2. Money, Ledgers and Bitcoin

MIT OpenCourseWare で公開されている【Blockchain and Money】の授業を日本語で解説しています。第2回のテーマはお金、台帳、ビットコインです。

Kanta Shimada
Blockchain and Money
7 min readFeb 24, 2020

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今日のStudy Question

お金とは、台帳とは何か?

お金の歴史の中で、ビットコインはどのように位置付けられるのか?

第二回の授業では、主に「そもそもお金とは何か」を解説しています。

ブロックチェーンに関する内容は少ないですが、お金の歴史を紐解くことでビットコインがどのように位置付けられるかを知ることができます。

お金の原型

お金の発展には、物々交換の歴史から貸借取引の歴史への移行が大きく関わってきます。そして今日のお金は貸借取引の歴史の文脈上で語ることができます。

右下の写真は、ミクロネシア・ヤップ島で使用されていた石貨と呼ばれるお金です。石貨は大きく重いので日常的な物品の購入には使われません。ヤップ島から200km離れた場所でしか採掘できない石でできており、この希少な石の所有権のみが移行し、その経緯が記録されることでお金の役割を果たしていました。

金属でできた貨幣

古代ローマや中国では、金属でできた貨幣が使われていました。

ブロンズや銅などに象徴となる模様や文字を刻印した鋳造貨幣です。

紙幣の登場

11世紀になると紙幣が登場します。世界初の紙幣は、中国で使われていた倉荷証券のようなもので、商品を倉庫に保管し、その所有者証明を行うための領収書として発行されていました。紙幣が生まれたのは、使いやすい点や、貨幣を作るための金属が十分になかったためだと言われています。

クレジットカード

「クレジットカード」という言葉は、1887年に書かれた “Looking Backward” というSF小説の中で初めて使われました。西暦2000年(当時から100年後)の世界ではお金に「信用」が生まれ、「クレジットカード」として使われるようになる、というストーリーが描かれています。まさに現実になっていますね。

1920年代には、実際にクレジットカードの原型が生まれますが、これは石油系企業が商人用に発行したクレジットカードで、1つの企業との間でしか使用できませんでした。

より実用的になったのは1946年、初となる銀行発行のクレジットカード(ブルックリン銀行)が登場し、ブルックリンの複数の場所で使用することができるようになりました。そして1949年はダイナース、1959年にはアメリカン・エクスプレスと、次々と新たなクレジットカードが生まれるブームが到来しました。

1970年代になってようやく国内のクレジットカードを規制する法律「公正信用取引法」などが施行され、現在に至ります。

台帳の発展

お金と台帳は切っても切れない関係にあります。台帳とは、

経済活動・金融関係を記録したもの。

台帳には大きく3つの分類があります。

1. トランザクション台帳 ⇄ バランス台帳

トランザクション台帳とは取引を記録するもの、バランス台帳とは差額や残高を記録するものです。この違いはビットコインとイーサリアムの違いに現れています。

2. 主要簿 ⇄ 補助簿

主要簿とは全ての取引を記録した帳簿で、補助簿は特定の取引明細を記録した帳簿です。今日の銀行システムはこの違いと似ており、中央銀行が主要簿、市中銀行が補助簿の役割を果たしてると言えるでしょう。

3. 単式簿記 ⇄ 複式簿記

単式簿記には収支のみのリストが、 複式簿記には「借方」「貸方」による取引内容が記録されています。

決済システム

また、授業では決済システムを以下のように定義しています。

台帳上の変化を修正・記録する方法

決済においては、取引上の片方の台帳の変化と同等かつ反対方向の変化がもう片方の台帳に記録されるからです。また、決済システムのわかりやすい例として「小切手」をあげています。小切手には、

日付、署名、支払人、受取人、金額、支払い内容、口座番号

という記載事項があり、これらは全てビットコインにも含まれています。つまり、ビットコインは台帳であり決済システムのひとつなのです。

不換紙幣の出現

不換紙幣とは何でしょうか?

不換紙幣ができる前のお金は、銀行が持っている金の量をもとに発行され「金と交換できる紙幣」という意味で「兌換(だかん)紙幣」と呼ばれていました。

これに対して不換紙幣は、 金に裏付けされていないお金です。金と交換できない代わりに「国家の信用」に基づいて発行されます。実在的な価値はありません。そのため、不換紙幣は「中央銀行の負債」として捉えることができます。

また社会的合意(法)の下で価値が見出されることから、不換紙幣は税収に使われる法定通貨のことを指します。

お金の分類学

最後に、お金をデザインする4つの要素について説明します。

こちらの図は、国際決済銀行によるマネーフラワーというもので、世の中にある全ての「お金」はこのマネーフラワーの中に分類されると言われています。それでは、それぞれの要素をみていきましょう。

1. 発行元

中央銀行が発行する or 中央銀行以外が発行する

2. お金のカタチ

実物(physical) or デジタル

3. アクセシビリティ

広く受け入れられている or 限定的(企業などの大口金融のみ)

4. テクノロジー

トークンベース(価値を重視) or アカウントベース(所有者を重視)

ビットコインはどこに分類されるでしょうか?

ビットコインは、

・中央集権的な発行元がいない

・デジタル通貨

・一般的に広くアクセスすることが可能

・新たな価値を見出している

という点から “Private digital tokens (general purpose)” に該当します。

今日の授業では、「お金の歴史」について広く解説しました。

お金はどのような発展を経て今のカタチになったのか、台帳や決済システムと今日のビットコインの関わりを知ることができたと思います。

次回は、ブロックチェーンの基礎と暗号学に注目していきます。

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