デンマークの柔軟な社会システム

黒田旬
Ashoka Japan
Published in
4 min readOct 31, 2019

一般的な科学者は普通の人と同じくらいの趣味を持つが、ノーベル賞を取るような科学者は一般人と比べて2~3倍にも上る趣味を持つ。

これはただ趣味をたくさん持てという単純な話ではなく、様々なことをやっているとその数だけ物事を見る軸が増えて視野が広がるので、客観的かつ柔軟な考えを持つことができるようになり、その結果想像性に富んだ仕事を成し遂げられる。

そんな話を本で読んだのですが、デンマークに来てからこの国の社会システムはまさにこれを体現しているなと思いました。

デンマークでは大学まで教育が無償ということもあって日本と同じように高校を卒業して大学に進む人が多いのですが、欧米のそれに同じく大学で専門知識を学び、それを生かして仕事を見つけるという点で日本と違います。

日本では偏差値の高い大学に進学し、働くスキルは就職後に企業で身に着けるというスタイルがまだ根強いのではないでしょうか。

つまりデンマークでは学びたい勉強がある、自分が付きたい仕事に必要な知識を学ぶため大学に行きます。

この学びたい勉強、付きたい職業を見つけるために高校の途中や高校卒業後にギャップイヤーを取って旅に出たりフォルケスクールに行ったりすることも一般的です。

このフォルケホイスコーレはまさに今自分が留学中の学校なのですが、宿題やテストがなく自由時間が多いうえ、全寮制の学校で先生や友達との距離感が近いので将来や夢について考える時間を取るのに最高の環境です。フォルケホイスコーレには留学生も多いので海外に目を向けることができるという点でも優れています。

また授業はアートや音楽といったクリエイティブな科目から、哲学や心理学まで非常に幅広くいろいろな科目を学べます。

そんな中で自分の興味を探り将来について考えることができるし、もしその中で見つからなかったとしても最初に述べた通りいろいろなことを学んだ経験は将来必ず役に立つでしょう。

このようにギャップイヤーを取るので大学生の平均年齢は26歳くらいと高めですが、興味がある、本当に学びたい内容を大学で学んでいます。

またこの平均年齢は生涯教育も関係しています。

デンマークでは高校を卒業した時に特に必要性を感じなくてそのまま就職しても、いつでも必要性を感じた時点で大学に通うことができます。

なぜならデンマークの大学は学費が無料で、その上国から月々お金が支給されるのです。

社会に出てから身をもって大学でしか学べないことに気づき入学した人は、年齢としては少し遅くとも主体的な学習になっているのではないかと思います。

柔軟なシステムは教育だけではありません。

デンマークでは失業保険が充実しているので、会社が簡単に社員を採用・解雇することができます。

逆に言うと雇用者も自分の能力が発揮できる最適で満足できる職に就くまで転職をするので、転職を何回も経験することでそれ応じた以前の会社での人脈と、いろいろな業務経験が増えます。

これによって最初の話にもある通り優秀な人材がたくさん出てくるのです。

デンマークはこのフレキシブルな雇用市場により自分の能力を最大限発揮でき、満足が行く職を探すことができるので、一人当たりの生産性では実にヨーロッパ最高レベルとなっています。

日本では偏差値が高い学校を目指し小さなころから勉強で、会社に就職すると転職はなるべくしない。

一つの子に集中することももちろん大事なのですが、いろいろなことに挑戦してみた経験というのもかならず将来に役に立ちます。

日本でもいろんなことに挑戦でき、それを周りが温かく見守ってくれるような社会に変えていくために、デンマークから学べることがあるかもしれません。

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