サイバー空間と情報戦争
先日、友達が私のiPhoneをハッキングしました。もちろん、私が公認の上で。
最近は、企業の情報流出やハッカーに攻撃を受けたなどの類のニュースもよく目にします。
きっと目的は、たいがいが「情報」の獲得でしょう。
いつの時代も「情報」は大切なものです。
縁起でもない話だが、例えば、第三次世界大戦が起こったとして、あなたは日本陸軍の司令官です。まず、やるべきことは、相手の分析、つまり「情報」を集めることであるでしょう。
さらに、「情報」によって相手軍の動きや作戦が予測できれば、これほどよいことはないでしょう。
そんなわけで、昔から戦争には、暗号やスパイが使われてきました。戦争や交渉における「情報」の重要性は格別です。
WWⅡでナチス・ドイツが使ったエニグマ暗号があります。解読が難しいとされていましたが、連合国軍はこれを解読(イギリスの数学者アラン・チューリング)し、勝利につなげました。
盗聴器などの技術が完全でない頃は、たくさんのスパイが、政府関係者に混ざりこみ、各国の機密情報を抜き取っていました。
現代は、テクノロジーの進化により、そういった情報収集の手段が多様化していました。
そう、インターネットの登場により、インターネット上での情報の奪い合いへと変わっていきます。
今、私たちの知らないサイバー空間で何が起こっているのか、気になります。
ところで、みなさんは、Google、Facebook、Youtubeといったサービスは利用しているでしょうか?
おそらくほとんどの人が日常的に利用していると思います。アメリカ発のこれらのサービスはとても便利ですし、我々の生活を豊かなものにしてくれます。
しかし、世界各国は、これら便利なサービスに対し、警戒感を強め、抵抗を繰り広げているのです。
フランスは、ネット小売り店に対して書籍の無料配送を禁じる法律を制定しました。いわゆる反Amazon法のようなものでしょうか。EU全体でも、Googleを独占的地位の乱用で提訴しようという動きが広がっています。さらに、我が国日本も、Googleの独占を阻止する戦略の策定を急いでいるようです。
なぜ、便利なサービスに対してこのようなことをするのでしょうか?
これは、各国が、背後に存在する「アメリカ」を警戒 しているものと思われます。もちろん、自国の産業を守るためというのもあるでしょうが、多国籍IT企業の裏にはアメリカがいることに気付き始めました。
どういうことかというと、NSAとグローバルIT企業とのつながりです。
NSAとは、 アメリカ国家安全保障局といい、情報の観点からアメリカを守る役割を果たしています。
真珠湾攻撃を未然に防げなかったことを教訓に、政府機関として設立したと言われていますが、予算など秘密で謎の多い組織です。推定人員約3万人で、最高水準の数学者、電子技術者、語学者の集団であるそうです。
NSAは以前から、インターネットを使って情報収集をしていたそうですが、それに熱が入ったのが、アメリカ同時多発テロであると思われます。
なぜなら、世界中の情報を監視し、テロリストと疑いのある人物をマークしておけば、未然に防げたかもしれないからです。
テロ後の2001年10月、アメリカ政府は「米国愛国者法」を制定します。この法律は、アメリカの通信大手3社にNSAのパートナーとして振る舞うよう促したものです。その3社で、米国を経由する国際電話の81%をカバーしているといわれています。
ただ、この光ファイバーのネットワークだけではカバーしきれないということで、NSAは次なる手を打ちます。それが、グローバルIT企業に協力してもらうことです。
このプログラムはPRISMとよばれ、Google、Facebook、Appleなど9社がNSAへの情報提供に協力するというものです。
これによってNSAの諜報活動はよりやりやすくなりました。
NSAはアメリカ初のグローバルIT企業にとどまらず、他国の情報機関とも連携を図ります。それが、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドです。これらの連携の基礎は、冷戦中、ソ連に対抗するためにできあがりました。
これらの国は「アングロサクソン諸国」に属する組織であり、通信情報に関する秘密協定であるUKUSA協定を締結しているようです。
話が二転三転しましたが、アメリカの巨大IT企業がアメリカの諜報活動に協力させられています。
我々の「情報」はアメリカの情報機関によって抜き取られているといって間違ないでしょう。
私たちの現実世界の裏側では、このようなことが起きているのです。
この実情に危機感を抱き、NSAの職員として機密情報を暴露したのが、あのスノーデンです。
「インターネットは世界史上最大のスパイマシーンである」と。
これから、サイバー空間の平和はどのように守っていけばよいのでしょうか。