御社の面接がダメな理由、教えます。

Sho Mizutani
Basically Fiction
Published in
9 min readSep 25, 2016

というなんとも刺激的で挑発的な帯の文句に導かれて手に取った本書。実は昨年に購入して一度読んでいたのだけど、これから採用にも力を入れていきたいので再読しました。

断っておくと、僕は採用面接なんて片手で数えるくらいしかやったことがありませんし、ましてや他の企業がどのような面接をしているかも知りません。あくまで恒例の読書感想文に過ぎないのでご承知おきを。

さて、本書を一言でいうならば、「 採用力を底上げする方法を教えてくれる本」ではないでしょうか。

面接官としての「あなた」のダメなところをまず自覚した後、面接の心構えを知り、テクニックの知見を蓄積し、そして実践することで採用力を上げよう、というのが本書の主なメッセージのような気がします。

本書の大まかなな流れは:
⑴ 御社の面接がダメな理由
⑵ 「採用が成功する」面接の極意(心構え
⑶ 誰でもすぐに「面接力」が上がる方法(面接のテクニック
⑷ 「質問力」と「見抜く力」を3倍にする実践例

⑴ 御社の面接がダメな理由

企業側からの視点で見れば、そもそもの採用の目的は優秀な人材を確保して、活躍してもらうことです。確保というからには、採用側が人を選ぶように、応募者も企業を選んでいることを自覚する必要があります。

ここでは、「選び方」と「選ばれ方」の二つの軸で著者が主張する「御社の面接がダメな理由」を見ていきます。

選び方

面接に至るまでの「準備」の問題が本書では指摘されています。それは、多くの企業が自社にとって本当に必要な人物像がイメージできていない、ということ。

ともすれば、「コミュニケーション能力のある人」や「ストレス耐性のある人」を企業は求めてしまいがちですが、求める人物像は、もっと具体的なイメージに起こす必要があります。

一口に「コミュニケーション能力」といっても、「聞く力」に長けた人もいれば、「話す力」に長けた人もいます。つまり求められるコミュニケーション力は企業のその時々によって異なってくるので、曖昧で便利な言葉に逃げず、現場で通用する言葉を用いることが望ましいでしょう。

「ストレス耐性」についても同様です。ストレスに耐え続けられる人なんていないので、そうではなく、「ストレスを逃がす力」を持っているかチェックすることが有用です。ストレスを乗り越えられる人かを見抜くには、以下の項目を確認すると良いそうです。

・壁を乗り越えてきた経験があるか
・仕事をするうえでモチベーションの源となるものがあるか
・ストレスを感じたときの対処法を持っているか

それでは、実際の面接現場での「選び方」はどうでしょうか。ここでは、ただなんとなく転職理由、志望動機をたずねている面接官が多いことが「ダメな理由」に挙げられています。

何がそんなにダメかというと、質問者自身が質問の意図を理解できていないことが問題なのです。質問の意図を理解していないと、表面的な印象だけで評価しがちになってしまいます。

選ばれ方

見られている意識が面接官にまったくない、と著者は斬ります。せっかく面接で優秀な人を見つけても、確保できなければ意味がありません。にもかかわらず、多くの面接官は応募者を選考することに気をとらえ、その先にある「採用する」という本来の目的を忘れている、とも。

就職活動の際に、内定をもらった会社を辞退した経験がある方もいるかもしれません。

実際、第一志望だった企業から内定をもらったにもかかわらず、半数以上の54パーセントの人が辞退したという調査結果もあります。

面接官の印象というのは、応募者が企業を選ぶ際に大きな影響を及ぼします。従って、応募者に嫌われない配慮が必要です。丁寧に対応して話をきちんと聞くことや、仕事のやりがいを伝えることで、応募者が入社したくなる企業に見えるようにしたいです。

他にもたくさんの「御社の面接がダメな理由」が挙げられていますので、気になる方は本を手に取ってみてください。

⑵ 「採用が成功する」面接の極意(心構え

先ず、当たり前のようですが、応募書類を事前に読み込み、予めどう面接を進めるか、シミュレーションしておくことが大事になります。著者が考える一般的な面接のプロセスと最低限チェックすべき項目をご紹介します。

自己紹介:マナーや第一印象をチェック
過去の実績や経験を尋ねる:応募者のキャリア(能力、強みなど)をチェック
転職理由・志望動機を聞く:辞めずに頑張れそうかをチェック
応募者からの質問:やる気をチェック

次に持つべき心構えは、「結果よりPDCA&ストーリーを重視する」です。PDCAの説明は省きますが、面接で応募者の話を掘り下げる方法も基本は同じで、「きっかけ」→「行動」→「結果」→「学んだこと」を確認します。それによって応募者がこれまでどのように仕事を進めてきたかが分かります。また、きっかけを重点的に掘り下げることで、応募者が自ら主体的に行動できる人か確認できますし、学んだことを確認することで学習意欲のある人かどうかも確認できます。

応募者の将来性を見極めるには、「実績を挙げるためにどんな工夫をしたか(行動)」「その工夫を始めたのはなぜか(きっかけ)」「その成果はどうだったか(結果)」「結果を受けて今後の課題は何か(学んだこと)」に着目して、結果の裏側をチェックします。

転職にストーリーがあるかどうかも、確認すべき重要な点です。一人ひとりの人生をドラマと捉えるなら、人生の節目である転職や就職の背景にストーリーが存在することは当然です。転職理由と志望動機をセットで尋ねることで、ストーリーの輪郭が纏まりを帯びてきます。

つまり「なぜ転職しようと思ったのか」→「転職で実現したいこと、目標は何か」→「なぜ当社を志望したのか」という転職活動のストーリーです。

⑶ 誰でもすぐに「面接力」が上がる方法(面接のテクニック)

応募者をより深く見抜くテクニックの一例として、著者は「経験を5W1Hに分解して確認する」方法を紹介しています。過去の仕事や経験を、「When(いつ)」「 Where(どこで)」「 Who(誰が)」「 What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」で分解していくのです。

「お客様はどんな方が多かったですか(Who)」「お客さまに商品を売るためにどう工夫してきましたか?(How)」などと質問し、応募者が相手にしてきた顧客や仕事を進めるうえでの工夫を確認します。

また、上述したように「きっかけ」「学んだこと」に着目して掘り下げることも効果的です。

これらはほんの一例です。本書には他にも「話を引き出すテクニック」や「この会社で働きたいと思わせるテクニック」など多数あります。

⑷ 「質問力」と「見抜く力」を3倍にする実践例

面接の「準備」と「本番」に分けて実践例を紹介していきましょう。

準備

繰り返しになりますが、面接の準備に関しては求める人物像をクリアにイメージできていることが必須になります。人物像を具体化する方法として、モデルとなる社員をピックアップしておくことが有効です。また、成長過程にある企業であれば、自社の社員たちに足りない点を分析し、求める人物像に反映させることもできます。

自社の魅力を実体験で言えるように準備しておくことも忘れてはいけません。自社ならではの魅力や、優れているところ、働くメリットなどを予め箇条書きにしておくことを著者は薦めています。それが具体的なエピソードであればなお良いでしょう。

本番

前述の一般的な面接のプロセスを基に、それぞれの確認方法を紹介していきます。

自己紹介:マナーや第一印象をチェック
過去の実績や経験を尋ねる:応募者のキャリア(能力、強みなど)をチェック
転職理由・志望動機を聞く:辞めずに頑張れそうかをチェック

先ず自己紹介ですが、ここでチェックするのは社会人としてのマナーだけで良いそうです。それ以上のことは無理に探ろうとしないこと。

キャリア・実績チェックの進め方において重要なのは、過去の仕事の細部まで確認することです。特に、体験したディテールについて具体的な話を聞きだすこと。5W1HやPDCA(「きっかけ」→「行動」→「結果」→「学んだこと」)を意識して応募者の行動を分析していく、「売上を伸ばすためにどんなことをしたのか」「どんなメンバーがいたのか」「リーダーとして何に取り組んだのか」など、背景や行動を細かく確認することが大事だそうです。本書では具体的な質問方法についても触れられていますので、気になる方は是非。

転職理由・志望動機をチェックする1番の目的は、応募者が「会社を辞めずに頑張れるか」、つまり退社のリスクがないかをチェックすることです。

想像以上に長文となってしまいましたが、それだけ本書から得られたものが大きかったのだと思います。

採用に関しては実際に一緒に働いてみないと分からない、という意見も多くあると思いますし、それは本当にその通りだと身をもって実感しています。なので、質問力を高める以外に、本採用の前に一緒に働く期間を設けるなどの仕組みを作ることも非常に大切だと思います。

ただし、だからといって「人を見抜く目を養う」ことを諦めていいわけではないですし、採用者と応募者がお互い長期的に満足できる「採用」を実現できれば、ひいてはそれが豊かな社会につながっていくのだと信じています。

それは相手のことを深く理解するといった、当たり前のコミュニケーション活動を出発点にして成されることだと思いますので、こういったテーマを追求していくのは良いもんだということで、この辺で締めさせていただきます。

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