Yokohama Triennale 2017
Sharing Session番外編
ヨコハマトリエンナーレにて移民の若者を取り巻く環境について元ユースのアビナッシュ・ガレがトークを行いました。映像や写真のワークショップを行ってきた経験を踏まえ、移民の若者たちがアートを通じて社会とどのように接続しようとしているのかを紹介し、違いを超えた多様性が豊かさを生む社会について参加者とともに考えました。
ヨコハマトリエンナーレ2017
世界は今、従来の枠組みを超えて様々なネットワークが拡大する一方で、紛争や難民・移民の問題、保護主義や排外主義、ポピュリズムの台頭といった課題に直面し、大きく揺れています。また人間の処理能力を大幅に超える量の情報が氾濫し、高度に複雑化する環境の中、SNSなどのコミュニケーションツールの急速な発達により、ネット上の小さなコミュニティやグループの中だけに身を置くような世界観の島宇宙化が進んでいるようにも見受けられます。さらには、これまでの大国や中央集権の論理に抗うかのような様々な小規模共同体の動きも活発化しています。
このような従来の社会の枠組みや価値観が大きく揺らぎつつある今日、ヨコハマトリエンナーレ2017 は、「島と星座とガラパゴス」というタイトルのもと、世界の「接続性」と「孤立」の状況について、アートを通じて様々な角度から考察します。そして、相反する概念や現象が複雑かつ流動的に絡み合う世界や、独自性・多様性の在り様、さらには先行きの見えない時代に、人間の持つ想像力や創造力が、未来に向けた新たなヴィジョンやグランド・デザインをどのように導き出し得るのか、思索を巡らせます。
展覧会場となる横浜美術館と横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館には、世界各地から約40組のアーティストたちの多種多様なメディアの作品が展示されます。作家数を絞り、多くの作家が複数の作品を展示することで、小さな個展の集合体のような構成となっています。
これは、鑑賞者が個々の作家の創作世界に、より深く触れられるよう意図したものであり、同時に、異なる星や島が緩やかに繋がり星座や多島海を形成するように、作品世界が連なっていくイメージも反映しています。
参加作家には、現在のアートの主流とは一線を画し、独自の手法で課題に取り組み続けていたり、領域横断的に既存の枠組みや概念を超えた活動を推し進める作家が含まれるとともに、複数アーティストの協働プロジェクトや、直面する社会問題に芸術的観点からアプローチするプロジェクトもあります。また、各作品が扱うテーマは、個人と社会、私と他者の関係、国家や境界、ユートピアについて、あるいは異なる歴史観や人類の営み・文明への問いから、極めて日本的な孤立の問題まで多岐にわたります。
本トリエンナーレでは、企画の構想にあたり、異なる分野の専門家を含む「構想会議」を通して、コンセプトをより多角的に掘下げました。また、展覧会に合わせて幅広い領域の専門家を迎えた公開対話シリーズ「ヨコハマラウンド」を実施し、視覚と対話の両面による「議論」「共有・共生」の機会となることを考えました。さらに、横浜国立大学大学院Y-GSAなど近隣の教育機関との連携や、横浜の歴史的施設にも注目し、開港、開国の歴史を背景に、複眼的かつ身近な観点からテーマに迫ることも試みます。こうし て、我々が生きる今・この世界の成り立ちや立ち位置を改めて確認するとともに、いかに未来に記憶を繋げるのか、またどのように共に生き得るのかなどについて考えるひとつの契機になることを目指します。
公式HP「コンセプト」より
Date
2017/09/10
登壇者プロフィール
アビナッシュ・ガレ( 映像作家)
1993年ネパール・ポカラに生まれる。高校卒業後、プログラミングと映像制作を独学で学ぶ。2012年、東京で働く家族と住むために日本に移住。ネパール新聞社でデザイナーとして働く。またkuriyaでもユースメンバーとしてアートワークショップの企画運営に携わるようになる。日本に在住するネパールの若者たちを追ったドキュメンタリーを制作予定。