ailia AI Speech : UnityやC++から使用できるAI音声認識ライブラリ
UnityやC++から使用できるAI音声認識ライブラリであるailia AI Speechのご紹介です。ailia AI Speechを使用することで、簡単にアプリケーションにAI音声認識を実装することが可能です。
ailia AI Speechの概要
ailia AI Speechは、AIを使用した音声認識を行うためのライブラリです。Unity向けのC#のAPIと、ネイティブアプリ向けのCのAPIを提供します。ailia AI Speechを使用することで、AIを使用した音声認識を簡単にアプリケーションに実装することが可能です。
ailia AI Speechの特徴
日本語を含む99言語の音声認識に対応
マルチリンガルのAIモデルを使用しており、日本語・中国語・英語を含む99言語の認識が可能です。
オフラインで動作
クラウド不要で端末だけで音声認識を実行可能です。また、CPUだけでも推論が可能です。
モバイルデバイス対応
PCだけでなく、iOSやAndroidのモバイルデバイスでも音声認識が実行可能です。
Unity対応
C APIに加えて、Unity Pluginを提供しているため、Unityを使用したアプリケーションに簡単に音声認識を実装可能です。
英語への翻訳に対応
音声認識と同時に英語への翻訳を行うことができます。日本語や中国語の英語へのリアルタイム翻訳を実現可能です。
ailia AI Speechのデモ
音声ファイルやマイクからリアルタイムに音声認識するデモを提供しています。このデモはUnityを使用して開発しています。デモでは、音声認識、ライブ変換、翻訳を試すことが可能です。
Windows版のデモアプリは下記のダウンロードURLからデモをダウンロード可能です。デモの実行にはailia SDKのライセンスファイルをexeと同じフォルダに配置する必要があります。
macOS版のデモアプリは下記のダウンロードURLからダウンロード可能です。デモの実行にはailia SDKのライセンスファイルを~/Library/SHALO/に配置する必要があります。
音声認識においては、マイクの性能が非常に重要です。MacBookのマイクは比較的良好に音声認識が可能です。Windows PCを使用する場合は、指向性の高い外付けマイクを使用してください。
iOSとAndroidではアプリストアに公開しているailia AI Showcaseで音声認識を評価することが可能です。iOS版はAppStoreから、Android版はGooglePlayからダウンロード可能です。
ailia AI Speechが解決する課題
従来、AIを使用した音声認識を行う場合、Pythonを使用する必要がありました。また、音声の前処理と、テキスト化の後処理で外部の依存ライブラリが必要でした。そのため、ネイティブアプリにAIを使用した音声認識を実装することが難しく、サーバで音声認識を行なうことが一般的でした。
ailia AI Speechは、音声の前処理や、テキスト化の後処理を含む、AI音声認識全体をライブラリ化することで、この問題を解決します。
ailia AI Speechを使用すると、Python不要、サーバ不要で、オフラインでAIを使用した音声認識を実装可能です。そのため、会議の議事録など、セキュリティ的にサーバにアップロードできない音声のテキスト化が可能です。
また、独自機能としてライブ変換を実装しており、マイクからリアルタイムの音声入力が可能です。
ailia AI Speechのテクノロジー
アーキテクチャ
ailia AI Speechでは、音声の前処理にailia.audio、AIの高速推論にailia SDK、推論結果のテキスト化にailia.tokenizerを使用しています。それらをailia.speechでCのAPI化し、UnityにBindingしています。
対応プラットフォーム
ailia AI SpeechはWindows、macOS、iOS、Android、Linuxで動作します。
API
ailia AI SpeechのAPIリファレンスは下記に公開しています。
C++
C# (Unity)
APIの呼び出しの流れ
ailia AI Speechでは、ailiaSpeechCreateでインスタンスを作成、ailiaSpeechOpenModelFileでモデルを開き、ailiaSpeechPushInputDataでPCMを入力、ailiaSpeechBufferedで十分なPCMが入力されたか確認、ailiaSpeechTranscribeでテキスト化、ailiaSpeechGetTextで認識結果を取得可能です。
ailiaSpeechPushInputDataは音声全体を入力する必要はなく、少しずつ音声を供給することが可能であり、マイクからのリアルタイム入力を受けることができます。
また、ailiaSetSilentThresholdを使用することで、一定時間、無音が続いた段階でテキスト化を実行することが可能です。
C++での実装例
C++での実装例は下記です。
#include "ailia.h"
#include "ailia_audio.h"
#include "ailia_speech.h"
#include "ailia_speech_util.h"
void main(void){
// インスタンス作成
struct AILIASpeech* net;
AILIASpeechApiCallback callback = ailiaSpeechUtilGetCallback();
int memory_mode = AILIA_MEMORY_REDUCE_CONSTANT | AILIA_MEMORY_REDUCE_CONSTANT_WITH_INPUT_INITIALIZER | AILIA_MEMORY_REUSE_INTERSTAGE;
ailiaSpeechCreate(&net, AILIA_ENVIRONMENT_ID_AUTO, AILIA_MULTITHREAD_AUTO, memory_mode, AILIA_SPEECH_TASK_TRANSCRIBE, AILIA_SPEECH_FLAG_NONE, callback, AILIA_SPEECH_API_CALLBACK_VERSION);
// モデルファイル読み込み
ailiaSpeechOpenModelFileA(net, "encoder_small.onnx", "decoder_small_fix_kv_cache.onnx", AILIA_SPEECH_MODEL_TYPE_WHISPER_MULTILINGUAL_SMALL);
// 言語設定
ailiaSpeechSetLanguage(net, "ja");
// PCMをまとめて供給
ailiaSpeechPushInputData(net, pPcm, nChannels, nSamples, sampleRate);
// テキスト化
while(true){
// テキスト化するための十分なPCMが供給されたか
unsigned int buffered = 0;
ailiaSpeechBuffered(net, &buffered);
if (buffered == 1){
// テキスト化の実行
ailiaSpeechTranscribe(net);
// 取得できたテキストの数を取得
unsigned int count = 0;
ailiaSpeechGetTextCount(net, &count);
// テキストの取得
for (unsigned int idx = 0; idx < count; idx++){
AILIASpeechText text;
ailiaSpeechGetText(net, &text, AILIA_SPEECH_TEXT_VERSION, idx);
float cur_time = text.time_stamp_begin;
float next_time = text.time_stamp_end;
printf("[%02d:%02d.%03d --> %02d:%02d.%03d] ", (int)cur_time/60%60,(int)cur_time%60, (int)(cur_time*1000)%1000, (int)next_time/60%60,(int)next_time%60, (int)(next_time*1000)%1000);
printf("%s\n", text.text);
}
}
// 全てのPCMの処理が終わったかどうか
unsigned int complete = 0;
ailiaSpeechComplete(net, &complete);
if (complete == 1){
break;
}
}
// インスタンス解放
ailiaSpeechDestroy(net);
}
C#での実装例
C#での実装例は下記です。
// インスタンス作成
IntPtr net = IntPtr.Zero;
AiliaSpeech.AILIASpeechApiCallback callback = AiliaSpeech.GetCallback();
int memory_mode = Ailia.AILIA_MEMORY_REDUCE_CONSTANT | Ailia.AILIA_MEMORY_REDUCE_CONSTANT_WITH_INPUT_INITIALIZER | Ailia.AILIA_MEMORY_REUSE_INTERSTAGE;
AiliaSpeech.ailiaSpeechCreate(ref net, env_id, Ailia.AILIA_MULTITHREAD_AUTO, memory_mode, AiliaSpeech.AILIA_SPEECH_TASK_TRANSCRIBE, AiliaSpeech.AILIA_SPEECH_FLAG_NONE, callback, AiliaSpeech.AILIA_SPEECH_API_CALLBACK_VERSION);
string base_path = Application.streamingAssetsPath+"/";
AiliaSpeech.ailiaSpeechOpenModelFile(net, base_path + "encoder_small.onnx", base_path + "decoder_small_fix_kv_cache.onnx", AiliaSpeech.AILIA_SPEECH_MODEL_TYPE_WHISPER_MULTILINGUAL_SMALL);
// 言語設定
AiliaSpeech.ailiaSpeechSetLanguage(net, "ja");
// PCMをまとめて供給
AiliaSpeech.ailiaSpeechPushInputData(net, samples_buf, threadChannels, (uint)samples_buf.Length / threadChannels, threadFrequency);
// テキスト化するための十分なPCMがあるか
while (true){
// テキスト化するための十分なPCMが供給されたか
uint buffered = 0;
AiliaSpeech.ailiaSpeechBuffered(net, ref buffered);
if (buffered == 1){
// テキスト化の実行
AiliaSpeech.ailiaSpeechTranscribe(net);
// 取得できたテキストの数を取得
uint count = 0;
AiliaSpeech.ailiaSpeechGetTextCount(net, ref count);
// テキストの取得
for (uint idx = 0; idx < count; idx++){
AiliaSpeech.AILIASpeechText text = new AiliaSpeech.AILIASpeechText();
AiliaSpeech.ailiaSpeechGetText(net, text, AiliaSpeech.AILIA_SPEECH_TEXT_VERSION, idx);
float cur_time = text.time_stamp_begin;
float next_time = text.time_stamp_end;
Debug.Log(Marshal.PtrToStringAnsi(text.text));
}
}
// 全てのPCMの処理が終わったかどうか
uint complete = 0;
AiliaSpeech.ailiaSpeechComplete(net, ref complete);
if (complete == 1){
break;
}
}
// インスタンス解放
AiliaSpeech.ailiaSpeechDestroy(net);
Unityでは、AiliaSpeech APIを抽象化したAiliaSpeechModelも使用可能です。AiliaSpeechModelはマルチスレッドでテキスト化を行う設計となっています。
void OnEnable(){
// インスタンス作成
AiliaSpeechModel ailia_speech = new AiliaSpeechModel();
ailia_speech.Open(asset_path + "/" + encoder_path, asset_path + "/" + decoder_path, env_id, api_model_type, task, flag, language);
}
void Update(){
// マイクから波形の取得
float [] waveData = GetMicInput();
// サブスレッドが推論中であればキューに積む
if (ailia_speech.IsProcessing()){
waveQueue.Add(waveData); // キューに積む
return;
}
// マルチスレッドの処理結果を取得
List<string> results = ailia_speech.GetResults();
for (uint idx = 0; idx < results.Count; idx++){
string text = results[(int)idx];
string display_text = text + "\n";
content_text = content_text + display_text;
}
// 推論が終わっていたら新規推論をリクエスト
ailia_speech.Transcribe(waveQueue, frequency, channels, complete);
waveQueue = new List<float[]>(); // キューを初期化
}
void OnDisable(){
// インスタンス解放
ailia_speech.Close();
}
ビルドの注意点
Unity Pluginのサンプルでは、ファイルダイアログにStandaloneFileBrowserアセットを使用しています。StandaloneFileBrowserの制約で、Windows環境でil2cppでビルドするとエラーが発生するため、monoでビルドしてください。これはailia AI Speechの制約ではないため、ファイルダイアログを使用しない場合はil2cppを使用可能です。
iOSで動作させる場合は、CapabilityにIncreased Memory Limitを指定してください。Smallモデルで1.82GB程度のメモリが必要なためです。
AIモデル
ailia AI SpeechのAIモデルには、Open AIの開発したWhisperを使用しています。Whisperは99言語に対応しています。
AIモデルの最適化
WhisperのAIモデルの推論においては、Beam Sizeをリアルタイム認識向けに小さく設定することで高速化を行なっています。また、ONNXの変換時に、kv_cacheのShapeを固定化することで、推論間でメモリの再確保が発生しないようにしています。
また、Pytorchから出力したONNXに対して、 ailiaのONNX Optimizerを通すことで、ReduceMean -> Sub -> Pow -> ReduceMean -> Add -> Sqrt -> DivをMeanVarianceNormalizationに統合しています。
ライブ変換
公式のWhisperには存在しない機能として、ライブ変換に対応しています。これは、30秒の音声の到着を待たずに、現在のバッファの内容で投機的に推論を行い、プレビューを行う機能となります。
ライブ変換を有効にするには、ailiaSpeechCreateの引数にAILIA_SPEECH_FLAG_LIVEを与えます。
ailiaSpeechCreate(&net, AILIA_ENVIRONMENT_ID_AUTO, AILIA_MULTITHREAD_AUTO, memory_mode, AILIA_SPEECH_TASK_TRANSCRIBE, AILIA_SPEECH_FLAG_LIVE, callback, AILIA_SPEECH_API_CALLBACK_VERSION);
プレビューは、IntermediateCallbackに通知されます。IntermediateCallbackでは、返り値に1を与えることで、音声認識を中断することも可能です。
int intermediate_callback(void *handle, const char *text){
printf("%s\n", text);
return 0; // 1で中断
}
ailiaSpeechSetIntermediateCallback(net, &intermediate_callback, NULL);
ライブモードでは発言の繰り返し検知も有効になります。同じ単語がN回連続した場合に、新しい音声が来るまで待機します。
音声ファイルから入力する際は通常モード、マイクから入力するときはライブモードを推奨しています。
言語判定
ailiaSpeechSetLanguage APIを呼び出さない場合、セグメントごとに言語判定が呼び出されます。ailiaSpeechSetLanguage APIを呼び出した場合、指定した言語で処理を固定します。言語判定は短い音声では間違う可能性もあるため、言語が明確な場合はailiaSpeechSetLanguage APIを呼び出してください。
翻訳
ailiaSpeechCreateにAILIA_SPEECH_TASK_TRANSLATEを与えることで、英語への翻訳を行うことができます。
高速化
ailia AI SpeechはバックエンドとしてCPUとGPUが選択可能です。CPUの場合、WindwosではIntelMKL、macOSではAccelerate.frameworkを使用した高速化を行っています。また、GPUの場合、WindowsではcuDNN、macOSではMetalを使用うした高速化を行なっています。
ailia AI Speechの評価版のダウンロード
ailia AI Speechの1ヶ月の無償評価版は下記のURLからダウンロード可能です。評価版にはライブラリとサンプルプログラム、Unity Packageが含まれます。
評価ライセンス申し込みで送付されるライセンスファイルは、Windowsの場合はailia_speech.dllと同じフォルダに配置してください。macOSの場合は、~/Library/SHALO/に配置してください。Linuxの場合は、~/.shalo/に配置してください。
ailia AI Speechの評価版のビルド
Windowsの場合は、x64 Native Tools Command Prompt for VS 2019を使用してビルドを行います。SDKをダウンロードして、cppフォルダに移動し、下記のコマンドを実行します。
cl ailia_speech_sample.cpp wave_reader.cpp ailia.lib ailia_audio.lib ailia_tokenizer.lib ailia_speech.lib
ビルドが完了すると、ailia_speech_sample.exeが生成されますので、ライセンスファイルをcppフォルダに配置後、実行します。demo.wavを入力として、音声認識したテキストが出力されます。
macOSとLinuxのセットアップ方法は下記のドキュメントを参照してください。
macOSの場合、ダウンロードしたファイルにダウンロード属性が付与され、dylibを実行できない場合があります。その場合、下記のコマンドで、ファイルからダウンロード属性を除去してください。
xattr -d com.apple.quarantine ./*.dylib
ailia AI Speechの応用例
会議の議事録作成
オフラインで動作するため、重要な会議の議事録作成にご利用いただけます。オフライン型なため、制限時間なく、常時、音声認識可能です。
タッチレスの音声メモ
タッチレスのテキスト入力方法として音声メモや日報にご利用いただけます。
音声からの動画検索
動画ファイルの音声からテキストを抽出して、特定のシーンを単語で検索することにご利用いただけます。
音声のセリフごとの分割
音声ファイルからテキストを抽出して、セリフごとにファイル分割することにご利用いただけます。
コールセンターの音声分析
コールセンターで現在の通話内容から最適な回答案を検索するための入力方法としてご利用いただけます。
アバターとの会話
アバターとの会話の入力方法としてご利用いただけます。
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