【SXSW EDU 2018レポート】今日のクリティカルシンキングとメディアリテラシーの取り組みは「逆風」である

SXSW EDUの3日目の朝のキーノートで、Microsoftの研究者であるBoydが展開したセッション”What Hath We Wrought”の内容をお届けする。

参照:https://www.edsurge.com/news/2018-03-07-danah-boyd-how-critical-thinking-and-media-literacy-efforts-are-backfiring-today?utm_content=bufferb4468&utm_medium=

子供たちがクリティカルシンキングやメディアリテラシーを身に着けるべきという議論に反論する者はほとんどいないだろう。しかし、そのようなスキルが単に知識に挑戦する反動手段として奨励されれば、未来はさらに混沌としてしまうかもしれない。

SXSW EDUの3日目の朝のキーノートで、Microsoftの研究者であるBoydは、独自の視点を展開した。

「アメリカの教育に導入されたクリティカルシンキングの多くが逆効果である。」

彼女のスピーチ内容はロシアの宣伝活動からネットフリックス、歴史、哲学まで言及し、メディアとその扱いに関して深く考える機会となった。しかし彼女は一方で、明確な解決策がほとんどないことも認めた。

誰もメディアを信用しない場合、メディアリテラシーとは何か?

Boydは批判的思考が本質的に悪いと思っているわけではない。彼女が強調したのは、ストーリーを確かめる方法として質問する行為そのものがいかに「武器化」されているかだ。その行為は、世間の信頼を意図的に無くそうとしているようなものだ。

今日の世界では、個人は事実を確認し、虚偽と真実を区別することができ、またそうあるべきだという風潮がある。

最近の誤った情報を広めるためのロシアの取り組みや「フェイクニュース」の広まりによって、教育機関や政府機関はメディアリテラシーを高めるよう促している。Common Sense MediaからPBSといった教育機関は、教師がこれらを教えるためのオンラインカリキュラムを導入した。これらのツールには、事実の確認やバイアスが生じる原因の分析方法などが学べる。

こういった取り組みは価値がある一方で、間違った文脈で捉えると、さらに大きな問題を永続させることになりかねない。「今、ファクトチェックをめぐる議論が示しているのは、真実は1つしかないということだ。私たちが認識すべきは、合法的な考え方は1つしかないと教えられている生徒がたくさんいることだ。」

「投資家、ジャーナリスト、IT企業などはみな口をそろえて言う。メディアリテラシーソリューションが必要だと。私はそれが何であるかはわからないが、CNNとFox Newsのどちらが正しいかという単純なものでないことを願っている」とBoydは付け加えた。

メディアリテラシーの目的を真実を発見する方法としてしまうことで、大人は実際に正しいか間違っているか(世の中は白黒/正しいのは1つ)しかないというメッセージを強調しているのではないか。そういった考え方は、権威に挑戦し、別の説明を求める傾向がある青少年や青年にとって、一般的にはうまくいかない。

「多くの人々、特に若者たちは、世界を理解するためにオンラインコミュニティに目を向ける。彼らは尖った質問をしたり、前提を調べたり、学んだことを疑うことを望んでいる」とBoydは語った。

教師は何ができるか?

Boydはキーノートの大部分を、クリティカルシンキングを巡るマイナスイメージについて語った。しかし、ファクトチェックするだけでは十分ではない場合、メディアリテラシーにはどのようなアプローチが適しているのだろうか?

Boydは認めた。「わからない。私も迷っている。」

比喩的に言えば、Boydは「人に騙されないようにする抗体」のようなものを育むよう求めた。しかし、ほとんどの人が自分を信じているので、これも非常に難しいことだと述べた。「人々が自分の心理を理解するのを助けることには、ある意味の価値があるかもしれない。」

現実的に言うと、Boydがオーディエンスに訴えかけたのは「少年たちが認識の違いに目を向けられる」よう手助けすることだ。教師にとって価値があるであろう1つの質問がある。

「なぜ異なる世界観の人々が同じ情報を異なる方法で解釈するのか」

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