもの」に決定。1分後……出てきた答えは、カエル、ホウレン草、ブロッコリー、ゴーヤ、葉っぱ、山、森、ピーマン、信号、サランラップ、お寿司などに入っているギザギザ(バラン)、ガチャピン、藻、カメラのネガなどさまざまでした。

優勝はなんと、YFCメンバーではなく柴ファシリテーター!

ゲームに勝てばなにかがあるわけではありませんが、初対面同士が「他の人はなにを考えるだろう?」と意識的に想像をめぐらせることで、ぐっと距離が近くなったように雰囲気に熱が入ってきました。

もうひとつ、柴ファシリテーターが「いま思いついた」と別のゲームを提案。『ヒントをもらって連想したモノを持ち寄り、全員が同じモノを持ってきたら成功』というルール。「身に着けるものですか?」「毎日使うものですか?」「台所で使うものですか?」「色は白ですか?」などいくつものQ&Aを重ね、みんなが持ってきたものは“枕”でした。

しかし、ひとりだけ“時計”を持ってきたメンバーが……。残念ながら成功ならず。柴ファシリテーターが「わあ~、悔しいなぁ!」と誰よりも大きな声をあげる頃には、メンバー達の表情はだいぶ和らいできました。

3.自己紹介:それぞれの視点

10分休憩のち、ひとり15分の自己紹介を行います。

事前に作成してきたスライドをもとに自由に話すほか、APAFに参加しようと思った理由も述べます。「質問慣れするためにも、それぞれひとつだけ質問をしましょう」という柴ファシリテーターの発案により、この自己紹介では5名のバックグラウンドの多彩ぶりが際立っていくことになります。

●大橋玲(制作・劇場職員)

「雷が果てしなく鳴っています(笑)」と、画面越しに地響きのような音が聞こえます。雨が降っていない他地域のメンバーと物理的な距離を感じながら、自己紹介が行われました。

メンバーからは「中東は、踊りや歌が生活のなかにありますか?」などの質問があり、「どうして舞台企画の大学に入ったのですか?」という疑問には、劇場制作の仕事を選んだ理由も語られました。

大橋
「クウェートで通っていたインターナショナルスクールでは、美術、音楽に並んで演劇の授業がありました。その経験から「日本の学校にも演劇の授業があったら面白いんじゃないか」と思ったんです」

●堀春菜(俳優)

保育園勤務や、これまでの台湾やタイでの作品制作経験を振り返ります。映像分野を中心に活動してきましたが、パフォーミングアーツに衝撃を受けたことがAPAF参加への大きなきっかけのひとつだそうです。


「東京芸術祭で初めてパフォーミングアーツを観て「なんだこれは!?」と。俳優が“役”ではなく、その人本人がその場所に立っている状態を晒されているようで、興味を持つようになりました」

また、コロナ禍において「なぜ作品をつくり続けるのか」ということについて多くの人の考えを聞いてみたいとの言葉には、他のメンバー達は強く同意するように真剣に頷いていました。

●本坊由華子(劇作家・演出家・俳優)

愛媛大学医学部付属病院で精神科医として勤務する本坊は、1990年代に設立された医者と医学生の劇団「世界劇団」10代目団長でもあります。他メンバーからは「地域で演劇活動をすること」「医者と演劇の両立や共通点」について、興味津々といったふうに質問があがります。

本坊
「月~金には覚せい剤などを打ってしまった患者さんと話します。彼らは演劇や映画を観ることはないでしょう。土日に芝居を観にいくと、「同じ日本なのかな?」と感じます。でも、自分が作品を作る時は、患者さん方のことも観客だと思って創作しています」

またYFCへの参加については「地域の外に出ることで、自分の得意な部分や、伸ばしたいところを知るきっかけになる」と期待を寄せました。

●酒井直之(ダンサー)

これまでのダンス経歴を映像で紹介。街中で踊ったり、ダンサー以外とのコラボレーションをしたり、ダンサーが映像を撮影する試みなどのほか、イタリアでパーキンソン病と共に生きる人々を対象としたダンス活動の指導者コースを修了したことについても振り返りました。

酒井
「パーキンソンの方が薬が切れて動けなくなった時に好きな音楽でドーパミンを出して歩いたりと、身体性についても新たな出会いと気づきがありました」

ちょうどこの時期はアイヌの方とのクリエーションで滞在しているということで、北海道からの参加でした。「YFCでも、僕がどこかに行って一緒になにかできたら楽しいなと思います」とこれからの活動について希望を語ります。

●私道かぴ(劇作家・演出家)

京都の劇団「安住の地」で作・演出をしながら、会社勤めをして現在4社目。APAFへの応募をきっかけに自身のバックグラウンドを掘り返し、権力(家父長制や体育会系)に興味があることに気づいたそう。「ほかの劇団は権力の集中をどうしているのか知りたい」と、YFCメンバーそれぞれの活動方法に関心を持っていると言います。

私道
「また、コロナで公演発表の形態が変わり、映像作品を制作しましたが、映像は舞台の代わりにもならないなという落胆がありました。お客さんの反応もなく、作品が届いているかの実感がない。コロナ中はみなさんどんな感じなのかも聞きたいです」

お互いに「初対面で踏み込みすぎかもしれませんが……」と遠慮しながらもそれぞれのバックグラウンドに興味を持ち、それぞれが頷いたり前のめりになっていく様子がZoom越しでもよくわかります。柴ファシリテーターは「質問をみんなでし合ってさらに応答する時間で、用意されてきたお話以上の時間があって豊かでした」と締めくくりました。

4. これから:日々のフィードバック実施

最後に、APAFの相磯展子コミュニケーションデザインディレクターより、国際現場での振る舞い方のレクチャーが行われました。「バックグラウンドが違う人とどうコミュニケーションをとっていくか」などの話を聞き、これからExhibitionやLabという国際クリエーションの現場に関わっていくことへ意識をめぐらせます。

こうして、途中には昼休憩も1時間しっかりととりながら、10~15時の“Camping Day”が終了しました。互いへの興味を深まり、「もっと聞きたい」という前向きな空気を受け、柴ファシリテーターが新たな提案をします。

「オンライン上で1人1日ずつ非公開で活動のフィードバックをしませんか? 写真でも歌でもいいです。YFCで集まっている時間以外になにをしているのかが見えるとディスカッションがやりやすくなるのでは」という狙いに、メンバーも快諾。さっそくこの日から、熱のこもったフィードバック投稿が始まりました。

オンラインでどのようにコミュニケーションをとっていくのかこれから工夫を重ねていきますが、はやくも「なにかうまれるのでは」と予感させる、互いに対して意欲的な初日でした。

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Asian Performing Arts Farm (APAF:エーパフ) 2020
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東京芸術祭における舞台芸術の育成プログラムです。OpenFarmでは【会期:10/20~25】に向けプロセスを公開していきます/APAF is a Tokyo Festival program supporting the development of young artists. https://apaf.tokyo