Andy Shauf『The Bearer of Bad News』

Keigo Sadakane
Best Albums Of The Year
2 min readDec 27, 2016

2008年にデビュー作をリリースした後、カナダにある両親の自宅ガレージで4年を掛けじっくり温めてきた本作品はギター、クラリネットやストリングスといった楽器の音色を繊細に扱いまとめ上げる技術において既に洗練の域に達していることを明確に示している。

そしてこのAndy Shaufもまたスフィアンと同様、誰もが見過ごす日常の些細な何気ない瞬間、感情のひだに気付き、すくい上げることが出来る作家だ。

眠ることができずにひたすら思考が逡巡する夜(「I’m Not Falling Asleep」)や、人の強欲さ(「You’re Out Wasting」)、友人の妻との不倫(「Wendell Walker」)といった日常に潜むダークサイド、感情のパンドラの箱を様々な登場人物の視点から解き放ちつつ物語を語っていく。

その有様まるで「音楽では到達できないところに音楽で火を灯す」、そんな試みに映る。新たなストーリー・テラーの登場である。

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