アートとデザイン : Art Interaction (2)

アートとデザインの違いは、今日、さまざまなところで議論されている。しかしながら、これらの議論はデザイン側の文脈とアート側の文脈のそれぞれのフィルターを通して語られることが多いため、結果として平行線を辿ってしまうことが多い。

実際に、まわりにいるデザイナーやアーティストの発言の傾向を見ると、デザイナーはアート作品を作ること、またはデザインがアート的になってしまうことを極端に避ける傾向にあるし、アーティストもデザイン的な作品をあまり評価しない傾向にある。デザインとアートの間のには高い壁があるようにも感じられる。

辞書的な意味では、デザインは総合的な設計・計画と説明され、一方で、アートは芸術・美術と書かれることも多いが、広義には人が自然に関わる行為であると説明されることがある。
これらは、一見レイヤーの違う話のように感じられるし、少し漠としているようにも思う。これらの言葉を明解に説明している辞書を知らないが、辞書的な意味はさておき、デザインとアートは、何らかのプロセスを経て何かを創出するという点において本質的には違いはなく、実際に領域を横断するようなデザイナー・アーティストはその境界をあまり意識していないため、このような弁別の議論はナンセンスなように思われる。
しかしながら、この「デザインとアートの違い」は本質的には意味の無い問いではありながら、現実社会において根強い認知の違いが存在している。そのため、社会に適用していくためには、この違いを認識した上で取り組んでいくことが重要だと思われる。


デザインとアートの再定義

以降の議論では、デザインとアートの違いをひとまず以下のように定義する。

デザインは課題の解決であり、アートは問題の提起である。

これは、Rhode Island School of Design(RISD)の元学長(現在は WordPress.comを運営するAutomattic社)のジョン・マエダ氏の発言が基になっている。

この定義は、ビジネス開発の文脈でデザインやアートという語が使用される際には度々引用され、広く認知されている見方だと思われる。個人的にもアート・デザインに関わる中で実感としても納得でき、また現代の状況に合った非常に良いリフレーミング(行為→意味への視点の転換)だと思われます。


「!」と「?!」

さて、Design Thinkingは、上記の定義をベースとして「課題解決を目的としたデザインプロセス」として理解されているが、このコンセプトが旧来の企業の取組みから見ると非常にインパクトがあり多くの人の心をひきつけ、現在世界中の企業で採用されている。
一方で、Design Thinkingが普及浸透する中で、このプロセス自体の課題が見えはじめ、それを克服するアプローチとしてざまざまな議論がされる中の一つとしてArt Thinkingというコンセプトが提案されつつある。上記の定義に当てはめて説明するならば、Art Thinkingは問題提起のためのデザインプロセスということになりますが、ちょっとピンとこないかもしれません。

Design ThinkingとArt Thinkingの違いを直感的に説明するため、私は4年ほど前から講演の機会があるたびに以下のような説明をしています。
Design Thinkingは「!」を導き出すためのプロセスであり、
Art Thinkingは「?!」を導き出すためのプロセスである。

Design Thinking | Art Thinking

「!」は、まさに目の前の困りごとを解決するような何かに出会った時の、「これだ!」という感覚のように、合目的的かつ論理的に説明できる状態である。
一方で「?!」は、課題や困り事を意識してはいなかったけども提示された何かに対して「なんかわからないけどいい!」と感じる状態のことである。アート作品を見て雷に打たれたような感覚に陥るときのように、論理的に説明できないが心動かされる状態である。

さて、一つ前の記事で、デザインとアートは対立する立場のものとして述べるべきではないと記述しました。

上記で記載したようにデザインとアートを定義し直すことで、デザインとアートを比較し、共に関わり合う道が開けてきたように感じます。

もちろん、既知のものについては「!」で解決できるものも少なくありませんが、未知のものを生み出すときには「?!」の視点が必要です。そしてその視点を用いて社会において総合的に設計・計画していくためには、「!」「?!」の両方を取り込む必要があり、それを “Art Interaction Design”と定義しています。
今後、我々は不確定で未知のテーマに取組む必要に迫られることが多くなってくると言われています。これからの時代においてこれらの複合的な視点の重要性がますます高まってくると考えられます。

次回はDesign Thinking「!」の持つ潜在的な課題について書いてみたいと思います。

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