さあ、別所線に乗って、Bessho Onsenに行こう!
2019年3月6日午前10時30分。私は長野県上田市に所在する下之郷駅に降りた。
のどかだ。
周りにはコンビニや飲食店といったものはなく、自動販売機2台と広い田園風景が広がっているのみ、この駅に降りた人は必ず5秒は立ち尽くすのではないだろうか。
そんな駅になぜ私は降り立ったのか。
今回上田市に来たのは四月より始まる研究室活動において親睦を深めようということで、合宿を行ったからである。私たちが泊まった場所は別所温泉、上田電鉄別線線の終着駅だ。そして、下之郷駅に途中下車した理由は、この駅に本社を構える上田電鉄株式会社にインタビューをするためだ。
電車に乗ることが好きな私は、地方の電鉄会社に話を聞きたいと思い、早速、上田電鉄に電話を入れると快くOKしてくださり、インタビューが決まった。
今回私たちが上田電鉄の方にお話を聞く際に質問したいと考えた内容が二つある。
それが
・今までどのように地元の方々と触れ合いながら会社を運営してきたのか
・訪日外国人旅行客のインバウンド対策について、どのように取り組まれているのか
である。
この二つの質問が、キーポイントになると考えた。
本社の中に入ると社員の方が優しく迎えてくださり、会議室へ案内していただいた。私達の質問に答えていただく前に上田電鉄について紹介してくださった。
事前にある程度は調べていたのだが、説明していただいて初めて知ることが多くあり、感激するとともに自分のリサーチの未熟さに恥ずかしさを覚えた…
驚いたのは上田電鉄が東急電鉄のグループ会社だということ。
実際に、いま別所線で使われている車両は東急電鉄で使われていた車両であった。
東京から離れた長野で今も東急の車両が使われているという事実は、東急電鉄が好きな人にとってたまらないのではないだろうか。たまプラーザ駅で上田市のPRイベントで別所線の宣伝をするなど、東急電鉄との結びつきは強い。ぜひとも上田電鉄に乗っていただいて、その土地や電車の魅力を知っていただきたいものである。
さて、私達の質問を投げかけてみる。
・沿線沿いの地元の方々との触れ合いについて
上田電鉄株は地元の方々との触れ合いを本当に大切にされていることに驚かされた。
下記にある画像のスライドはこの数年で上田電鉄が実施してきたイベントである。
画像に載ってないイベントも多数ある。車内で近くの酒蔵のお酒を飲む“呑み鉄イベント”や線路沿いを歩き、走るランニングウォーキングイベントなど、電車に乗るという枠組みでは収まらないイベントを多数開催している。その他にも沿線にある上田女子短期大学とタイアップしてプロジェクトを行ったりと地域の住民の方々を大切にしているのだ。ぜひ一度ホームページをチェックしてほしい。
大規模なイベントこそないものの、中規模のイベントを開催することで確かに地元の方々との繋がりを強くしている。
地方電鉄の乗客のほとんどは移動目的の周辺の住民の方々である。
しかし、地方では車での交通がメインとなり、電鉄の乗客が少なくなってきている。
だが下の写真にある通り、別所線の輸送人員はこの数年で伸びてきているのだ!
これは上田電鉄が周辺の住民の方々との触れ合いを大切にして、車を使うのではなく、別所線を使っていただくように努力した証である。
・次にインバウンド対策について
インバウンド対策について、もちろん全く対策していないわけではない。
上の画像の通り、路線図の駅名は英語表記を記載し、訪日外国人旅行者の方々が困らないように配慮するなどの取り組みはされている。
私が一番気になったのはICカードが使えなかったことだ。
別所線は主に切符を買うか、無人駅の場合は電車内で整理券を取り、降りる駅でお金を支払う、いわばバスのような支払い方法を採用している。
つまり現金が必要ということである。
もちろん、日本へ来る際に自国の通貨と日本円を両替するだろう、だがキャッシュレス社会が進歩する海外に住む方は切符を購入するということにいくらかの煩わしさを感じてしまうのではないだろうか
しかし、ICカードが使える改札や券売機を設置する際にかなりの額が必要なので地方電鉄会社を悩ませる問題である。ここで迫られる選択は二つ。
・赤字覚悟でICなどのキャッシュレス化に踏み切るか
・このまま切符や整理券のみの販売形態をとるか
しかし、私はあえてIC機能などをはじめとしたキャッシュレスの購入法を進めなくても良いと考えている。
私たちのような都市部に住むものからすると今や切符は遠い過去のものになっているように感じる。そこで、別所線へ乗る際には切符を買って懐かしさに思いをはせてみるのもまた一興でなのではないだろうか。
私も別所線の切符を購入した際、妙に高揚した。そして切符は駅員さんにお願いすれば記念として持ち帰ることができる。その切符があなたの旅の記録になってくれるだろう。ファイルに保存して時々旅を振り返ってみるなんて素敵ではないか!記念乗車券も発売していて、これがなかなか売り上げ好調とのことだ。
気になった方はぜひ上田電鉄のホームページをチェックしてみてほしい。この先、切符の魅力をうまく発信することができたら、観光客の増加を見込めるのではないだろうか。
不便さをむしろ味わいに変えることができれば素敵ではないか。
別所温泉は訪日外国人旅行者も注目している温泉街である。私たちが訪れた際にも、外国人の団体やお一人様が別所温泉の街を歩いているところを目撃した。そして私たち日本人も旅行の選択肢に入れる場所であることは間違いない。
別所は温かい温泉が待ってるほか暖かくて親切な現地の方々が私たちを歓迎してくださるのだ。良い人が住む場所に人は集まってくるのだ。今後別所温泉は世界の”Bessho Onsen”になっていくだろう。
Let’s take the Bessho line and get to Bessho Onsen!
海外の人からこのように言われる日が来ることを楽しみにしている。Bessho Onsenに行く際は、是非、別所線を体験してほしい。
お忙しい中、インタビューにご協力してくださった、矢澤さん、渡邉さん、上田電鉄株式会社の皆さん、ありがとうございました。